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夏コミ発行② コノハナサクヤ

●コノハナサクヤ p72 700円  表紙mk様
konohanahyousi.jpg

 リクつらで、『あの人の唇奪いなさい』ネタのシリアス。
 あらすじと本文見本は、以下に入れておきます。
 ※通販受付中!
【あらすじ】

 ある朝、リクオは驚愕する。
 母が、祖父が、側近衆が、小妖怪たちが、奴良家の誰もが、つららを知らないと言い出したのだ。慌てて家中を探し回るが、つららに纏わる品は全て姿を消していた。
 底無し沼のような絶望に掴まりそうになりながら、藁にも縋る思いで学校に行くが、学校の机の中やロッカーにも、カナや清継の記憶にも、つららの姿は無かった。
 一体何が起こっているのか?世界がおかしいのか?それとも、ボクがおかしいの、か…?
 リクオが心折れそうになったその時、つららが現れる。
 夜の散歩から帰って来たつららは、突如皆から忘れ去られて、奴良家に入ることも出来ず、それでも一縷の希望を抱いてリクオに会いに来たのだ。
 駆け寄り、強く抱きしめ合う2人。
「お前は、ボクの傍にいなくちゃダメだ。ボクには、お前が必要なんだ。絶対守るから……離れるな」
「はい。リクオ様が望んでくださる限り、未来永劫お傍に侍ります。それが、私の1番の望みですから」
「じゃあ、死ぬまで望む。死んでも望む。ずっと、ずぅっと」
「ならば、地獄でもお供致しますね」
「うん!」

 つららを失う絶望を味わいそうになったからこそ、リクオは、つららを守ろうと強く思い、まずは、皆に忘れられてしまったつららの居場所を確保することにした。
「皆、聞いて。ボクは、このつららを結婚する!」
 
 こうして、この事態の原因を探りつつ、婚約者扱いされて1つの部屋に並んだ2つの布団に動揺するような日々が、幕を開けるのだった。

 



【本文見本】



 つらら。漢字で書くと、氷麗。人間に擬態した時の名字は、及川。
 雪女で、母親は、初代ぬらりひょん配下の雪麗。現在の地位は、ボクの側近頭。
 元々はボクの守役で、物心付く前から誰よりも傍に居て、自他共に認めるボクのお気に入り。中学生になってからは、登下校どころか清十字団も一緒に参加していた。ボクのお弁当は、いつもつららが作ってくれる。つららの料理は、大抵冷めてて時々凍ってるけど、凍ってても美味しい。
 ボクの身の回りの世話はほとんどつららの仕事で、外出時も一緒のことが多くて、出入りでもすぐ後ろについてきて、いつだって、手を伸ばせばすぐ届く場所に居る。
 未来永劫傍に居ると約束してくれた。昼だろうと夜だろうと、ボクを想って、ボクを理解しようと努力し、ボクを信じてくれる。例え『世界』がボクの敵になろうとも、つららは、絶対に、ボクの味方。つららを疑うなんて、バカバカしいだけ。
 ボクにとっては、空気とか水みたいに、在ることが当たり前で、無くなることなど想像も出来ない存在。
 ドジで、慌てんぼうで、おっちょこちょいで、頑張り屋で、働き者で、口うるさいと思うこともあるけど、健気で、明るくて元気で、すぐ泣いて、すぐ笑って……とても可愛い、ボクの雪女。
 それが、つらら。
「と、おっしゃられましても……」
 眉を下げて首無が口籠った。周りを囲む他の妖怪たちも皆困った顔をしているが、1番困っているのは、ボクだ。
 つららの部屋は、存在していなかった。最近は入室を拒まれるが(断られても諦めずに明鏡止水で忍び込むから、結局中に入ってるけど)、幼い頃は夏になると涼を求めて毎晩潜り込んだあの部屋を、ボクが間違えるわけがない。なのに、覚えている場所に、あの見慣れた部屋は無かった。
 母親が昔使っていたという箪笥の上には、小さな付喪神が宿る氷鉢をいくつも並べていた。氷鉢たちは、いつも綺麗に磨かれて、誇らしそうにキラキラ光っていたよ。
 壁にはセーラー服を吊るしていたね。文机の上には、小学校低学年の頃にボクが授業で作った不格好なペン立。下手くそで恥ずかしいから止めてくれ、とどれだけ頼んでも決して聞き入れてはくれなかった。
 幼い頃は声も掛けずに無遠慮に押し入り、分別が出来てきた頃には恥ずかしくて足を踏み入れられなくなり、今となっては、驚かしたくてからかいたくて、時折夜姿で忍び込んでみたりする、あの部屋。
 あんなに見慣れていたつららの部屋は、どこに行ってしまったんだろう?
付近の部屋も全て見て回って何も見つけられなかったボクは、次に、自分の部屋に駆け戻った。廊下に居た妖怪たちが、顔色を変えて全力疾走するボクに驚いていた気がするけど、そんなのに構う余裕なんて無い。ボクは、空き巣よりも乱雑に自室をひっくり返して、つららの痕跡を探す。
 つららが編んでくれたマフラー、手袋、セーター。縫ってくれた浴衣。去年京都でもらった文。晩ご飯のリクエストを尋ねるメール。清十字団の合宿で撮った写真。誕生日とクリスマスにもらったプレゼント………
 つららがボクにくれた物なんていくらでもあるはずなのに、あるはずの物があるはずの場所に無くて、ボクは、棚も箪笥も引き出しも押入れも全部ひっくり返して、探し続ける。だけど、何も見つからない。ボクの生活につららは密接に関わっていたのに、つららがくれた物は、無くなっているか置き換えられているかで。
 アルバムは、つららが写っていた物全てが無くなった状態で整理されていて、写真の総数が1/3程減っていた。
 体操服を入れるのに使っている袋は、つららのお手製で、黒地で隅の方に少しだけ白抜きの桜柄がついていたはずなのに、学校の購買で売っているオレンジの既製品の袋に代わっていて、いっそ、ちょっと笑いがこみあげてきたよ。
 そして、いつも、着信履歴や受信履歴から電話やメールをしていたから、つららの携帯の電話番号もメアドも思い出せないと気づいた時には、自分を殴ってやりたくなった。
 厨房に駆け込んで冷凍庫を開けても、常時1つはストックがあるはずのつららのアイス(奴良家は冷蔵庫や冷凍庫に自分のおやつを入れるなら名前を書くルール)も、無い。
 下駄箱をひっくり返しても、つららの草履もローファーも見つからない。
 なんだこれ?世界がおかしいのか?それとも、ボクがおかしいのか?
 眩暈がしてきた。視界が暗い。うまく息が出来ない。足に力が入らない。
 失血で気を失う前によく似た感覚だったが、ここで気絶なんかしてる場合じゃないだろ、と自らを戒める。
 ボクの奇行に驚いて集まって来た皆に尋ねても、誰もつららを知らなかった。お祖父ちゃんも、つららとは幼馴染のはずの三羽鴉も、本当に誰も、つららを知らない、と言う。そして、実際に、屋敷のどこにも、つららが実在した証拠が見つからなかった。思いっきり頬をつねって痛かったから、これは夢じゃない。
 考えろ!考えるんだ、奴良リクオ!他にもまだ、確かめる手段はあるはずだ!
 ボクは、脳内に浮かんだ底無しの虚無に引きずり込まれるイメージを否定しながら、必死で考えた。
 





「リクオ、様……」
「大丈夫だよ、つらら。全部、ボクに任せて」
 よく見知った奴良家の大広間。広いはずなのに、今、犇めき合う妖怪たちで満員電車状態です。
 人に似た形の者、人とは似ても似つかぬ形の者、美しい者、おどろおどろしい者、天井に閊える程大きな者、茶碗に収まるほど小さな者、空を飛ぶ者、地を這う者、柱に巻き付く者、改めて見てみると、こんなにたくさん居たことに驚かされますね。大広間はこの屋敷で1番広い部屋なのに全員を収容出来なかったので、障子や襖を取り外し、庭や廊下にも溢れています。
 帰宅したリクオ様は、あまりに早い帰宅に驚いて駆け寄って来た鴉天狗様に、「大至急、現在奴良家に居る者全てを大広間に集めろ。仕事してる奴は中断させて、近所にいる奴は戻ってこさせて、寝てる奴は起こせ。母さんも、祖父ちゃんもだ」と命じました。
 初代は、いつものように、リクオ様と一緒に朝食を召し上がった後眠っておられたので、鴉天狗様は渋ったのですが、リクオ様が再度強い語調で命じると、言うことを聞いてくれました。
 私は、学校からずっと、リクオ様と手を繋いでいます。リクオ様の体温は雪女にとっては熱いはずなのですが、私は、この熱さこそが存在の確かさに思えて、大広間に集まった妖怪たちに不審げに見られても、いつまでも手を離したくないと思わずにはいられませんでした。
 奴良家で暮らす妖怪は数が多く、中には定期的に分裂や統合を繰り返す者もいるし、妖気に惹きつけられて迷い込んだはぐれ妖怪が本家の誰かと盃を交わして住みついたり、反対に、冬眠だの婚姻だの旅行だので居なくなることもあるので、正確な数は把握し辛いです。女衆として毎日三度の食事を用意してきましたが、朝や昼は寝ている者も多いですし、ほとんど物を食べない妖怪もいますから、基本的に確実に食べるはずのメンバー(リクオ様・初代・若菜様・鴉天狗様・側近衆・三羽鴉・女衆・邪魅・納豆小僧、豆腐小僧、小鬼、3の口、蛇にょろ、オオムカデ……)の在不在は確認して決まった位置に席を作りますけど、それ以外の者用には、適当な量の食事と食器を用意して、足りなかったら厨房に取りに来てもらうことになっています。かなり適当なんです。
 ただ、誰もが、血縁か、主従や義兄弟として盃かで繋がっているし、新しくこの家の住人となる者は皆に挨拶回りをするので、鴉天狗一族と配下の鴉の見張りもあって、意外に、不審者は忍び込めないようになっていますが(今朝、私が警戒されたように)。
 だから、居並ぶたくさんの妖怪たちのその全員に私は見覚えがあるというのに、………皆は、リクオ様と手を繋いで上座にいる私を、不審そうに見ていました。そう、毛倡妓も、首無も、青も、黒も、河童も、若菜様も、初代も、皆。
 氷雪が凝った身でおかしな物言いですが、魂の奥底が冷えるような心地がしてふるりと震えると、リクオ様は、温かい手で、頭を撫でてくれました。手で触れられた場所から、じんわりと、リクオ様の優しさが染みてくるよう。私は、私の方が年上で実際に守役としてこの方をお育てしたというのに、母に撫でられた雪ん子のような気持ちになってしまいました。
 わからないことだらけでとても怖いけれど、リクオ様が居てくださるから、私は大丈夫。
 そうこうするうちに、鴉天狗様が全員かき集めたと報告に来たので、昼姿のリクオ様は、全国の親分衆を招き晴明の清浄へ抗する為に催された会議の時のように、夜姿とはまた違う凄みを纏って、口を開きました。
「皆、聞いて」
 一言で、騒然としていた場が、静まり返ります。さすがリクオ様!
「突然召集をかけて、悪かったね。だけど、ボクは、この屋敷で暮らす皆を家族だと思っているから、一刻も早く、全員に、間違いなく伝えたいことがあるんだ。無理やり起こされて眠い奴は、この後、二度寝してくれたらいいよ。眠れるなら、だけどね。……では、全員、よく聞いてくれ」
 後半の台詞は、無理やり起こされてご機嫌斜めだった初代を見つめてのモノだったので、初代は、フンと鼻を鳴らしました。それを見て、皆の空気が少し緩んで一呼吸ついて、だからこそ、リクオ様が最後に低い声を出すと、皆が気を引き締めて意識を集中します。ふふ、リクオ様は、人心を掌握する呼吸をご存じでいらっしゃいますね~。
 と、私は、至近距離で実感するリクオ様の凛々しさに惚れ惚れしていたのですが、次の発言で、死ぬほど驚かされました。

「ボクが手を繋いでいるこの娘は、雪女雪麗の娘、つらら。ボクは、このつららと結婚する!」

「!!!」
「えっえぇ~~っ!?」
「わ、若ぁっ!?ホントですかいっ!?」
「り、リリリリクオ様ぁ~っ、いつの間に~~っ!?」
「おっとぉ。こいつぁ驚いたぜ、リクオ。確かに、こりゃ眠れねぇぞ」
「あら~まあ~随分早いのね~」
 屋敷が揺れるほどの、大騒動。平然と受け止められたのは、器の大きな初代と若菜様だけです。
 でも、1番動揺しているのは、当事者である私ですよ!だって、初耳ですもん!寝耳に水ですもん!
「~~~っ!!!」
 驚きのあまり言葉が出てこない私が隣で悶えていても、リクオ様は小憎たらしいほど涼しい顔で、話を続けます。
「リクオ様!そちらのお嬢さんとは、いつからお付き合いなさってたんですか?側近で護衛のオレらも、全然存じ上げねぇんすけど!」
「そうですよぉ。鏡花水月でデートなさってたんですか?」
「青、毛倡妓、お前たちが知らないのも当然だよ。ボクとつららのなれそめは簡単で、昨夜、化猫屋の帰りにつららに出逢って、一目惚れして、その場でプロポーズしたんだ」
「ふえぇ~~~っ!?」
 な、なんという、なんという無茶な設定でしょうか!百歩譲って一目惚れまではまだありとしても、その場でプロポーズはあんまりです。
 私は、あまりの無茶な話に腰が抜けそうになったのですが、皆は、私とは違う反応を示しました。
「初対面で一目惚れでぷろぽーず、思い返したら、ワシの時も似たような感じじゃったなぁ。ぷろぽーずを口に出したのはもうちっと後じゃったが。初回の逢瀬でとは、やるのぉ、リクオ」
「鯉伴さんも、告白の台詞がプロポーズだったわ。やっぱり、父子って似るのね~」
「ううむ。驚きましたが、初代がああで、二代目がそうだったのですから、三代目がこうでも、納得してしまう、と申しますか……」
「リクオ様、魑魅魍魎の主と申し上げても、色恋にはまだまだ疎いとばかり思っておりましたが、こんなに成長しておられたとは!拙僧は、拙僧は……!」
 ……皆、リクオ様のことなんだと思ってるんですか?なんで、誰もこの嘘を疑わずに、受け入れて信じちゃうんですか?
 私が、自分の中の『常識』と皆の『常識』との差異に頭を抱えそうになっていると、大騒ぎしている人混みをかき分けて、猩影君が最前列にやってきました。これまでは気にならなかったのですが、猩影君って大きいから威圧感がありますね。私は、今朝冷たい目で見られたことが、彼は悪くないとはいえショックだったので、ちょっと怯みそうになります。
「リクオ様、あの、俺、今朝、そちらの姐さんを奴良家の門で見かけたんですが、それは……」
「つららは、『ちょっと考えさせてください』って言って、一端ボクと別れたんだよ。でもね、数時間で覚悟を決めて、それを伝えようと屋敷に尋ねてきてくれたんだ。だけど、つららは恥ずかしがり屋だし、つららにとっても一目惚れで初恋だったから、うまく人に説明出来なかったんだって」
「!そ、それじゃ、俺は、三代目の奥方に、奴良組の姉御になる方に、失礼な真似を!も、申し訳ありませんっ!」
 猩影君は、素直な良い子です。己が犯した失態に青ざめた彼は、大きな身体をがばりと伏せて……ど、土下座とか止めてぇ!邪魅も黒羽丸も隣に並んで土下座とかもっと止めてぇ!
「猩影君、邪魅、黒羽丸、並んで土下座とかしないで。つららが困っちゃうから」
「ですがリクオ様、我らが奥方様に無礼を働いたことは、事実。お咎めは……」
「めでたい席でそういう話は止めようよ。罰とかじゃなくて、その分、つららに良くしてやっておくれ」
 私は、さっきからもう言葉が出てこないのですが、とりあえず、奴良家を守る武闘派として役目を果たそうとしただけの彼らが土下座なんておかしいから、それだけは止めて欲しくて、リクオ様の袖を引っ張ってふるふる首を振っていると、リクオ様が上手く収めてくださいました。猩影君たちが顔を上げてくれて、ほっと息を吐きます。
 それで少し安堵したのもつかの間、大広間に集まった全員がこの驚天動地のニュースに興味津々なので、質問は、次から次へと矢のように降ってきました。
「リクオ様が、今朝、ご様子がおかしかったのは……」
「首無、ボクね、つららと別れた後、酒が入ってたから眠くて寝ちゃったんだけど、その時、つららと結婚して仲睦まじく暮らす夢を見たんだ。その夢、とってもリアルだったし、あんまり幸せだったから、ボク、朝起きても夢の方を現実だと信じちゃったんだ。それで、いるはずのボクのお嫁さんが居ないから、気が動転しちゃって。驚かせて、悪かったね」
「いえいえ、プロポーズの返事待ち中でしたら、そりゃあ、そんな夢もご覧になるでしょうし、その夢の方を信じたくもなるでしょう。お気持ちはわかりますよ。正夢になりそうで、良うございました」
「プロポーズのお返事は、いつもらえたんですか~?」
「さっきだよ、河童。ボク、『昼の間は浮世絵中学に通っている』てつららに話したから、つららが、朝のHR前の教室にボクを追いかけてきてくれたんだ」
「そちらのつらら様は、雪麗姐さんのご息女なんですよね?昨夜は、どうしてまた、この近くにいらしていたんですか?もしや、雪麗姐さんもご一緒ですか?」
「雪麗さんは一緒じゃないよ、トサカ丸。つららは、用事で東京に来たついでに、昔自分の母親が仕えていた奴良家というのはどんなものだろう、と好奇心に駆られて浮世絵町に立ち寄ったんだ。で、道に迷っていたから、見かねたボクが声を掛けたんだよ」
「……リクオ様、それ、『ナンパ』って言いやしませんか?」
「言わない。ナンパでプロポーズとかしないでしょ?初恋同士で一目惚れ同士で、初対面でプロポーズして数時間後にOKの返事をもらちゃうようなのは、『運命の出会い』って言う。これ、この情報を拡散する時にも、徹底しておいて」
「リクオ様、祝言はいつになさいますか?その前に、貸元を集めて報告する席を設けねばなりませんし」
「つららは人間に化けるのが上手だから、つららの分の戸籍も作って、一緒に中学・高校と通って、人間の奴良リクオとしても妻にしたいんだ。だから、結婚するのは、18歳になるまでお預けだね。貸元は、特別に席を設けなくても、噂を聞き付けた順に駆けつけてくるだろうよ。だから、全員の前での正式な紹介は、次の定例総会の時で大丈夫。ああそうだ、明日から一緒に学校に通いたいから、早急に準備してね鴉天狗」
「リクオ様、つらら様のお部屋は、リクオ様とご一緒でよろしいですか?それとも、婚約期間中だということで、別にご用意する方がいいですか?」
「もちろん一緒で。それと、つららは、ちょっと使いに来ただけで着の身着のままだから、身の回りの必要な物、全部用意してあげて。ボクじゃそこらへん気が利かないから、頼むよ、毛倡妓」
 ……悪戯っ子だったリクオ様は、幼い頃からそりゃあもうたくさんの嘘を吐いてきました。ええ、ですから、嘘が上手な方だというのは存じ上げておりましたよ。ですが、、の前で淀みなく紡ぎだされていくストーリーに、私は、ちょっと魂が飛びそうです。
 リクオ様が語っているストーリーは、えぇと、……

 雪麗の娘である雪女のつららは、東京に来るのが初めて。なので、ついでに噂の奴良本家を拝もうとしたら、道に迷ってしまった。
 そこに通りがかって助けてくれたのが、奴良組の三代目総大将奴良リクオ。
 リクオとつららは、互いに一目で恋に堕ちる。
 すかさずプロポーズするリクオ。あまりの急展開に戸惑うつららは、「もう少し考えさせてください」と言い出す。2人は一端別れて、リクオは本家へ。
 一眠りしたリクオは、現実と錯覚するほどリアルなつららとの結婚生活を夢に見て、起きた後で少し混乱する。 一方、つららは、数時間考えて、やっぱりプロポーズを受けようと覚悟を決めて、奴良家へ向かった。しかし、芽生えたばかりの想いに自分でも戸惑っていた為、現れた奴良家の妖怪に誰何されてもうまく対処できず、立ち去ってしまう。
 だが、想いを一刻も早く伝えたくて、リクオが通う学校に忍び込んで会いにいった。
 そして、今、2人は晴れて両想いに。めでたしめでたし。
 ちなみに、結婚は、リクオが18歳になってからの予定

 ですか?
 ………ラブコメ漫画にしても、片方だけならともかく両方がこのテンションって、読者が感情移入出来ないから、完全にギャグにするか、もうちょっとテンション下げるか何かしろ、と編集からツッコミが入るだろうストーリーですね。
 なのに、何故か、リクオ様は堂々とこれを真実として押し通し、皆は受け入れて信じてしまっています。
 私は、口を開くとボロを出しそう(というかツッコミを入れちゃいそうです)で何も言えませんし、出来るのは、口々にお祝いを述べてくれる皆に、引き攣る頬を叱咤して笑みを浮かべることぐらい。私、上手く笑えているかしら。ちょっとおかしくても、新妻の恥じらい故、と解釈してもらえたらありがたいのですけど。
 頭がくらくらして膝ががくがくするけど、倒れちゃダメよ、つらら!
 リクオ様、この後2人きりになったら、申し上げたいことがたくさんございますからね!


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