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遥かなる頂上決定戦 

 冒険王ビィト。ビィキス。

「だからねビィト、君はぼくに勝てない。絶対にぼくの勝ちだよ!圧勝だよ!」
 珍しく自信に満ちた彼の声が聞こえてきたのは、ちょうど、こないだの襲撃で破れたカーテンの補修を終えて部屋に取り付けに行く最中だった。領主の役目を果たしているこの街一の資産家メルマーデさんの屋敷は広くて廊下は長い。カーテンは重くはないが嵩張るから、床に引きずらないように2階に持っていくのは一苦労。だから、カーテンと格闘していた私はソコに至るまでの経緯を知らずに、いきなりキッスの声を聞いたのよ。
 自信に満ちた、声を。
 ビックリして足が止まったのは自然なことだと思う。だってキッスは、おとぎ話の王子様みたいな容姿に稀有なほどの才能の持ち主だっていうのに、謙虚を通り越して卑屈にさえ見えそうなほど全然自分に自信がない人だから。本当にいつも不思議になるんだけど、レベル20そこそこで上位天撃をマスターして5つ星の魔人を一撃必殺で倒しても、国すら崩すと言われる巨大な魔物を使った罠を見抜いて仲間を守り通しても、それでもまだ「ぼくなんか」と本気で口にする。驕らず謙虚なのは彼の美徳だと思うけど、でも誇ってもいいはずだと、私も他の皆も思っているのに。
 そんなキッスが、この言い方!驚いた私は思わず立ち聞きしてしまった。声は扉の向こうから聞こえる。私は、そろりそろりと扉に近づいた。
 私たちはメルマーデさんの屋敷に泊めてもらっている。魔人や魔物を倒しても壊れた物も傷ついた人も元に戻らないから、メルマーデさんは大忙しだし、屋敷の人々も忙しい。だから、滞在費代わりに多少のお手伝いをさせてもらってて、私は今日、ビィトとキッスの2人にガラスが割られたままの部屋の掃除を命じておいた。ビィトとキッスは1人にしておくと何かと心配だから(2人とも別の意味だけど)用事を頼む時はできるだけセットにしている。そうしたら、お互いの欠点を補い合って、1+1=2、という以上の成果を上げてくれることが多いからね。まあ、たま~に反対の結果もあるけどね。
 でも、どんな失敗をやらかしたって2人はとても仲が良くて、言い争いなんてほとんど聞いた覚えがなかった(争う前にキッスが折れるから)。
 なのに。
「えー?圧勝は言いすぎだろ?ていうか、おれの勝ちじゃねえの?」
「ないない。そんなこと絶対ないから錯覚だから。絶対にぼくの勝ちでしかも圧勝だから」
「えー?」
 ・・・・・・・・・・果てしなく珍しい。
 何コレ?誰この人たち?
 この扉の向こうにいるのは、才能を認めてるっていう以上にキッスに甘いとこのあるビィトと、ビィトに甘いどころか全肯定して命も捧げてる(ちなみに、『賭ける』と『捧げる』は大きく違う。私は命を賭けてるけど、捧げてはいない)キッスなの?本当に?
 あまりのあり得なさにもしかしてドローマスターが化けてるのかも!?という疑惑を感じたから、カーテンを抱えて隠れてる手元に天力を発動しつつ、この謎を見過ごしておけない私は扉を開いた。
 そして、真実を知る・・・・・・





「ねえ2人とも、何の話をしてるの?」
「あっ、ポアラ、聞いてくれよ。キッスが強情でさ~」
「強情なのも無茶なのも君だよ。この件に関しては絶対にぼくの方が正しいんだから」
「キッスがそこまで言い切るっていうのも珍しいわね。どうしたの一体?」
「えーとな、掃除しながら、キッスと初めて会った時の話をしてたんだ。おれがすぐにキッスを気に入った、て話をさ。そしたらキッスが・・・・」
「ビィトがね、バカなこと言うんだよ。『おれのが先に好きになった。おれの勝ちだな』て。ぼくの方が先だし、ぼくがビィトを好きな気持ちの方が大きいに決まってるのにね」
「なんで決まってんだよ!言っとくけどな、一緒に行こうって誘ったのはおれの方だし、おれはお前以外の奴をそんなふうに誘ったことないぞ」
「ぼくなんか一目見た時から君のことが気になって仕方なかったよ。話しかけてみたくて、でも嫌われたらどうしようって思ったら怖くて。だからいつもならそのまま遠くから見てるままにするところだけど、でもどうしても君に出会えた幸運を逃したくなくて。けど怖くて。諦めてばっかりだったぼくが、珍しく諦め切れなくてすごく悩んだよ。ほら、最初からすごく好きだよ」
「おれだってなー、珍しく心配とかするぐらいに好きだぞ。あんまそーいうこと考えない頭なのに、離れた2年の間に何遍もお前のこと思い出して、思い出す度に心配になったぞ。ほーら見ろ、すげえ好きじゃねえか」
「まだまだだね。君では到底ぼくには及ばないよ。ぼく、2年間ずっと君の寝る日を数えてたからね。それで、寝る日には、どこで寝てるんだろう?また沼にハマったりしてないといいけど、て心配してたよ。だから、この件に関してはぼくの圧勝で・・・・・て、あれ、ポアラどこ行くの?え、このカーテン何?」
「・・・・私、屋根の修繕してるスレッドの手伝いしてくるわ。あんたたちは、掃除終わったらそのカーテンを2階の部屋に取り付けなさい。で、その間好きなだけ言い争いしてなさい」
「待てよポアラ!なあ、キッスにおれのが勝ちだって言ってやってくれよ」
「違うってば!ねえポアラ、強情なビィトにぼくの勝ちだって言ってあげて」

「あんたたちはバカの王様よ!」

 




 私は、そう言うと扉を閉じて手ぶらで廊下を歩き出した。扉の向こうから名前を呼ぶ声が聞こえるけれど、決して振り返ったりはしない。さあ、スレッドの手伝いに行こう。ここ数日晴天が続いて助かってたけど、屋根は早く直さないとね。雨が降ったら困るものね。
 私は長い廊下を歩いていく。まだ言い争っている声を無視しながら。

 
 ・・・ていうかね、もう本当、やってられるかあの相思相愛バカっぷるっ!!


【おしまい】
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