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例えばただの一度でも名前を呼んで抱きしめてやればあいつは

 ネウロで、ネウ弥子。
 風の音は荒れ狂う手負いの獣のように全く手加減なしに吼え、誰の声も遮って相互理解のための努力なんていう浅薄な幻想を紡ぐ余地を与えてはくれない。それほど威力のある風の中では冗談のように脆弱な細い肢体を折れないように保持するのも力がいるようで、非力な四肢でそれでも必死で抗おうとしている(だが無駄な努力だ。すぐに体力など尽きるだろう)。と思ったらこちらの視線に気がついて、目を細めて口角を吊り上げる、美食を完食した際に浮かべるのとよく似た(とても似た)顔をしてきた。その唇がなにやら言葉を紡ごうとして。けれど風に阻まれて声は届かず。読唇術などという簡素な技術はとっくに習得済みであるので、ずけずけと物を言いどかどかと飯を食うくせにずうずうしい印象を抱かせない形状の唇の動きを見つめてみたら当然意味などはたやすく読み取ることができて。

 この場に立つだけで消耗している弱い生き物が愚かな嘘を紡ぐ様が、閃くように何かの衝動を生成したから。

「さらばだ、弥子」

 反射的にその身体を《押し戻して》 しまった。







 そうして、腐った百合の香が漂う荒廃した世界にたった独りの魔人は、たった独りのまま、あの薄い背を押したこの手を眺めて。眺めて。眺めて。眺めて。







【おしまい】
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