コンテントヘッダー

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
コンテントヘッダー

(仮)第二百八幕 リクオ、帰還する

 ぬら孫 リクつらss。

 最近の展開を受けて、リクつらのお帰りなさいを妄想してみました。リクつらプチオンリーのペーパーに使った小話です。
 ぬらり、と黒雲の隙間から宝船の姿が覗いた瞬間、奴良家の広い庭では歓声が上がった。
 百鬼が、主の勝利と帰還に、喜びを顕わにしているのだ。
 リクオが睨んだ通り、同時多発攻撃であった御門院の清浄によって、家屋や妖怪たちも無傷とはいかなかったが、我らが総大将がお帰りになる家を守るのだという気概と、先日の百物語組襲来で培われた連携で、被害はさほど大きくなかった。ちらほらと包帯姿の者がいるが、表情は皆一様に明るい。
 リクオは、上空から奴良家の庭を見下ろしてみたが、冴え冴えとした蒼味を帯びた黒髪も柔らかな光沢を持つ羽二重の白い振袖も優しい満月色の瞳も見つけることが出来なかったので、あっさりと飛び降りた。
「リクオ様~!」「三代目~!」
 本家の妖怪は皆幼い頃からリクオを溺愛しているし、貸元たちも夏の京都での戦いを経て彼を認め慕っている。 会議の為に招かれた各地の妖怪たちも、若輩と軽んじる気持ちを完全に消すところまでは言っていないが、リクオの話に筋が通っていること、人間姿であったにも関わらず会議では畏れを感じさせる程毅然と振る舞っていた胆力、会議招集と九州遠征と側近各地派遣という迅速で的確な判断、側近の活躍で受けた恩、百目を通して魅せてもらった雄姿は、評価せずにはいられなかった。
 だから、リクオが、妖怪らしく危なげの欠片もなくふわりと庭に降り立つと、わっと取り囲まれる。
 皆が口々に無事と勝利を祝う言葉を掛ける中、適当に受け答えしつつ、リクオの紅眼はせわしく誰かを探していた。
 リクオの理解者を自任する義兄弟の鴆が、いち早くリクオの意図に気づき、にっと口の端を吊り上げ破顔して、手を叩いた。
「ほれ、おめぇら、嬉しいのはわかるが、リクオを、『帰る場所』に帰させてやれよ!」
 初代・二代目と鍛えられてきたので空気が読める奴良組の妖怪たちは、そこで、はっとして静まり返り、帰還の報が入った時に厨房の奥で炊事をしていた故に出遅れて、縁側近くでまごまごしていた雪女の存在を思い出して、彼女の為に道を空けた。
 急に人垣が割れたので、雪女のつららは驚いたが、その背中を大きな手がぽんと押す。振り返ると、包帯を巻いた姿の猩影がにこにこと微笑んでいた。
「ほら、つらら姐さん、リクオ様を出迎えてあげて!」
「そ、それなら若菜様が・・・・」
 つららは、いつもは溢れる気持ちのままに1番前に駆け寄るのだが、今回は出遅れた為になんだか気後れしてしまってまごまごと呟く。だが。
「いいから!」
 太陽みたいに明るく笑う若菜が、つららの背を、温かい手でぐいーっと押した。
「えっ?」
「つららちゃん、がんばって!」
「ほらー、早く行きなさいよー」
 つららの右手をぐいっと前に引っ張ったのは、毛倡妓。まだ傷が痛むはずなのに、くすくすと笑っている。
「えっ?」
「リクオ様待たせたらかわいそうだよー」
 つららの左手首を掴んだのは、河童。いつも飄々とマイペースな彼らしく、つららの困惑を無視して前に引っ張っていく。
「早く行って差し上げろ」
 感涙して前に押し寄せようとしていた青田坊を捕まえて何事かを耳元で囁いて止めた黒田坊は、ドヤ顔でサムズアップしてくる。
「リクオ様待たせんじゃねぇぞ!」
 黒田坊の忠告のおかげで状況を把握した青田坊は、にかっと笑いながら大きな手でつららの肩を叩いた。
「つらら、しっかりな!」
 つららの進路上で座っていた破壊蛙を紐でひょいと拾い上げて、首無が爽やかに応援する。
 牛鬼は満足げに、達磨は目を細めて、案外空気が読める一ツ目も訳知り顔で頷いて、リクオと話そうと詰め寄っていた方相氏や手負い蛇を一歩下がらせた。
 そのおかげで、人垣の中心にぽっかりと、リクオとつららだけの空間が生じる。
「リクオ様・・・・・」
「つらら・・・・・」
 いつも一緒に、戦場でも共に背を預け合う2人だからこそ、離れた場所で戦う相手が心配だった。百目のおかげで安否を知ることは出来たが、それでも。
 つららは、リクオの無事を直接目にしてこみ上げた気持ちと涙を必死で抑えて、側近頭としての職責を果たそうとする。
「リクオ様、ご無事で良かった!若菜様は、ご無事です!傷一つございません!本家と皆は、無傷ではありませんが、酷いことにはなっておりません!」
 側近頭としての務めを果たさんと勢い込んでつららが報告すると、リクオが、いつぞやの雪の夜に迎えに来てくれた時のように優しい顔になって、白雪の頬に手を当てた。
「お前は?」
「えっ?」
「お前は無事か?怪我は無いか?」
 つららだけを一心に見つめる真摯な眼差し、鼓膜を擽る甘い声、宝物を扱うように触れてくる温かい大きな手が嬉しくて、恥ずかしくて、つららは頬を赤く染めた。そして、はにかむ。
「かすり傷はありますけど、大丈夫です!つららは、元気です!」
「そうか。良かった」
 妖美な夜姿なのに幼い子供のような口調で小さくそう呟いたリクオは、それが自然なことで、他に選択肢は無いという様子で、つららに腕を伸ばした。蒼味を帯びた黒髪を撫で、白い振袖姿をすっぽりと腕の中に覆い隠すようにして、満月色の瞳を見つめ、囁く。
 万感の想いを篭めて。
 心配を、信頼を、愛情を、喜びを、篭めて。
「ただいま、つらら」
 だから、つららは、ビックリしたし恥ずかしかったけれど、顔が真っ赤になことや服の裾が汚れていそうなことが気になったりもしたけれど、心配も、信頼も、愛情も、喜びも全部抱きしめて、輝く笑顔でリクオに抱きついた!
「おかえりなさいませ、リクオ様っ!」






「ねぇ、リクオ、僕らのこと忘れてるんじゃない?」
 何やら盛り上がっている地上を見下ろして、育ちが良いせいか案外礼儀正しいので、勝手に下りていかずにリクオの先導を待とうとしてしまった玉章が、半眼になって呟いた。
「・・・・だな。雪女以外眼に入らねぇって感じだな。こっちは、酒無くなったし腹減ってんだがなぁ。声掛けてみっか?」
 逆さにしても1滴も出てこなくなった酒瓶を睨みながら、獺祭が唸る。
 だが、逸る若者たちを、煙管をぷかりと吹かす土蜘蛛が制する。
「止めとけ。そのうちこっちのことを思い出すだろ」
 千年も再戦を待ったり、数ヶ月かけて黄泉津比良坂をよじ登ったりした大妖怪は、結構気が長いし、他者の色事に寛容である。
「そうそう。無粋なことしたったら、かわいそうやで。あの子がんばったんやし、ぬらりひょんの原動力ってあっこらへんやろうから、ちゃんと補給させたらんと」
 式神である為に疲労も空腹も感じない秀元も、余裕の様子。
 しかし、空腹な若者にそんな理屈は通じない。故に、花開院ゆらは吼えた。
「うちの原動力はTKGや!あ~もうっ、お腹減ったぁ!」
 
 リクオが上空の宝船に放置している戦友のことを思い出したのは、それから20分後のことであった。


【おしまい】
スポンサーサイト
コンテントヘッダー

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

greatberryking

Author:greatberryking
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。