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閉じた目の上なら憧憬のキス

 冒険王ビィト。ビィキス。

 カクン、と大きく頭が揺れて、それで目が覚めた。うとうとと眠りの波を漂っていた意識が急速に覚醒する。慌てて辺りを見回し耳を澄ませたが、不審な気配はなし。ほっと息を吐いた。

 危ない危ない。見張りのくせに寝そうになってた。

 普段ビィト戦士団の見張りはビィトで、けれど今日はビィトが寝る日だった。だからぼくはせめて役に立ちたいと見張りを買って出たというのに、眠っちゃダメだろ。2年のブランクの影響は、こんなところでも出てくる。バスターとして生活していた頃は、もっと緊張感を持っていたのにな。

 けれども、ぼくがこんなに安らいでしまっているのは、ブランクのせいだけじゃなくビィトの傍にいるからなのかもしれない。ビィトは今、ぼくの隣で眠っている。

 ぼくたちがいるのは枯れた大木の虚で、火が焚けない代わりに地面より温かく雨も凌げる。黒の地平の森は危険な虫型の魔物がうようよしているから火を焚いて目立つより隠れようということで、今日の寝床はココになった。一応乾燥した枯葉を敷いてみたりはしたが、快適な住環境なんて言葉からは程遠い。けれど、落ち着く。安らぐ。あの城の豪奢なソファやふかふかのベッドの上ではシンと冷えていたこの胸が、ココではぽかぽかと温かい。

 つい先日再会したビィトは2年前より成長していたけれど、まっすぐなとこはそのままだった。まっすぐで大らかなビィトは、見苦しい表返り者ですら受け入れてくれた。ビィトの仲間であるポアラもぼくを赦してくれて、ぼくは今、眩暈がしそうなほどに幸福だ。

 暗闇の中、そっと左手首に触れてみた。ビィトのおかげで毒は消えたけど、傷跡はそのまま残っている。生涯消えることは無いだろう。腕輪を与えた相手もまだこの大地に君臨していて、見通しが明るいなんて到底言えない(ぼくは犯罪者だし)。いつまで一緒にいられるか、明日も生き残れるか、それすらも不確定で。

 けれど。



 閉じた目の上なら憧憬のキス。



 寝返りを打った拍子にぼくの肩に乗ったビィトの寝顔に、そっと唇を寄せた。憧れを篭めて、閉じた瞼の上に。

 明日目覚めたら、この目はいろんな物を見るだろう。汚い物怖い物全てを目を逸らさずに見つめ、どんなに小さくとも一場の光を見つけるに違いない。この目に映る世界はきっと、(どんなにひどいこと怖いこと醜いことが多くたって)美しいんだろう。

「君の目に映る世界がぼくにも見えますように」

 温かい闇の中、祈りを篭めてそう囁いた。

 





【おしまい】
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