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三つ子の魂千まで

 ぬら孫 リクつらsss。

 大変残念なことに、ここの管理人にはタイトルセンスが枯渇しております。
 も、ホントに残念ですが。
 では、オチ読めてるなと思いながら、以下へどうぞ。


 奴良屋敷には、いろんな妖怪がいる。
 神代から生きている者、力強き者、見識豊かな者。
 雪女のつららは、種族的に妖怪としての格こそ上の方だが、まだまだ若輩者で未熟である。本人も、あらゆる面で偉大な母に及ばない己を自覚していた。
 だが、そんな彼女でも、他の誰よりも上手なことが、他の誰かでは替えが効かぬ彼女にしか出来ないことが、ある。
 奴良家三代目お世話係のつららにしか、出来ないことが。


::::::





「つらら!おいっ、つららはどこだっ!?」
 奴良リクオ、御歳13歳。
 だが、過ぎた酔いに目尻を赤く染め、常ならば怜悧な光を宿す紅玉の瞳をとろんと潤ませて、胸元が大きく肌蹴てしまったことにも、脇息にもたれかかった身体が斜めになっていることにも気づかないまま、べしべしと畳を叩いて大声を上げる姿は、誰がどう見ても、立派な酔っ払いである。
「おーいリクオ、お前、明日も学校あんだろ?終りにしとけ」
 奴良組の薬師である鴆は、学校から帰宅してすぐに夜姿に変じる前に飲まされて、そこから飲み続けて、まだ夜の8時だというのにこんな有様になった義兄弟を案じて声を掛けた。
 新酒を一刻も早く奴良家に、と妖銘酒の蔵元が上納した樽が、昼に届いてしまったのが全ての原因だ。
 奴良家の現当主は、リクオ。
 ぜひ三代目にご賞味いただきたく、と届けられた初物を下僕が先に口にするわけにはいかないから、酒好きの奴良家の面々は、物欲しげに樽を見つめながら、じりじりとリクオの帰宅を待っていた。
 なので、リクオが帰宅するや否や、着替えるのも待てずに腕を引いて広間につれてきて、樽を開けろさあ開けろと迫ったわけだ。
 リクオは下僕を大事にする優しい主であったので、下僕の気持ちを汲んで、昼姿のままだというのに酒に口をつけた。新酒は、天下の奴良組三代目に届いた品だけあって、飲み口はすっきりしているのに香りと旨みは豊潤で、つまり、かなり美味い。リクオは、昼姿であったことも失念してつい2杯3杯と盃を重ね、待ちわびていた下僕たちにも振舞い、そこから怒涛の酒宴が始まった。
 そして、いつの間にか夜姿に変じても更に飲み続けてしまって・・・・・現在に至るわけだ。
「うるせぇ。もう成人してんだぞ。ほっとけ」
「成人ったって、昼姿は中学生だろうが。お前、今日は昼姿から飲んでんだし」
 鴆が肩に置いた手を、不機嫌そうに唸ったリクオはぺしりと払いのける。
「つららぁ!おい、どこだよ!」
 そして、尚もお気に入りの雪女の名を呼ぶのだった。
 周囲の側近たちは、箸を止めて顔を見合わせる。幼少時から面倒を見てきた彼らは、こんな状態になった我らが若様が、如何に扱い辛くしつこいかをよく知っていた。
 かつてのリクオは、悪戯こそ大変多いものの、早熟な上に素直な子供だったので、悪戯を止めろという以外のことならば、道理を説けばきちんと聞き分けてくれた。成長した今では、昼姿など、聞き分けが良過ぎて心配になるほどだ。
 しかし、それは、普段ならば、と注釈が付く。
 リクオには頑固なところがあって、それは概ね意思の強さとして発揮されたが、時々悪い方向でも発現した。昔から、熱が出ていたり限界を超えて眠かったりしても、まだ遊ぶと駄々を捏ねることがあったのだ。
 こうなると、理性が働いていない状態なので、道理などは通用せず、しつこい。
 今宵は、ひどい酔いが、理性を鈍らせて箍を外してしまったらしい。こうなると、もう、自分たちに出来ることはない、目線だけで会話してそう結論を出した側近たちは、食事を再開した。
 案ずる必要はないのだ。
 もうそろそろ、この状態のリクオを宥められる唯一の人物がやってくるだろうから。





 しかし、この光景を見てしまって、絶句している者がいた。
 カナと清継だ。
 カナは昼間に借りたノートを返しに、清継はもらい物のからすみのおすそわけに、という口実で、どちらもリクオの夜姿を拝みたいと思ってつい先程奴良家を訪れた。
 だから、若菜に案内されて大広間にやってきた彼らは、夜姿と言えば、悪しき妖怪から人々を守る凛々しい姿しか見たことなかったので、駄々っ子と化した酔っ払いに大いに驚いてしまう。
 思わず顔を見合わせた彼らの顔には、どちらにも、「え?あれが奴良君?」「だ、だよね?リクオ君、だよね?」とかそんな言葉が書いてある。
 そんなことには構わないどころか、身体が斜めになって視界の半分が畳である為に彼らの存在に気づいてもいないリクオは、まだべしべし畳を叩いている。
「つららぁ!」
「はい、お呼びですかリクオ様?」
 そこへ、やっと、つららが現れた。酔っ払った主様を持て余していた周囲の者が、一様にほっとした顔をする。つららはにこにこ微笑みながら、リクオの隣に正座した。
 その姿を見て、一瞬、親を見つけた子供のような喜色を瞳に浮かべたものの、すぐにそれを覆い隠して、リクオは不機嫌そうに唇を尖らせる。
「遅ぇぞ」
「すいません。皿を洗っておりました。あらあら、リクオ様ったら酔っちゃって」
「酔ってねぇよ」
 嘘だ。酔っている。
 その場のリクオ以外の全員が、心の中でツッコんだ。
「はいはい、わかりました。でも、明日も学校ですし、もう寝てしまいましょうね。お風呂は朝入ればいいですから。お布団は敷いておきましたよ」
「酔ってねぇって言ってんだろ!」
 つららに軽々といなされたリクオが、自分の膝を叩いて声を荒げる。背が高くて体格もいい男が理不尽に声を荒げると、それだけで少し怖い。これまで、戦闘中以外は穏やかな様子しか見たことがなかったカナは、父親が下戸で男の酔っ払いに免疫がなかった為に、少し怯えた。
 けれど、至近距離で大きな声を出されたつららは、些かも怯む所を見せなかったどころか、リクオに対して腕を伸ばした。
「「えっ?」」
 カナと清継が思わず声を上げたのも、無理はない。
 つららは、リクオの頭を己の胸にぐいっと引き寄せたのだ。常ならばともかく、酔っ払って身体が斜めになっているリクオは踏ん張りが効かないから、ぽすん、とつららの胸に頭を乗せることとなった。つららは、胸にリクオの頭を抱えて、背中をぽんぽんと軽く叩く。
「リクオ様、もうおねむの時間ですよ。ふ~っしてさしあげますから、寝ましょうね?」
「こら、子供扱いすんな」
 などと抗議しつつも、酒で火照った頬に雪女の胸はひんやりと気持ち良いらしく、リクオは、つららの腕を押しのけようとはしなかった。むしろ、つららの胸に頬ずりしている。
 その様子が面白かったのか、つららはくすくす笑いながら、胸に抱えたリクオの頭のてっぺんに、微風程度に調節した氷の吐息を吹きかける。
「ふぅ~っ」
「ん・・・・」
 酒のせいで熱がこもっていた頭への冷風は大変気持ち良かったらしく、リクオは、飼い主に撫でられた猫のように満足げに目を細めた。
「リクオ様、気持ちいいですか?」
「つらら。もっと・・・」
 酔いが回った舌っ足らずな口調が幼い感じなのが微笑ましくて、つららはますます笑みを深くする。
「はぁーい。ふぅ~っ」
「んー・・・・」
 背中をぽんぽん叩きながら再度つららが頭に冷たい吐息を吹き込むと、目を閉じて満足げな顔をしていたリクオの身体から力が抜けた。予期していたつららは、意識を失ったせいで急に重みが増した身体をちゃんと支える。
 その様を見ていた鴆が、感心した様子で呟いた。
「やっぱ、リクオあやすのはお前が1番うめぇなぁ、雪女」
 言われたつららは、誇らしそうに胸を張る。
 昔から、リクオの1番のお気に入りは、守役のつらら。
 だから、具合が悪かったり眠かったりするのにまだ遊ぶのだとごねるリクオをあやすのは、つららの役目だった。
 他の誰が言っても意地になって退かなかったリクオは、つららが今と同じようにすると、すぐに大人しくなった。
 かつては、年若いつららがリクオの守役に抜擢されたことを妬む者もいたのだが、この様を見せられては、「幼くとも、男は男。雪女の畏れには抗えなかったか。雪女の畏れ、恐るべし」と妬みを引っ込めるしかなかったからだ。
 戸口でカナと清継が固まっているのに気づかないまま、つららは、青田坊に声を掛けた。
「青、お布団敷いてあるから、運んで差し上げて」
「おう!・・・・・ん?」
「ふぇ?」
 指名された青田坊は、リクオをつららから引き離そうとしたのだが、上手くいかない。リクオを引っ張ると、つららの身体も付いてくる。
「あ。こりゃダメだ。諦めろ、雪女」
「鴆様、一体どうなっているんですか?」
 リクオの指がつららの着物でも掴んでいるのなら外してやろうと、つららの後ろに回った鴆だが、早々に諦めた。それもそのはず。
「あのな、リクオの指が、お前の帯締めの下に差し込んであって、しっかり帯締めを握ってんだよ。しかも、お太鼓の中で。この指を解くには、お前が帯を解くしかないが、ここじゃあムリだろ。諦めて、青田坊にでも2人纏めてリクオの部屋に運んでもらって、そこで帯を解けよ」
 かつて、奴良家の住人を震撼させた悪戯っ子は、成長して、対象は限定されたものの、もっと性質が悪くなった。
 幼い頃なら着物の裾を掴む程度で済んだはずなのに、なんという悪知恵か。
 おまけに、リクオは、人間の姿でも見た目よりずっと力がある上に、ましてや今は体格もいい妖怪の姿なので、握力が半端ない。か弱い雪女の力では、指を開かせるのは、無理。だが、青田坊などの大きな手がリクオの指を解くべくお太鼓に突っ込まれたら、つららの帯はあられも無いことになってしまうだろう。
 つららは、さっきまでの余裕が嘘のように慌てた。
 ぺしぺしと、主の頭を叩く。
「リクオ様っ!んもうっ、この悪戯っ子!悪い子!意地悪っ子!起きてください!」
 この有様を見て、魑魅魍魎の主にこの言い様ってどうなの、主従でありなの、と清継とカナは顔を見合わせたのだが、周囲は誰も気にしておらぬので、これはどうやらよくあることで問題にはならないらしい。
 ぺしぺしぺしぺし叩かれて、心地よい眠りに水を差されたリクオは、低く唸った。
「・・・・うるせぇ」
 声がくぐもっているのは、つららの胸元に顔を埋めたままだからである。
「リクオ様、ほら、起きて!手を離して、ご自分の脚で歩いて、お部屋で寝てください!」
「・・・・主に指図すんな」
「立派な主様には指図など致しません。ですが、困った酔っ払いは叱らないと」
「酔ってねぇって」
「酔ってますよ。こんなにぐにゃぐにゃになって、何をおっしゃっているんですか」
「酔ってねぇって言ってんだろうがっ!」
 突如声を荒げたリクオは、くたくただった身体に急に力を入れて、もたれかかっていたつららを逆に引き寄せ、そのまま立ち上がった。つららは、肩の上で担がれるような格好になる。
「はわわっ!?」
「おらっ、わかったか!オレが酔ってねぇって?」
「ひぇぇっ、わかりましたぁっ!わかりましたから下ろしてくださいぃ~っ!」
「よし!」
 リクオは、夜姿には珍しく子供のように破顔すると、つららを抱えたまま座り込んで、横たわった。
 しかも、今度はぺしぺし叩かれまいと、つららの腕が動かないようにぎゅうぎゅう抱き込んでしまう。
「リ、リクオ様っ、わかりましたから、つららが悪ぅございましたから、離してください。そうしたら、静かにして、お休みの邪魔は致しませんから」
「よしよし」
「よくありません!離してください!・・・・誰か助けてっ!」
 前述したようにリクオは力が強いので、つららは自力で逃げられない。
 助けを求めたつららは、周囲を見渡した。
 目が合った鴆は、座布団を折り畳んで、リクオの頭の下に置いて枕にしてやってから、広間を出て行った。
 青田坊は苦笑しながら首を振って、黒田坊と一緒に酒瓶を抱えて広間を出て行く。
 河童は、どこからか持ってきた毛布を、そっと上に掛けてくれてから、広間を去った。
 酔い潰れた首無の頭を胸に抱えた毛倡妓は、小妖怪を指示して、てきぱきと広間の片づけを始める。
 宴がお開きになって片付けが始まった広間は見晴らしが良くなったので、ようやくそこで、つららは、戸口に立ちつくす清継とカナの存在に気づいた。
「リクオ様っ!清継君と家長さんがいらしてますよ!お客様ですよ!ほら、だらしなく寝転がらないで、しゃんとなさって!」
「んー・・・・」
 目を瞑ってつららを抱き込んで寝転がるリクオは、つららが何を言おうと不機嫌そうに唸るだけだ。
 とうとう、つららは叫んだ。
「あーもうっ!どうしてこんなに困った子なんですかっ!」
「それ、たぶんあんたのせいよ」
 間髪入れずにこう言い出したのは、片付けの邪魔になるので一度首無の頭を胴体の上に戻してきた毛倡妓だ。かちゃかちゃと皿を重ねて片付けながら、彼女はこう言った。
「若に抱っこ癖つけたの、あんたでしょ?可愛い可愛いって言って四六時中抱っこしてさ。ひんやりしたあんたの抱っこに慣れたから、生温いあたしらの抱っこはあんまりお気に召さなくなっちゃったの、忘れた?」
「お、覚えてるけど。今、抱っこされてるのは私よ?」
「するのもされんのも似たようなもんでしょ。自業自得だと諦めなさい。あんたが育てたんだから、あんたの責任よ。あ、寝苦しいなら、帯解いて伊達締めも取っ払ってあげようか?」
「そんなサービスいらないわよーっ!」

 清継とカナは、からすみとノートをそのまま持って帰ることとなった。





「・・・・・そう言えば、あのバスの事件がある前は、リクオ君って、結構やんちゃだった気がする」
「そうだね。そう言われてみると、僕もそんな覚えがあるよ」
 持ってきた荷物を渡すことが出来ずに自分で持ち帰りながら、清継とカナはとぼとぼと夜道を歩く。
「メガネを掛け始めた頃から、『良い奴』になっちゃって、・・・ううん、リクオ君はいい人で優しいんだろうけど」
「主はクールでカッコ良かったけど、考えてみれば僕らと同じ歳なんだし、お酒に酔うと子供っぽくなるっていうしねぇ」
 これまで知らなかった新たなリクオ、もしくは、昔のやんちゃな時代に戻ったようなリクオの姿が、2人の目に焼き付いて離れない。
 信頼も好意も揺らがないが、今後ちょっと見る目が変わってしまうかもしれない、と思う。
 それも、仕方が無いことだろう。
 だって、まさか。
「リクオ君が」
「奴良君が」
「「あんな人だったなんて・・・・」」

 夜道を歩く2人は、まだ知らない。
 今後何十年経っても、泥酔した時の彼が変わらず残念であるということを。
 いや、何百年経っても、残念なままであるということを。
   


:::::::






「悪ぃ、母さん。ちょっと来てくれ。親父が酔っ払って、手に負えねぇ」
「あら、そんなにお飲みになるなんて、最近では珍しいわね」
「あー、・・・・オレが、若者と飲み比べしようぜ百鬼の主がまさか逃げねぇよな、て挑発しました。ごめんなさい」
「あなたって子は・・・・・」
「ごめん。謝るから、あの困った男をなんとかして。もう母さんじゃねぇと無理だわ、ありゃ。さっきからずっと、畳に向かって母さんの名前呼んでんだよ」
「・・・・・わかった。責任は取るわ」



【おしまい】
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