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賢い獣

 鋼の錬金術師。ロイアイ。

 吐血しそうだよこの忙しさ、とデスクに突っ伏してうめいてみたら、君はクリアな微笑で返事してくれた。貴重な君の笑顔は概ね好きなのだがその顔はあまり好きじゃないな、これまでの経験から鑑みて。
 と、学習機能を持った俺の脳が囁くと、案の定。
「大丈夫ですよ。吐血ということは内臓疾患でしょうから、ペンを握ってサインすることは可能ですね。私がちゃんと、病院のベッドの上まで書類とペンを持っていって差し上げます。ご安心ください」
 ・・・・血を吐いても何の得も無いらしい。
 微熱を出して学校を休もうとする子供みたいな私のいい様は、見事にカウンターを喰らう。誰かタオルを投げてくれ。タオル、タオル。
 疲れ果てた戦士が白いジャングルから退場する道を封じた君は、今日もまた完璧で一分の隙も無い。
 相変わらず、お見事。
 そーいうとこも好きなんだが、今の俺にはヘビー過ぎ。
 頼むから、優しさをください。
 歯が浮いて歯茎がガタガタ言いそうな優しさを。






 数日前から本格的にどうしようもない忙しさが続いているのは私のせいではない。私はちっとも悪くない。だからこそ、より苛つく(まあ、自業自得でも苛つくのだが)。
 東南にある支部の司令官であった将軍が急に失脚して(失脚自体は良いのだが)、散々書類改竄をかましてくれてたらしく、訂正と修正の嵐がうちに押し寄せてきた(これが良くない)。裁判のために必要なんだと。
 もちろん部下だって大忙しなわけだが、その将軍が認可を与えた書類を再調査して訂正した後の書類に再認可を与える権限を持つのは、ここでは私一人だけで・・・・・・要するに、私は今ここで一番忙しい人間になっている。
 あー、吐きそう。白い紙の上でのたうつ黒い線がぐにゃぐにゃに歪んでる気がするのは私の錯覚か?
 その大馬鹿野郎な将軍サマは今頃中央の刑務所の中らしくって、それがさらに苛つく。きっとのんびりしてるに違いない。固いベッドでも睡眠が取れるならば今の私よりよっぽど優雅な生活だ。私はもう40時間ほど寝てないし、更に言うならここ3日で4時間ほどしか寝てない。その将軍は絶対に私より寝ている。裁判は3日後。奴はそれまで寝て暮らすことが出来る。
 ・・・ムカつくな。中央まで奴を燃やしに行きたい。そしたら、裁判のためにこんな書類を用意する手間が省けるしな。
 突っ伏したままブツブツ呟いていると、頭の上でバサっと音がした。
 白い物が視界を覆う。紙だ。書類だ。
 上官に対してあんまりなこの扱いを講義しようと頭をもたげたら先手を打たれた。この早撃ちガンナーめ。
「上官とは、職務を果たしていらっしゃる方のことです。その書類を仕上げてくださったら、敬意を表してコーヒーを用意して差し上げますから、とっとと仕上げてください。とっとと」
 ああ、容赦が無い。ボロボロになってる俺を鞭打つなんて、愛はいったいどこにあるんだ?愛は?
 甘くて柔らかくて無償の愛が欲しいよ。
 それでもこれ以上グズグズしていると君が怒りだしそうなニュアンスを感じたので、仕方なく頭を上げて書類に目をやった。
 白い紙の上で黒い線どもが踊っている。
 あー、憎ったらしい。







 やるしかないのはわかってるがでもやりたくないな、だってもういい加減しんどいんだ頭の中がゴチャゴチャで思考が整理しきれない、こんな状態で仕事させておくより休ませた方がいいよ、休ませてあげてくれ、だって可哀相だろ?上官愛護の精神は何処に行った?なあ、目が乾くし肩が重いし腰がダルいし、この部屋にいるのもー飽きたんだよ。
とかなんとか、テロリストが凶悪犯罪を起こしてくれたらこの部屋から出られそうなのになー、なんて思い始めた頃、絶妙なタイミングを見極めて君は執務室に戻ってきた。
 いつものノック二回に返事する私の声に力が無くてよれよれなことには気がついてるはずなのに、そのあたりはさらりとスルーして、デスクの上に私のカップを置く。
 コトン。
 発酵手前の脳にその音がやけに響く。
 見なくたってわかってる。そのカップの中は砂糖が二杯入ったミルクたっぷりのコーヒー(もはやカフェオレと言う方が正しい代物)。本当はイロイロ愚痴とか言いたかったのだが、こーいう風に来られると私が言える台詞なんて。
「・・・・待ってろ。あと一枚だ」
 しかない。ちょっと悔しい。
 小さく頷いた君は、私が仕上げた分の書類のチェックを始める。ぺらりぺらりと書類が捲られる音がやけに耳についてなんだろうなコレ?と、書類にサインする傍ら考えてみると、答えに思い至った。
 あーなるほど。そーいうことか。
 ちょっと口の端が緩んだ。
 ここ数日この部屋に缶詰にされて(本当にトイレとシャワー室以外の場所に行っていない)仕事漬けにされて、休んでなくて寝てなくて疲れててこの部屋には君と二人きり、それならいい加減こーなるさ。そりゃあ。自然な成り行き。
 じゃあ、俺をここに閉じ込めた有能な副官殿に責任を取ってもらおうっと。
 自分の中だけで勝手に決めて、ちょうど仕上がった最後の一枚を君に手渡した。それから、君がチェックする間、コーヒーを啜りながら君を眺める。
 ここで今一番忙しいのが私だということはつまり、今二番目に忙しい人間は確実に君で、3日前に私と自分の分の着替えその他を取りに行った以外には、君だって帰宅できていない。
 なのに纏めた金の髪には後れ毛も無く、凛とした立ち姿は普段と変わらなく見える。君のことをなんにもわかっていない部下たちならば、賞賛と畏敬の念を篭めて見つめる姿だろうさ。
 だが、私はわかっている。
 君も真実疲れ果てている。乾燥する季節じゃないのにベージュ系のルージュが塗られた君の唇が少し乾燥しているのがその証拠だ。
 よろしい、その唇を潤してあげよう。
 にんまり笑うと、君は不審な気配を感じたのかこちらを見た。だがもう遅い。
 俺は君の腕を引いて(書類が床に落ちたがそんなこと気にしない)、いきなり唇を重ねた。油断してたところで急に斜め後ろの方向に引っ張られて尻が半分デスクに乗る体勢になってしまった君は、抵抗しようとしても力が入らない。それくらい計算済みだ。
 胸を押す腕を無視して、君の口紅を舐め取る。賢明な君は唇をぐっと結んでいたが、いかんせんこーいう類の問題では、経験豊富な私の方が一枚上手だ。すかさず、君の軍服の上着の中に左手を滑り込ませて、右の乳房をぐっと鷲掴みにする。
 途端、右の乳房に意識が逸れた君は唇のガードを怠って、私の侵入を赦してしまう。私は舌を滑り込ませる。ぬるり。
 頭を後ろに引こうとする気配を感じたので、腕を掴んでいた右手を外して、君の後ろ頭に手をやる。慣れた仕草で髪留めを外すと、ぱさりと肩に落ちた髪から仄かな香りがした。そして、左手を背中に回し、ブラジャーのホックを外す。
 髪留めをデスクの上に置いてキスを中断して顔を覗き込むと、君はこちらを睨んでいた。だが、俺は愉快極まりない。そんな上気した頬で怒った顔しても無駄だ、リザちゃん。それとも、それお誘い?
 俺は満面の笑顔のまま言った。
「しよう」
 疲れるとしたくなる。ましてや、最愛の君がこんなに近くにいては。というわけで、当然の展開。




「嫌です」
「嫌でもいいよ、しよう」
 君がそう言うのは予想できたので、俺はちっとも怯まない。唇を塞いだらおはなしが出来ないので、俺もデスクの上に乗って膝ついて座って、インナーの上から君の胸のぽっちりを小指で引っ掻いてる。リザちゃんは、こうされるのが好きだったね?
「脳が煮えるほどお疲れだということはよくわかりました。黙っておりましたが、後3枚書類をサインしてくだされば、3時間半ほど仮眠が取れるスケジュールになっております。というわけで、後3枚仕上げてください。こんなことしてると、どんどん仮眠のための時間が削られますよ」
「後で仮眠を取るより、今する方がいい。しよう」
 ぽっちりが硬くなってきたってのに、君の声は平静。そーいうとこが征服欲をそそって止まないってこと、気づいているのか、いないのか。
 俺は君のこめかみにキスを一つ。可愛い可愛いリザちゃん、無愛想な書類なんかほっぽり出して、二人でイイことしよう。
「お一人でなさってください。私の仮眠時間を削らないでください」
 硬くなったぽっちりを親指の腹で捏ね捏ね。リザちゃんはこうされるより摘まれるほうが好きだって知ってて、イジワルしてみる。捏ね捏ね。
「大丈夫。途中でダウンしたりしない。君もイカせてあげるよ。ケダモノみたいなスゴイのをしよう」
 今度は眉間の皺にキス。
 でも眉間の皺消えないね。あれれ?
 ま、こないだプロポーズした時の心底嫌そーな顔に比べたら、こんな表情はまだ可愛らしい。やー、もう、あの時はホント嫌そーな顔したよね、君。
「獣に失礼です。こんな狂った生き物はこの世界では人間だけですよ」
 ため息を吐いて、言う君。
 ため息を嫌いな奴って多いし、事実俺も君以外の奴のため息は別に好きじゃないんだが、君のため息は嫌いじゃないな。こう、なんとなく色っぽいっていうか。
「うんうん。こんなにするのが好きで、するためにイロイロ考えたり、いろんなやり方でしようとするのも人間だけだ」
 というわけで、ちっとも怯まない俺。こんなことぐらいで怯む男だったなら、君にキス一つ出来てないよ。こんなふうに両手で豊かな乳房を掬い上げてゆさゆさ揺らしてみたりなんて、出来てないに違いない。
 君の胸はボリュームがあるから、こうやって揺らすと上半身が微妙に揺れて面白いんだよね。
「・・・・・・本当に、時間が押してるんです」
 乳房を揺らしてると声が途切れがちでちょっと面白いけど、おはなしが出来ないから止めよう。これでも紳士なので、君のOKが貰えないままする気はないんだ。
 だからさっさと、OKを出してくれ。
 リザちゃんが好きなぽっちりを摘むのやってあげるから。
「時間なんか気にならなくしてあげるから、安心したまえ」
「提出期限は、46時間43分後。そろそろ仮眠を取らないと、提出期限前に貴方が倒れます。そして、46時間43分後にイーストシティを発つ汽車に乗せないと、裁判に間に合いません。裁判に間に合わないと、貴方の評価が下がります。私は、それは嫌です。貴方だって嫌でしょう?」
 ここまで胸を弄られながらそれでもこんな台詞が吐ける君の有能さには感服するよ。素晴らしいな、副官の鑑。
でも、恋人としてはつれな過ぎる。どーして、俺を封じる言葉をこんなに上手に言えるんだ?
「・・・嫌だな。でも、君としたい」
 君の耳たぶをぱくりと口に含んで、舌でピアスを転がす。諦められないです、の意思表示。
「・・・・・・・・・・・・・・果てしなく不本意で腹立たしいので、今度同じことがあったら容赦無く貴方の腹に蹴りを叩き込みますが、貴方が提出期限を間に合わせるならば、提出した後、何でもして差し上げます」
 俺を蹴って昏倒させると提出期限に間に合わないというくらいのこのギリギリの状況でなければ、確実に必殺の蹴りを放っていたに違いない、ということが幼児でも理解できるほどの殺気が君から漂う。
 リザちゃんのキックは、危険な香り。
「・・・・・・・・ホント?」
 この殺気を浴びながらそれでも胸を弄る手を休めない俺は、もしかして勇者かも。
 勇者ってのは『勇気ある者』のことで、勇気を持って何をするかは関係ないし。
「二言はありません。ですが、今回に限り!です。そして、提出直後から、その翌日の二人一緒の非番の日の夜までが範囲です」
 君からの提案は本当に美味しかったので、俺は胸を揉みながら真面目に考える。
 むむむ(揉み揉み揉み揉み)。
 今ものすごくしたくって、俺はもう、スタンバイOK滑走路を走ってます、て状況で、このまま止めるのは辛い。すごく辛い。
 でも、この提案は美味しい。かなり珍しいほどに美味しい。君はさせてくれるが俺の遊びにはなかなかつきあってくれないからな。
よし。今諦めるのは辛いが、その辛さを乗り越えるに足る報酬だな、これは。
「じゃあ、提出したら、二人でカップルのめっかの南通りの公園に行ってそこでした後、私の家に行って一緒にシャワー浴びながらして、私が密かに君のサイズで作らせておいたシン国の服を着てして、それから朝まで一緒のベッドに。期限一杯ギリギリまで、何回でもする。そして、君は無断で帰ったりしない。この条件を飲んでくれるなら、今は諦めよう」
 だいぶ前から用意して温めていたドリームプランを提案してみる。
 このプランは、どうやって君にOKさせるかという点で(つまり出だしで)計画が頓挫していたんだが、こんなふうに役に立つとは。
 あー、備えあれば憂いなしって本当だ。
「・・・・・食事くらいさせてください」
 俺を昏倒させても構わないなら手刀くらい放ってます、という声で、それでも君はOKの返事を返す。
「わかった。シン国料理のデリバリーを取ろう。で、君はOK?」
 にんまり笑顔で、散々捏ねて摘んで揉んだ乳房から手を離して、君の顔を覗き込んだら。
「Yes、sir」
・・・・・・・・・視線で人が殺せるなら、今頃私は蜂の巣だね?





 そんなわけで、私は今、血も吐かずに真面目に仕事をしている。
 仮眠は3時間に減らされてしまったが、先程とは気力が段違いなので、何の問題も無い。
 ノープログレムっ!
 公園の茂みでお月様の前でショータイムをするために、バスルームで泡塗れになるために、深~いスリットが入ったあの服を君に着てもらうために、それを脱がせるために、私は人間として物理的限界まで頑張ることが出来る。
 これこそ、獣に勝る情熱。そして、獣に勝る計算。
 人間サマ、ばんざ~いっ!!

 
 紙だらけの部屋で、賢い獣がほくそ笑んだ。


【終】
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