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溜息を吐き君は馬鹿だねと彼は呆れたように小さく呟いてそして

 冒険王ビィト。ビィキス。

 捻りあげられた手首が痛い。君はひどく力持ち(その体格からは想像できないほど)で大雑把だけれど感情に振り回されやすいタイプじゃないから、こうやって加減を誤るの珍しいな。いや、それを言うならこの状況の方が珍しいか。君がぼくに対して怒りを顕にしている、なんてさ。

 君は決して温和なタイプじゃないけど、ぼくは怒鳴られた覚えすらほとんどない。きっと、ぼくが君を好きでそれがあんまりあからさまな上にぼくが弱過ぎるから、小さいモノ(小ささとは身長でも歳でもなく)をいたぶる趣味とは程遠い君は、ぼくを怒りの対象にしなかったのだと思う。これまでは。

 けれど、今は違う。間近で圧を感じるほどに見つめてくる君の瞳には確かに怒りが宿っていて。

「受け取れ。『欲しい』、て言え。ちゃんと、望めよ」

 言葉は傲岸で声は硬く、ぼくは震えるほどに君のことが怖かった。反射的に逃げ出そうとした身体が身動ぎするけれど、魔人との戦いで鍛え上げた身体はちっとも揺らがず逃がしてくれない。なのに、別の意味では無防備だった。天撃を放ったらぼくは逃げ出せるけれど、ぼくが君を傷つけようとするわけがないと大前提として無意識に了承しているからその種の警戒は皆無。君はいつだって傲慢でそして正しい。だからぼくは天撃を放てず逃げることができない。

「与えるだけで満足すんな。一人ぼっちの幸福なんて捨てろ。お前が一人で抱えて隠してきたモノ全てをおれに分けて、それでも一緒にいたいと望め。みっともなく手を伸ばせよ」

 突き刺さる言葉のあまりの正しさに、ぼくの胸が痛んだ。刃の言葉だ。

 ぼくにとって正しいことはいつだって痛くて怖い。眩しいのを堪えて見つめることはできるようになったつもりだけど(それでも時々眼を逸らしそうになるけれど)、手を触れるなんてそんな分不相応なことはできないよ。赦されない。ぼく一人が罰せられて終わるならそれでもいいかもしれないけれど、ぼくなんかが触れたら穢れるし歪むかもしれない。そしてぼくは、己がいかに無価値であるかを思い知らされるだろう。その可能性が怖くて怖くて仕方がなくて。

「ぼくにはできないよ・・・・・」

 唇から漏れた声は惨めで情けなかった。弱さを露呈していて、あまりにも滑稽で醜悪だ。失望されるに相応しいほど。

 だからぼくは、長い息を吐いた君の面に失望が浮かぶ瞬間を、安堵と胸の痛み(それでもまだ君に嫌われたくないと思ってしまうぼくの、この覚悟のなさったら)と共に待っていたのだけれど。

「じゃあ、おれが奪う」

 訪れたのは、夢で見ることすらおこがましかった君の唇で。






 くちづけから解放されると、溜息を吐き君は馬鹿だねと彼は呆れたように小さく呟いてそして。

 くしゃくしゃの笑顔で涙を浮かべた。







【おしまい】


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