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ぬらりくおの嫁 その拾

 ぬら孫ss リクつら連載

 今回は短めです。フラグフラグ~♪

 では、以下からどうぞ~♪

 


 今宵もいつも通りに賑わっている化猫屋。
 1階入り口手前のカウンター席は満席で、テーブル席も相席があるほど。その中を、するりするりと赤い羽織の男が歩く。
 客と店員でごった返す店内で客の顔をちらちら覗き込みながら歩くその男は、役者でもなかなかいないほどの秀麗な面立ちと滴る程の色気で目立って当然のはずなのに、客も店員も誰も彼も、男がそこに居ることに気づかぬようだった。
 関東大猿会の若き親分猩影が、己が手腕で集めた若手の部下を労っている席に近づいて、猩影の皿から唐揚げを1つ拝借しても、彼らは誰も気づかない。
 独眼鬼組の一ツ目入道の親分が口をつける前に、幻の焼酎鬼太郎のグラスを奪っていっても、やはり、誰も気に留めぬ。
 何かを、誰かを探すようにきょろきょろしていた男は、やがて、2階へ通じる階段を昇って行った。







「で、弐條城へ入ってからは、どうなったんですかい?」
「オレはあんまり奥まで行ってねぇから、ここは、側近様に語っていただこうじゃねぇか。おぅ、姐さん、リクオと雪女は、どんな塩梅だったんだい?」
「そうですねぇ・・・あ、良太猫、何か書く物持ってない?」
「あー、ペンならありやすが、・・・・この部屋に紙はなかったような。おーい、誰か紙を・・・・っ!?」
 良太猫が襖を開けると、すぐ傍に、あんまりにも近くに、帳面を差し出す店員の猫娘が居た。良太猫は、耳がピンと立つ程驚く。
「あ、ありがとな」
良太猫は、礼を言って帳面を受け取ったが、距離の近さとタイミングの良さにちょっと不信感を抱いた。足音もしなかったのに、なんであんなに近くにいたんだ・・・?
「ありがと。じゃあ、うろ覚えだし雑で悪いんですけど、位置関係をざっと描きますね」
 帳面とペンを受け取った毛倡妓は、さささっと、弐條城の廊下にて鬼童丸と対峙した時の百鬼夜行を簡略化して描いていった。花魁というのは、身分ある客を持て成す為に教養が高くて当然だったので、毛倡妓は一通りの芸事を収めており、絵もなかなか上手い。
 鴆と良太猫は、感心しながら帳面を覗き込む。
「お前、絵うまいなぁ。お、やっぱり、雪女はリクオのすぐ傍にいんだな」
「つららはいつでもリクオ様の左隣ですよ。昔から」
「理由とかあるんですか?」
「特には。ああ、リクオ様が利き手を開けておいたまま誰かを手を繋ごうとすると、相手は左側に来るだろう?それでかも。つららは幼いリクオ様の1番のお気に入りで、外出の際にお供をすることも多かったからな」
「今は、それ以外にも理由がある気もするけどねぇ」
「姐さん?」
 この時の出入りに参加した妖怪は多くいたが、今の話に必要なのは前の方だけだということで、ある程度まで描いたところで毛倡妓は筆を止めた。
「位置関係は、だいたいこんな感じで。この時の弐條城は京妖怪の怨念で出来てた代物だったから、この廊下は鬼童丸が畏れを解放した途端、何も無い野原に鬼だらけの羅城門だけがある空間になりました」
「畏れの発動の仕方にはその妖怪の本質が表れますが、あれは、見事なぐらいに、羅城門以外に何も無い空間でしたね。普通は、元になる景色があって、その景色を一式模した上で己を象徴する要素を入れ込んでいるものですが、空すらなかった。僅かに地はあったが、荒涼たる野原でしたし」
 妖怪の中には、蜘蛛が糸で巣を張るように、己の畏れで一定の空間を紡ぎ上げ、その『場』を支配するモノがいる。『場』に入り込んだ者は、強制的に『場』の法則に従わせられ、それを避けようと思えば『場』を支配する妖怪の畏れを断ち切るしかない。
 本来、鬼童丸は、『場』を支配するタイプの妖怪ではない。だが、あの時の弐條城は、京妖怪千年の宿願が今こそ果たされようとしていた為に、空間を染め上げるほどの妖気が満ちて、城ごと異界の物となっていた。冷えた鉄は固いが、熱した鉄ならば、力を加えれば容易に形を変えることが出来る。そのようにして、湧き上がる妖気に侵された城は、妖気に反応しやすくなっていたのだ。
 『場』を支配する妖怪が、獲物を取り込むために工夫を凝らすのとは違って、鬼童丸の『場』は、彼の妖気に反応して空間が変質したもの。すなわち、ある意味では、具現化された鬼童丸の心の在り様と言える。
 花一輪、星一つもなかった、あの『場』。
 だからこそ、あの『場』を体感してしまった毛倡妓と首無は、洗い足りなかった為に残っていた砂や、取り損ねた魚の骨を噛んでしまった時のような、嫌なことに気づいた、という顔をするのだった。
 その後の顛末を見れば、千年近く付き従おうとも、羽衣狐は鬼童丸の真の主ではなかった。彼にとっての羽衣狐は、主を産み直してくれる相手として敬意の対象ではあっても、それ以上の情はなかったのだろう。
 だから、あの『場』は、あのように荒涼としてきたのだ。千年もの長きに渡り、受け止め受け入れ豊かに満ちていくのではなく、余分としたモノを削ぎ落として己を貫いてきた彼の生き様を表して。
 それは、世を謳歌し旧きも新しきも寿ぐ奴良組の妖怪たちとは、相容れぬ有様だ。
 妖は、闇より出で闇に棲まうモノ。幼い小妖怪などには屈託のないモノもいるが、人型の妖怪には地獄から舞い戻った者やこの世で地獄を体感して闇に堕ちた者もいるし、始まりは無邪気な者でも何百年と経て行く内に昏いモノを目にするのは避けられない。
 だが、それでも、いや、それだからこそ、闇を照らす月を、月光を受けた桜を、その桜を肴にした宴を楽しむのが、奴良組の妖怪の在り様なのだ。
 花を愛で、星を眺め、月を寿いで。
 唄を歌い、酒を飲み、舞い踊り。
 春には桜、夏には蛍、秋には紅葉、冬には雪を。
 奴良組の妖怪は、変わらない想いを胸に、変わり続けるこの世界を愛して、時を重ねていくのだ。
 だから、マティーニのオリーブを口に放り込みながら、毛倡妓は、珍しいほど子供っぽい口調で呟く。
「あたし、あんなとこ大嫌い。あそこ、ヤな感じだったわ」
 ティラミスプリンを掬ったスプーンを咥えたまま、首無もため息を吐いた。
「ボクも嫌いだな。置行堀の方が、よっぽど愛想があるよ」
「置行堀っていやぁ、前に、リクオが祢々切丸を取られちまったことがあったなぁ・・・・・じゃなくて、京の戦いの話だよ。で、鬼童丸の世界で何があったんだよ?」
 ねぎまにかぶりつきながら話を戻してくれた鴆に、貝柱のバター焼きを食べていた良太猫は内心で感謝した。酒の席なので仕方がないのだろうが、今夜は脱線が多い気がする。
 まぁ、酒豪の毛倡妓姐さんがいるから酒の進みも早いしな、と思ったところで、良太猫はおかしなことに気づいた。
 この席は、最初、コース料理と熱燗(首無は茶)で始まった。
 コース料理は、鴆は体調によって食べる量に違いがあるし、普段本家で食事の用意をしている毛倡妓などは目新しい物が食べたいだろうし(女人は食べ物に対して往々にしてチャレンジャーである)、下戸の首無は甘い物が好きだからデザートを食べるだろうと、量は少なめにしてある。だから、後で、各人が好きな物を追加注文しまくっているのだ。
 しかし、それにしても、追加注文が多いような気がしてならない。それに、良太猫自身も、予想より多く注文している。まるで、思ったよりもコース料理の量が少なかったと言わんばかりに。
 酒もそうだ。最初の熱燗がなくなるのが、やけに早くなかっただろうか。毛倡妓が呑むだろうと、かなりの本数を用意していたはずなのだが・・・・・・
「何があったって、そりゃあもう、イロイロありましたよ。リクオ様とつららの2度目の鬼纏とか!」
 毛倡妓の台詞に、良太猫の思索は遮られた。後になって、彼は、この時もっと真面目に考えておかなかったことを後悔する・・・・・・・・



【フラグを立てつつ、次回に続く】
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