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『ノルンの空言』   ヴェルザンディの呟き

 鋼の錬金術師。ロイアイ。


 呟くべき言葉を思い出せない。
 こういうことは割とよくあって、言葉に固めて呟きとして溢したならばこの手から溢れそうにならなかったかもしれないのに、できなくて。
 濁った澱が層を為してこの身を包んでくる。
 苦しい。息が出来ない。
 それでも何も言うことが出来なくて。言うべき言葉なんか思いつけなくて。
 本当の本当にわからなくて。
 ただ苦しみの底でうずくまっていたら、貴方が、縮こまっていた背中をそっと撫でながら言葉をくれるのです。
「もういいんだよ、リザ。私のリザ」
 と。
 貴方の言葉はいつも強いから、この身を包んでいた澱なんて吹き飛ばす。だからやっと息が出来るのです。苦しくなくなるのです。
 このヒトゴロシを、腐敗し沈殿する血の海から救ってくれるのは、いつだって貴方なんです。





 そんな貴方に言い尽くせないほどの感謝をしているくせに、なのに、大切な大切な手が傷つきそうなほど強く拳を握り締める貴方にかけてあげられる言葉が、ありません。見当たりません。わかりません。
 小刻みに震えながら掌に爪の跡がつくほど、爪が食い込んで皮膚を破りそうなほど、強く強く拳を握り締める貴方。
 ああ、貴方が苦しんでいる。
 そんなことはすぐわかるのです。いつだって貴方を見つめているし、貴方の声に耳を澄ましているのですから。それくらいはすぐにわかります。
 問題は、わからないのは、こんな時に言って差し上げるべき台詞です。貴方を苦しめる澱を吹き飛ばして差し上げる強い言葉です。今、それが必要なんです。
 なのにわかりません。どうしても。珍しくたくさん考えてみるのですが、でもやはりわからないのです。
 そんな自分が情けなくて、自分の無力さが憤ろしくて、貴方が苦しむのが辛くて辛くて。
 無力なこの両手でそっと触れて頬を摺り寄せると、貴方の拳に滴が零れました。
 ぽとり。ぽとり。
 と。
 そうしたら、貴方は目が醒めた人のような顔になって、こちらを見て深く息を吸って、そしてこの身を抱き寄せ、ぎゅうぎゅうと抱きしめながら呟くのでした。
「ありがとう、リザ」 
 と。


 
 その言葉が嬉しくて、誇らしくて。
 貴方が愛しくて。愛しくて。ただ愛しくて。
 何かを伝えたくて堪らなくなって唇を開くのですが。
 呟くべき言葉を思い出せないのです。



 思い出せないのです。



【end】
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