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ぬらりくおの嫁 その陸

 ぬら孫 リクつら連載。

 こんなキャラの動向を気にしているのはわたし1人かもな、と思いつつ、原作で描かれていなくて現出している情報に反していなければ、好きに妄想していいんだ、と考える水鏡は、隙間を埋めてみました。



 古き情緒を守りつつも、新しきを取り入れる化猫屋の最近人気のデザートメニューは、サーターアンダーギーである。
 沖縄のお菓子として有名な揚げドーナツで、ただ油っこいだけの物だと思われがちだが、以前化猫屋を訪れたキジムナーに教えてもらったレシピで作ったサーターアンダーギーは、油っぽいというより香ばしくて美味しい。
 追加注文されたサーターアンダーギーを持って、奥座敷担当の猫娘はせかせかと廊下を急ぐ。
 自分が見張っていない間に何かが起きたら、というか、気になる話題を聞き損ねては悔しくてたまらないので、客の姿がない場所では、こっそり走ってしまったり。
 最速でサーターアンダーギーを届けてから、猫娘は先程の定位置に戻った。
 さて、奥座敷の方々は、どんな話を聞かせてくれるのか?








「そういや、いつ、あいつら仲直りしたんだ?」
 あつあつのサーターアンダーギー(今夜はクランベリーとアーモンド入り)をはふはふ頬張っていた鴆は、ふと思いついた疑問を口に出した。
「このサーターアンダーギー、美味しいわね。アタシ、もう、他所の店の食べる気しないわ。レシピ教えてよ、良太猫」
「いやぁ、姐さん、そいつは企業秘密ってやつでして」
「これ、お持ち帰りは可能かい?うちの女衆にも食べさせてやりたいんだが」
「だったら、明日にでも揚げたてを持って本家にお邪魔しますよ」
「ホント!?嬉しいわ。皆、きっと喜ぶわよ。今、うち、ドーナツブームなのよね」
「そうなんですか?」
「若とつららが、出かけた時の土産にクリスピークリームドーナツのオリジナルクレーズドを箱買いしてきてくれて、以来、皆、ドーナツにハマっちゃって。うちで作ったポンデリング、なかなかだったわよ。こんにゃくマンナン入りのカリカリのも、結構おいしかったわね」
「ボクは、焼きドは認められないな。揚げてこそドーナツだろう。ぱさぱさの焼きドを食べるぐらいなら、しっとりしたパウンドケーキを食べたい」
「蒸しドーナツって、『ドーナツ』っていうより、蒸しケーキですよね。美味いこた美味いんですが」
「おい、人の話聞けよ!今夜の議題を思い出せ!」
 ドーナツ談義を繰り広げている毛倡妓と首無と良太猫に、鴆がツッコミを入れると、3人ははっと我に返った。
「申し訳ありません、鴆様。えーと、土蜘蛛との戦いの後、つららが拗ねてた件ですよね」
「おう、それだ。合流したお前らにリクオが声掛けてた時、確か、雪女はまだ拗ねてただろ?」
 鴆は、大妖との一戦直後で妖気迸り、こさえた傷でさえその男っぷりをいや増していた夜姿のリクオが、わざわざ名指しで流し眼までくれてつららに声を掛けたのに、つららが顔を背けた時のことが気になるらしい。
「あの時は、合流したばかりで経緯を知らなかったので、少し驚きましたね。最近はああいう姿をあまり見ていなかったので」
「前は、よく見てたのかい?」
「リクオ様が悪戯三昧だった頃には、時々見かけましたよ。何せ、つららはリクオ様の一番のお気に入りで、反応も面白い。だから、本家の妖怪の数が多くとも、悪戯の標的にされた回数は随一で。最初は、一時的に怒ってもすぐに許してしまうんですけど、あんまり連続で悪戯されると、さすがに拗ねていましたね」
「あの娘、1日の内に、逆さ吊り・カエルの卵プレゼント・廊下に蝋を塗って滑って転ばせる、のコンボとかやられてましたからね。そんな時はさすがに、『リクオ様なんかもう知りません!』て言って、そっぽ向いてたわね。そうしたら、それまで、木魚達磨様に叱られてもこっそり舌を出していたリクオ様が、焦って謝ってこられて」
「だけど、つららも意地を張ってしまって、謝っただけじゃ許してくれなかったりするから、リクオ様が、『どうしたらつららの機嫌が直ると思う?』て相談してこられたりしましたね」
 首無と毛倡妓は、今や立派に成長し奴良組の三代目を継承した我らが若君のかつての姿を、懐かしく思い出す。首無は首をボール代わりにされたり、毛倡妓は髪を柱に括りつけられたり、と彼らも悪戯っ子の被害にはあっていたのだが、やはり、1番の被害者はつららであった。
 それって、男の子は小さい頃好きな女の子をつい苛めちゃう、てやつなんじゃね?
 と、口には出さずともこの場の全員(+廊下で盗み聞きしている猫娘)が思ったりしながら、話は続く。
「どうしたら、機嫌が直ったんですか?」
「つららも、結局、リクオ様が大好きだから、簡単よ。そっぽ向かれても挫けずに抱きついて『ごめんね!大好きだよ、つらら!』とか何度も言ってたら、大概どうにかなるし。それか、自分の分のアイスをつららに譲ったり、花でも摘んでいったりして、『お詫びだよ。ごめんね、つらら。大好きだよ』とか言ったら、おしまい」
 その光景を思い出して、毛倡妓はふふふと笑う。
 妖怪としてはかなり若く幼い部分を残しているつららと、ワガママ悪戯っ子なお坊ちゃんそのものであった幼いリクオのそんなやり取りは、姉弟のようで大変微笑ましかった。
「それは、簡単な・・・・」
「雪女は情が深いんだから、結局、好きな相手のことは許しちゃうものなのよ。ましてや、あの娘は素直な性質だし」
「じゃあ、あん時もそんなふうに仲直りしたのか?」
 鴆が言った言葉に、首無と毛倡妓は考える。
 『良い人間』になる、と言いだしてからのリクオは、屋敷の妖怪に悪戯をしなくなった。悪戯の標的にされていた妖怪たちは、安堵した部分がありつつも、それを寂しく思っていた。
だが、今年、妖怪として覚醒してからは、夜姿はぬらりひょんの血の赴くまま、昼姿でも以前よりは解放された様子で、悪戯は再開されている。
 といっても、もう幼い子供ではないので、目を瞑らせた相手の掌にカエルの卵を乗せるようなことはしないのだが、その分、言葉遊びでからかうことなどが増えた。
 その標的となるのは、やはり、つららが1番多い。だから、当然、つららの機嫌を損ねてしまうこともある。
 はて、そんな時、凛々しく成長なさった我らが大将はどうなさっていたっけ?そういえばこの間は・・・・、と前例を元にした推測を口にしようかと思った時に、良太猫が口を挟んだ。
「鴆様、それはちょいと違いやす」
「ん?良太猫、お前、なんで知ってんだ?」
 土蜘蛛の巨体が瓦礫を撒き散らしながら空の彼方に消えてから、真っ先に行われたのは、治療だ。鴆は、大将であるリクオ、傷を負って浚われ吊るされていたつらら、手を貸してくれた遠野衆、京妖怪の幹部とやり合ってきた側近衆、土蜘蛛との戦いに巻き込まれたその他の妖怪、の順で診ていって、それはもう大忙しだった。
 だから、治療を終えたつららが礼を述べた後姿を消し、その後を追うようにリクオの姿も消えたことには気づいていたが、2人がどんなやり取りをしたかまではわからない。
 刀傷を負って治療を待っていた毛倡妓と、自身も戦いで負傷していた上に毛倡妓が心配だった首無も、リクオたちはそう遠くへ行くまいと思って、追いかけたりなどはしなかった。
 なのにどうして、その場に居なかった良太猫が、仔細を知っているのだろうか?
「いやね、京の戦いで奴良組入りした鞍馬山の天狗たちが、こないだ、うちの店で酔っぱらった時に話してたんですよ。大天狗はノされちまったし、勢いがあるっぽいから、となんとなくリクオ様についてきたそいつらは、輪の外れの方に居たんですが、雪女がお堂の裏の方に行くのが見えたんですって。で、あの女、浚われたのを助けられて治療されたばっかのはずなのにどこ行くんだ、と気になって後を追いかけたらしいんです」
「そういえば、合流した時にちらっと姿は見たし、弐條城へ乗り込む前に腹ごなしした時には居た気がするが、その間は、見た覚えがないな」
「ええ。天狗たちは、雪女に声を掛けようとしたところでリクオ様が追いかけてこられて、空気を読まずにそこに声を掛けることも、物音立ててその場を立ち去ることも出来ずに、瓦礫の影に身を竦めて、リクオ様と雪女のやり取りを見ているしかなかったそうで」
 鏖地蔵が暗示を掛けたとはいえ、これまで一緒に苦労してきたのに大事な時に仲間に忘れられたからと、暗示を解く努力もせずに年甲斐もなく盛大にグレて引き籠っていた鞍馬山の大天狗は、かなり偏屈で扱い辛い爺さんである。なので、配下の天狗たちも、日々苦労が絶えなかった。
 配下であったはずの天狗たちがリクオの百鬼夜行に参加して、大天狗が不参加だったのは、鬼纏で喰らった毒の治療を突っぱねた大天狗に、これまで散々振り回されまくって来た天狗たちがイラッときて、鞍馬山に放置してきたからだった。
 だから、天狗たちには、新しい主であるリクオに取り立ててもらいたいという気持ちがあったし、リクオの人となりにも興味があった。それで、リクオのお気に入りの側近らしい女の身を案じて追いかけ、つい、その場に隠れて盗み見てしまったのである。
「へぇ。じゃあ、空気が読める天狗さんらは、一体、どんな光景を見たんだい?」
「それはですね・・・・」
 良太猫は、記憶を呼び覚まして、天狗たちが語った内容をできるだけ正確に伝えようとした。




:::::::::::




 何度名を呼んでも女が振り返らず足も止めないので、男は、そっと、だがしかし逃れられぬ力を籠めて、細い手首を掴んだ。
 さすがに、そこまでされては無視を続けるわけにもいかぬ。女は足を止めた。だが、素直で天真爛漫で、晴れた日の雪原のような眩い笑顔でよく笑う女であるのに、今は、顔を上げようとはしない。
 物心つく前からこの女に過剰なほどに構われて育った男は、昼間など己に構い倒す女に対して時々そっけないぐらいであるくせに、自分が呼んでいるのに女が応えないのは我慢がならぬのだろう。些か焦れた口調で、言葉を紡ぐ。
「つらら、お前、どうしたよ?具合でも悪ぃのか?」
「いえ。鴆様にも診ていただきましたし、もう大丈夫です」
 女は、やはり、俯いたままだ。
「おいっ、つらら!お前、オレに不満があるんなら、はっきり言え!助けに来んのが遅過ぎるとか、一応勝ったっぽいけど土蜘蛛元気じゃねえかとか」
 戦の余韻と、何より、むざむざと目の前で女を浚われてしまった己への自責の念が強くて、男の語調は強くなる。女は、男の言葉に、打たれたように顔を上げた。
「そんなっ!お詫びを申し上げこそすれ、リクオ様に不満などございません!」
「詫び?」
「おめおめと敵に捕まって、主の足手纏いになるなど・・・・」
「・・・お前は、何も悪くねぇよ」
 女は、また顔を伏せようとしたが、叶わなかった。剣を握る固い指が、細いその顎に掛っていたからだ。
 黄金螺旋の瞳をまっすぐ見つめて、男は言う。
「あん時は、全員、土蜘蛛にヤラれてたじゃねえか。捕まったのは、お前じゃなくて、大将張ってるくせに弱っちかったオレのせいだろうが。それに、お前が、そんなオレでも信じて鬼纏われてくれたおかげで、土蜘蛛の腕を一本破壊できた。あいつ、斬ってもくっつくみてぇだが、すぐに生やしてなかったってことは、凍らせて砕いた腕は再生できねぇのかもしれねぇし、再生できるにしても時間掛りそうだぞ。・・・・・お前は、よくやったよ。ありがとうな、つらら」
 男を守ることを己の存在理由としてきた女は、こうまでまっすぐ労われて、感極まったのだろう。瞳が潤み、雪のように白い頬が薄紅に染まる。
 男は、そんな女を愛おしげに見つめて、そっと抱き寄せた。やっと我が手に取り戻せた女を二度と手放すまいと強く、けれど、傷ついたその身が痛まぬようにと優しく。
「つらら、オレは不甲斐ねぇ男だが、これからも、ずっと傍にいてくれな」
「・・・リクオ様!はいっ!はい!未来永劫、ずっとお傍に」
 女の瞳から、想いが、小さな氷粒となって零れていく。
 氷粒は、眩しい夜明けの光を浴びて、きらきらと輝いていた。

 というわけで、天狗たちは、出るタイミングどころか、この場から逃げ出すタイミングも完全に失って、すんごく途方に暮れたのだった。
(ちょっ、なんか痒い!蚊に刺された!)
(アホ!動くな!気づかれるぞっ!・・・・俺も痒いんだからなっ!)
(・・・・・掻き毟ったらバレるよな?)
(心頭滅却すれば火もまた涼し・・・・でも、痒いのはどうしようもねぇよっ!)


:::::::::::::::


【つづく】
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