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あかときくだち

 ぬら孫 リクつら←カナss。

 今週の『追う者 追われる者』まで読んで、この夜が明けた時のことを妄想してみました。
 よーしっ、出発前に書きあげられた!さぁ、寝るぞ!
 薄汚れた灯りで濁った闇は、朝の光に拭われた。
 夜明け前まで続いていた騒動が嘘のように、早朝の街は静かだ。
 悪い夢から覚めたみたい、とカナは思う。
 この夜は全てを変えてしまって、怖いことがたくさん起こったけれど、もしかしたらまだ全ては終わっていないのかもしれないけれど、でも、朝の空気が澄んでいる気がしたから、朝の光が清々しいと思えたから、大丈夫な気がした。
 奴良家につれていってもらってずっと匿われていたから、戦闘の詳しい経緯をカナは知らない。騒々しい足音や時に聞こえる怒鳴り声にビクビクしていたら、いつの間にか夜が明けていた。
 若菜が言うには、本家の妖怪は皆リクオを慕っていて気のいい者ばかりらしいのだが、この夜は抗争の真っ最中で、誰も彼もが気が立っている様子で、カナは正直怖かったのだ。
 しかし、後で奴良家に匿われてきた他の清十字団の面々はさほど怖がっている様子はなく、鳥居などは、それどころか、彼らを奴良家に送り届けまた戦いに戻る長髪長身の僧侶の手をしっかと握って、「また助けてくれて、ありがとうございますっ!私は、あなたを信じていますから!どうか、無事に帰ってきてくださいね!」とまっすぐ目を見て微笑んでいた。
 鳥居の、その、清々しい程の迷いの無さに、カナは戸惑った。以前に二度も助けてもらったことがあったらしいが、それ以上の人となりも何も知らないのにあんなふうに言えるなんて、と。
 そして、自分が、よく知っているはずのリクオに対して、同じことが出来なかったことに思い至ったのだった。
 リクオがずっと隠してきた正体をカナの目の前で明かしたのは、あの恐ろしい妖怪からカナを守る為だったはずだ。
 なのに、カナは、信じるどころか「ありがとう」の一言すら口にしていない。口にしたのは、自身の不安と混乱だけ。
 幼馴染のリクオと憧れのあの人が同一人物で、どう接すればいいのか混乱してしまったけれど、幼馴染のリクオのことは信じられるはずだし、憧れのあの人のことだって信じていたはずなのに、カナは、鳥居と同じようには出来なかった。
 鳥居の言葉を聴いた僧侶は、一瞬、驚いたように目を見張り、そして、眩しいモノを見つめるように微笑んだ。
 突然妖怪に襲われた上に友達が実は妖怪だったと知らされて、鳥居だって、怖かったし混乱していたし不安だっただろう。ただ、鳥居は、自分を助けに来てくれた僧侶の気持ちを考えて、この後また戦いに赴く彼に何かできないかと、彼の力になれる言葉は無いかと考えて、ああ言った。その鳥居の気持ちがちゃんと伝わったのだ。
 だから、戦闘は終了しリクオがもうすぐ帰ってくると聞いたカナは、今度は鳥居と同じようにしようと思って、奴良家の門の内側でリクオを待っていた。
 リクオは、カナを、皆を、人間を守ってくれたのだから。
 やがて、静かな朝に賑々しい足音が混ざり、通りの向こうから人影が現れる。
 先頭に立つのは、総大将であるリクオ。もう昼の姿に戻っているが、眼鏡を外し学ランのままで数多の妖怪を従えて歩く姿は、しっくりと馴染んでいた。
 だから、あのリクオこそが魑魅魍魎の主なのだと、納得できた。
 だが、姿を見たら駆け寄ろうと思っていたカナの脚が、動かない。カナは、門の内側に潜んだまま、唇を戦慄かせて、リクオをじっと見つめるだけだ。
 リクオが、その腕に、白い着物姿の女を抱いていたから。







 いつもは鴉が騒々しい浮世絵町の朝だが、今朝は、先刻まで続いていた闘いに畏れを為したのか、とても静かだ。禍言を吐く鳥と人間に化けて扇動していた妖怪を倒すと、洗脳が解けた人々は正気に戻り家に帰った。他の人々は、夜間の騒動に怯えて戸を閉ざしている。
 だから、今朝は、とても静か。
 この静けさが良いことなのか悪いことなのか、つららにはわからない。
 直前に敵の企みに気づけたおかげで、魔王山ン本は魂の無い不完全な形で復活となり、リクオは、見事にそいつを滅ぼしてくれた。
 だが、ここが百物語組の嫌らしいところなのだが、勝利したのに、全てが一件落着とは言い難いのだ。
 リクオを取り巻く世界は、確実に変化してしまった。
 洗脳されていた人々は忘れてしまったが、洗脳されていなかった人々が見聞きしたことは、消し去ることが出来ない。ネットワーク上には様々な情報が行き交っていたから、それらの記録は残ってしまうだろう。
 この夜を、人々がどう考えて受け止めるのか、それは、誰にもわからなかった。
 願わくば、世界が、人間が、こんなに優しいリクオ様に優しくしてくれますように、との祈りを紡ぎながら、つららは、朝の街を歩く。
 他の妖怪らの足取りは、もっと軽かった。多くの者は、良くも悪くも単純な気質であり、現代の人の世の情報伝播の速さや恐ろしさについてはそこまで考えておらぬようで、単純に、二代目の鯉伴を害した敵を倒したことに浮かれている。
 リクオの側近たちは、リクオの護衛として人間社会に紛れこむことも多かった為に、この夜が終わりではなく始まりなのだと気づいてはいたが、案じて不安になるより、希望を抱いて今後も対処していこうと、今は戦勝を喜ぶつもりのようで、緩んではおらぬが顔は明るかった。
 魔王山ン本への最後の一太刀を昼と夜が混じった状態で振るい、倒した後は昼姿へ転じたリクオも、同じ考えのようで、朝日を浴びた瞳が金茶に輝いている。
 その瞳を見つめている内に、つららの内に在った憂いは晴れていった。
 夜闇を圧し炯々と光る紅眼は見惚れるほど麗しく魅力的だが、陽光を受けて輝く金茶の瞳にはまた別の、見る者の心をしみじみと解してくれる何かがあって、冷たいはずのつららの胸の奥がほっこりと温かくなる。
 だから、気が緩んでしまったのだろう。つららの膝がかくんと落ちて、足が止まった。
「つらら?」
 リクオの百鬼夜行の左側最前列は、つららの指定席。誰が決めたわけでもないが、なんとなく皆がそのように認識していたので、この時も、つららはリクオのすぐ左隣を歩いていた。故に、つららの変調にすぐに気づいたリクオは足を止める。
 百鬼夜行は、主あってのモノ。主が進むならばどこにだって行くし、主が止まるなら皆止まる。だから、つららは慌てた。
「い、いえっ、あの、その、鼻緒が緩んでしまったみたいで。朧車にでも乗せてもらいますので、リクオ様はどうぞお進みください」
 もちろん、つららの言ったことは嘘だ。気が緩んだことで一気に疲れが出てしまったようで、俯いた頭が上がらないぐらいに重いし、目も霞んでいる。普段身の内を満たしているはずの氷の妖力がすっかり抜けてしまっているのが、自分でもわかった。これでは、自分の足で歩いて本家まで帰ることは出来ないだろう。
 しかし、主の足を止め皆を立ち止まらせる必要などはない。今は道の端にでも退いておいて、後で、夜行の後方にいる朧車やら蛇ニョロやらに頼んで運んでもらえばいい話だ。
 つららは、重い足を引き摺るようにして脇へ退こうとしたが、その前にリクオが白い手を掴んだ。
「つらら、掴まって」
 あっさりと、何の躊躇いも無く、つららの腕をぐいと引いて体勢を崩させたリクオは、細い体を姫抱きにしてすたすた歩き出す。
「ひぇっ!?な、何を!?お、お止めください、リクオ様っ!」
「?今更だろ?」
 これまで何度もこうやって抱きあげたことがある上に、つい夕刻に気絶したつららを抱えながら戦っていたリクオは、つららが何故焦っているのかがわからない。
 だが、つららにとって、戦闘中に、情けなくも気絶した下僕を、これ以上攻撃されたり人質に取られたりしない為に抱えていたというのと、後ろにぞろぞろ百鬼がついてきているこの状況で、敵の首魁を倒し疲れているはずの主自らが下僕を抱っこして歩くというのは、全然違う。元守役で世話役で側近頭の地位を賜ったつららがリクオのお気に入りであることは、奴良家の皆が承知しているが、いくらなんでもこれはないだろう、と恥ずかしさと居たたまれなさで、つららはわたわたと暴れた。
「こら、大人しくしろよ」
「む、無理ですよぅ~」
 顔を真っ赤にして主の腕の中から出ようとじたばたもがくつららは、小動物のようで微笑ましい。毛倡妓などは、その様を見やって、くすくす笑っている。しかし、ここで、空気を読まぬ(読めぬ)男が1人。
「リクオ様、俺が代わりましょうか?リクオ様もお疲れでしょうし」
 気のいい巨漢、青田坊である。
 言っておくが、青田坊には、他意も下心もない。ただ、彼は、つららの居たたまれなさを察して手助けしてやろうと思っただけなのだ。
「あ、青、お願・・・」
「いいよ。ボクが運ぶから」
 青田坊の助け手を受け取ろうとしたつららの言葉を、リクオがぴしゃりと遮る。
「いや、でも、リクオ様・・・・」
「いーから。つらら軽いし、ボクは平気だから」
 秋に幹部入りするまでは護衛としてお傍近くに侍っていた青田坊は、リクオが『いーから』と言い出すと退かないことをよく知っている。故に、男子として大将として疲れなど見せられぬという意地かなと思い、あっさり引き下がった。
「リクオ様、あの、・・・・」
「2回も鬼纏したから、疲れてるんだろ、お前?その前にも攻撃喰らったりしてたんだし」
 リクオの言葉に、疲れを見抜かれていたと知ったつららはビクッと震えた。
「2回もしていたんですか?それは、確かに疲れるな。リクオ様は大丈夫なんですか?」
 皆は、魔王山ン本との決戦の際に雪の下紅梅を放つ姿は目にしていたが、リクオとつららが二人きりで敵幹部と対峙した時に畏襲を行っていたことを知らなかった。鬼纏経験者の黒田坊は、鬼纏われている間中ずっと畏れを放出し続けるとどれぐらい疲れるかをよくわかっているので、二人の身を案じる。
「大丈夫。ボクは、お父さんより人間の部分が多い分、鬼纏の負担が軽いみたいで、そんなに疲れてないよ」
 強い妖力の持ち主であった生粋の妖である初代ぬらりひょんより、半妖である二代目鯉伴の方が、純粋な妖力は弱かった。だが、鯉伴は、その代わりに、生粋の妖には使えぬ必殺技・鬼纏を編みだすことが出来た。 
 1/4しか妖の血を持たないリクオは、鯉伴よりも妖力が弱いが、その分、鬼纏の負担も軽いらしい。今夜は一晩中戦った上に何度も鬼纏を行使したが、つららを抱えて歩く足取りに危ういところはなかった。
「そうなんですか」
 黒田坊は、リクオの言葉に納得した。しかし。
「ですがっ、やっぱり、リクオ様が1番お疲れのはずなんですから・・・・・」
 抱えられている当の本人であるつららは、もう暴れる余力はないもののまだ納得できぬ様子で、言葉を連ねようとする。
 もちろん、つららは、リクオにこうして抱きかかえられるのが嫌というわけではない。皆の目の前なので恥ずかしいが、好いた男の腕の中にいるのだから、どうしようもなく胸が高鳴っている。
 しかし、だからこそ、耳まで赤くして意識してしまっている自分が、居たたまれなくなるのだ。
 けれど、普段は物腰穏やかでも、いざという時は己の意思を曲げないリクオは、歩きながら、額同士がくっつきそうなほど顔を近づけて、少し低い声で言う。
「いーから。つららは、黙って、おとなしくしてろ」
 好いた男にそんなにされてしまったら、つららができることなんて、もう他に無い。
「・・・・はい」
 蚊が鳴くような声でそう言って、火照った頬を隠すように袖で顔を覆うのみ。





 
 いつもより静かな早朝の通りを、リクオを先頭に凱旋する百鬼夜行。カナは、門の影に身を隠したまま動けない。
 すると、玄関の奥から騒々しい足音がして、ガラリと戸が開き、人影が飛び出してきた。
 清継だ。
 靴も履かず靴下のまま門の外に駆け出てきた清継は、まっすぐにリクオを見つめた。清継に気づいたリクオが、そして後ろに続く百鬼が、足を止める。
 清継は、洗脳の効果を持つ件の畏れを間近で浴びたせいで一時は混乱したが、百物語組に襲われた自分を助けてくれた奴良組の妖怪の姿を見て、無理やり増幅された猜疑心や不安を意思の力で律した。そして、匿われた奴良本家の中で、自身のHPを使って百物語組の妖怪の情報を集めて初代に報告し、また、自身のHPのみならずネットワーク上のいろんな場所で、百物語組と奴良組の差異や奴良組の大義を喧伝して、百物語組の情報戦に対抗してくれた。
 トサカ丸からその功績の報告を受けていたリクオは、清継に感謝を伝えようとしたが、その前に、勢いよく顔を上げて、清継が大声を出した。
「おかえり、奴良君!僕は、君にまた会えて嬉しいっ!魑魅魍魎の主、僕らを、『人間』を守ってくれて、ありがとうっっ!」
 感極まって涙を零しながら、魑魅魍魎の主への積年の想いを、正体を知った今新たに胸にこみ上げる友への気持ちを口にする清継。リクオは、最初、驚いた顔をして、それから、くすぐったいような笑みを浮かべた。
「ただいま、清継君。こっちこそ、ありがとう」
「ふっ、うっ、ぐすっ。き、君の役に立てたのなら、僕は、嬉しいよ・・・ううっ」
 清継は、整った顔立ちをぐちゃぐちゃにして泣く。それは、みっともないような姿なのに、奴良組の妖怪たちには眩しく見えた。 
 心無い人間はいつでもどこにでも居る。人の世に悪意は絶えぬ。だが、清継の姿は、妖と人はこんな縁を結ぶことも出来るのだ、と思わせてくれた。リクオを信じて人間を守ってきた彼らの胸が、ぽかぽかと温かくなった。






 しかし、しみじみとしたとてもイイ雰囲気は、その後すぐに破られる。
「清継くーん、どこっすかー・・・・・及川さんっ!?ぬ、奴良、及川さんになにしてっ!?」
「え?奴良、帰ってきたの。おかえりーっ!お疲れさまーっ!」
「奴良もつららちゃんも皆さんも、おかえりなさいっ!て、つららちゃんどうしたの!?」
 清継を探しに現れた清十字団の面々のおかげで、奴良家の門前は一気に騒がしくなってしまった。その騒々しさがなんだかおかしくなってきて、リクオはくすくす笑いながら、足を進める。
「ただいま、皆。無事で良かった。つららは、ちょっと疲れちゃっただけだから、大丈夫」
「リ、リクオ様、やっぱり下ろしてくださいよぅ~。もう大丈夫ですって!」
 清継の姿を見た途端緊張して身を竦め、清継の言葉を聞いて涙ぐんでいたつららは、我に返って、またじたばた暴れ出した。
「往生際が悪いぞ、つらら。関東妖怪総元締奴良組三代目閣下殿の命令だ。大人しく部屋まで運ばれて寝てろ。毛倡妓、疲れてるとこ悪いけど、ついてきて手伝ってね」
「はぁい、承りました~♪」
「リクオ様~っ!?」
 自分の発言を使ってからかわれて、つららは抗議の声を上げるが、リクオが気にするはずもない。にこにこしながら、門の前でまだ泣いている清継に声を掛ける。
「清継君、ほら、泣き止んで。一緒に朝ご飯でも食べようよ」
「うううっ。僕は、僕はねっ・・・・・!」
「はいはい。後でいくらでも聞くから、冬の朝に靴も履かずにそんなとこ立ってたら、風邪引くよ?」
「ふっ。ぐすっ。うん。うん・・・」
 リクオは、涙を袖で拭った清継と並んで門の内側に入る。
「リ、リクオ君、おかえり・・・」
 そこへ、声が掛けられた。カナだ。
 カナは、女性に対して躊躇しない印象がある夜姿ならばともかく、『良い奴』な印象が強い昼姿がつららを抱えていたことに驚き、飛び出してきた清継の勢いに気圧され、玄関から声を掛けてきた清十字団にタイミングを逸し、現在の『良い奴』というより活発だった昔を思い出させる口調でつららとやり取りする姿になんだか躊躇って、思いっきり出鼻を挫かれていた。
 それに、笑顔で再会しようと思っていたのに、リクオの腕の中にいるつららのことが気になって、カナの笑顔は引き攣ってしまっている。
 カナの存在に気づいたつららは、カナを足手纏いと言った自分が主の手を煩わせている姿を晒していることが恥ずかしくなって、またしてもリクオの腕の中でもがいた。だが。
「カナちゃん。ただいま。無事で良かった。あ、こら、つらら、暴れるなら、このままでおじいちゃんとこに報告に行っちゃうぞ」 
「やっ!もうっ、なんてこと言うんですか、この悪戯っ子!ちょっと、首無、青、黒、河童、毛倡妓っ、笑ってないで助けてよっ!」
「諦めろ、つらら。三代目の労いだ。ありがたくお受けしておけ」
「そうそう。あんまり暴れると、ぐるぐる巻きに縛っちゃうわよ」
 どうやら、この件に関して、つららの味方は誰もいないらしい。他の妖怪たちもくすくす笑うばかり。
 とうとう、つららは、リクオに抱えられたまま玄関に入ってしまった。
 ここで、リクオが靴を脱ぐ為につららを一度下すかと思ったら、なんとリクオは、厳しく行儀作法を躾けられた名家の子息にあるまじきことに、ぽぽいっと足だけで靴を脱いでしまう(転がった靴は、首無が揃えてくれた)。
 これはもうダメだ。と諦めて大人しくしたつららに、島が駆け寄った。
「及川さーん!及川さーん!大丈夫っすかー!?」
「え。あ、はい。大丈夫です」
「及川さん、ホントに雪女なんだ・・・。あ、あの、雪女って素敵ですよねっ!」
「ふぇっ?あ、ありがとう、島君」
 大変気の毒な話だが、つららは、島にほとんど関心がない。だから、せっかく島が正体を受け入れてくれたのに、先程の清継とリクオのようには話が盛り上がらないのだった。リクオは苦笑する。
「島君、つららは部屋で寝かせてくるから、話はまた後でね。毛倡妓~」
「はぁ~い!」
「お、及川さん・・・・・・」
 種族の違いを乗り越えて恋を貫けども、相手は他の男に姫抱っこされて去っていく。慕っていた清継も、リクオの傍にいたいらしく、ぐすぐすと鼻を啜りながら一緒につららの部屋へ向かってしまった(リクオは清継の同行は咎めなかった)。
 見ていた巻は、さすがにちょっと島が憐れになってくる。島が一途であることは認めているので。
「うーん、島、頑張るなぁ。どう思う、鳥居?て、あれ?」
 巻が話を振ろうとした親友は、リクオの後に続いて玄関に入っていた黒田坊に声を掛けていた。
「お、お帰りなさいっ!ご無事ですかっ!?」
「うむ。拙僧は無傷だ。お主は?」
「無事ですっ!ここの家の皆が、私たちを守ってくれましたから」
「そうか」
 黒田坊が笑みを浮かべた。鳥居はうっすらと頬を染める。2人は、玄関の上がり口で互いに見つめ合ったまま動かなくなった。
 だが、総大将が初代も二代目もアレな感じだった上に、三代目もお気に入りの側近頭を衆目の前で姫抱っこかましてしまう男に成長している為にそういうのには慣れている奴良家の妖怪たちは、この2人のことは気にせずにすたすた中に入っていく。
 何人いるのか数えたくなるぐらいたくさんの妖怪が中に入って行き、いつの間にか鳥居も黒田坊に肩を抱かれて中に入り、長い妖怪の列が全部終わって、最後に、カナが玄関に入ってきた。
 今後どうなるかまだ予断は許さないとはいえ、とにもかくにも、見事敵を倒し、リクオの正体がバレたことで清十字団とは絆が深まったという、輝かしい朝であるのに、俯いたカナの顔は、ネオンに照らされた都会の夜よりも暗い。
 驚いた巻は、カナに駆け寄った。
「カ、カナ、大丈夫?どうかしたの?」
「なんでもないよ・・・・。うん、何にも、無い・・・・・・・」
「・・・・・・」
 大雑把ながらも、地下鉄少女の一件でわかるように状況把握能力が高い巻は、なんとなく事態を察して、カナの背中をぽんと叩いた。
 そして、肩を抱きながら親指を立てて、にっと笑う。
「とりあえず、朝ご飯食べようよ!皆一緒に!何もかんも、全部、それからだって!」






 禍々しい夜が終り、訪れたのは、新しい朝。
 全てが変わってしまったこの朝の、その先に紡がれる物語は、まだ誰も知らない。 



【おしまい】


 わたし、清継君のこと好き過ぎるだろ・・・・

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