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kakato

 鋼で、ロイアイ。
 私の恋人は気配に敏い。
 それは軍人という職業上では誉められるべき特徴であるが、恋人としては些か困る場合がある。
 例えば、今みたいに君の足型を取ろうという場合。






 ある日、なんの気なしに(確か君が風呂にでも入っている時)君の部屋の靴箱を見て愕然とした。なんというか、こう、機能的な靴ばかりだったんだ。
 軍靴、替用の軍靴、雨用の長靴、スニーカー、控えめでシンプルでヒールの低い黒のパンプス、オーソドックスなベージュのブーツ・・・・・・そーいう感じの靴ばかり。
 若い女性の一人暮らしでこのラインナップはどうだろう?
 私の恋人は華美な服装を好まず仕事中はそっけなく髪を纏めているが、かなりの美人だ。なのに、仕事が忙しい上にワーカーホリック的なところがあるから、着る機会もそうありませんしと言って、私服自体も華美な物は少ない。
 だが、私とて無駄に数多の女性と仲良くしてきたわけではない。私は知っている。女性が服を選ぶ時に、靴の問題が大きいということを。
 自分の手持ちの靴に合わない服を買うならば合う靴を買わなければならないし、自分の足に合う靴を見つけるのは大変だが足に合わない靴は長く歩くのが苦痛になる。
 靴選びは、お洒落という分野において、最初に立ち塞がる大きな問題なのだ。
 だからこそ、私は君のために一肌脱ぐことを決意した。君の足型を作成して、その型からオーダーメイドの靴を作ってもらうのだ!
 ちょうどよいことに私は錬金術師で、細かい細工物の類の錬成は正直不得意だが、それでも、ゴムを変形させて足型を取るくらいのことなら簡単に出来る。
 問題は、それをいかにして君に気取られないようにするか、ということ。





 私の恋人は奥床しいのか億劫なのか、私に物をねだったことが無い。それでも私はイロイロとプレゼントをしてみたのだが、役に立つ物は使ってくれているが役に立たないものは部屋の隅に積み上げられている(ちょっと切ない)。
今も、ほら、部屋の隅で所在無さげなイーストシティの女性に人気のブランドの箱と目が合ってしまった。あの箱の中身は華奢なデザインの腕時計。使ってくれるかな~と思ったのに、説明書で水と衝撃に弱いことを確認した君は、以前から愛用している無骨極まりない軍仕様の腕時計を使い続けている。
結局、この極端に物が少ない生活感の薄い部屋を見てもわかるように、君はあまり物を必要としない。実用性最優先でいらない物はちゃんと捨てられる、NOと言える女なんだ(特に私に対してNOと言い過ぎだ)。
 そんな君だから、私が華やかな靴をプレゼントするために足型を取らせるようになどと言ったら、即座に、いらないと断るだろう(目に見えるようだよ)。以前にも、可愛らしい靴をプレゼントしようとして断られたことがあった気がするしな。
 というわけで、型を取るならば気づかれないようにこっそりやらなければならない。
 そのために、ちょっとした小細工を弄した。
 まず、ここ数日、仕事中に逃亡して(オーダーメイドで靴を作ってくれる靴屋を探しに行ったのだ)君を残業に付き合わせる。その上で、夜は君の部屋で過ごし、睡眠時間を削る。そうして君が程よく寝不足になったところで(ちなみに私は昼寝をしているので寝不足ではない)、自作の睡眠薬(錬金術で合成してみた。こーいうのは得意なんだ)を飲み物に混ぜて飲ませ、今夜の火力をちょっとすごめに。
 こうして、今、熟睡するリザ・ホークアイのできあがり、だ。
 君は、清らかな月光を紡いだ糸のような髪を散らして、深く寝入っている。白いシーツはかろうじて太腿から上を隠しているけれど、素足は無防備なままだ。君の脚は引き締まっていてラインが美しい。
 よく考えてみるとアレレ?な部分がここに至るまでの過程にあったような気がするのは、気のせいだ(きっぱり)。私は軍人で、軍人とは過程ではなく結果によって値を問われる職だ。よって、今回も結果さえ良ければいーやと思ってる。
 だって、そーいうものだろ?





 愛用の錬成陣入り手袋を嵌めて、職場の倉庫から拝借してきたゴムの塊(用事が終わったら元通りにして返すさ)を、すっかり力が抜けた君の足に当てて、脳内で構築式を計算。間違っても、君の肌に火傷など残せない。
 君は軍人なんていう仕事をしているからその滑らかな肌に不似合いの傷痕だってもちろんあるけれど、それらの傷の多くが私を守るためについたと知っているけれど、どれほど傷がつこうと君は美しいと知っているけれど、わざわざこんな用事で傷をつけることはないからね。私だとて、君を大切にしたいとは思っているのさ。
 本当だよ?
しばしば伝わっていないだけさ。
 あ、なんかちょっと哀しくなった・・・・・・・・





・・・・えーと、こんなふうに落ち込んでる間に君が目を醒ましたら元も子もないので、そろそろ作業を再開することにする。再度、脳内で構築式を展開。そして、指を弾く。
 PATI!
 ゴムは一瞬にして君の足を包み込む形に変形し固まった。成功。君の足からそっと外す。
 そして、持ってきたもう一つのゴムの塊をくっつけて、もう一度指を弾く。
 PATI!
 君の足型のゴムに、新しいゴムが流れ込んで固まる。型のゴムをナイフで裂いて外す。
 これで君と同じサイズのゴムの足が出来上がりだ。このゴムの足を靴屋に持っていって、靴を作ってもらおう。
 変形しないように注意しながらゴムの足を鞄に仕舞いこみつつ、私はこんなに近くで指を鳴らしても目を醒まさず眠り続ける君を見つめた。
 こんなにぐっすり眠っているけれど、きっと、ここに賊が襲ってきたら飛び起きて正確に敵を撃つことが出来るんだろうな(君は敏感に殺気を察するからね)。
 申し分ない美女で、私服ならばその動きの機敏さ以外で軍人らしさを感じる個所の無い女性だが、君は決して無力ではない。共に戦場を駆け、背中を預けて戦うことのできる、たった一人の女。いかなる悪路であろうと、艱難辛苦の道のりであろうと、決して遅れを取らずに私についてきてくれる、かけがえの無い女。
 でも、君ってダンスは苦手なんだよね(運動神経発達してるのにな)。
「君もダンス用の靴を一足持たなくちゃいけない。大総統夫人に踊りを断わられたら、大総統が困ってしまうだろ?」
 枕につっぷすようにして熟睡する(薬の量多かった・・・?)君の、シーツからはみ出た脚を恭しく持ち上げて、鍛えられ引き締まった足の、その踵にキスを落とした。
 愛情と、敬意を篭めて。





 つま先に体重のかかるヒールを履かず、軍靴の踵で大地を踏みしめる君の立ち姿は、泥に塗れても凛然としている。
 その君の在りようを有難く得難く思いその誇り高さに敬意を払い、そして、ヒールの靴を履いて欲しいとも願ってしまうのが、俺だ。
 君を愛してると言いつつ危険と隣り合わせにして立たせることは、矛盾だと思わない。もっと鮮やかで見苦しく切実な必然である、俺の事情。
 愛してるとは言わずに抱かれ決して拒みはしない君の在り様を、妥協だとは思わない。もっと純粋で本能的で残酷な必然性に満ちた、君の心情。
「事情も心情もどうでもいい。矛盾だとか妥協だとかは勝手に言ってろ。ただ、何がどうなろうと誰が何言おうと、君はどこまでも俺についてきて、いずれ俺と踊るんだ。だって、俺のパートナーは君だと決まっているんだから。そうだろ、リザ?」
 ちょっとゴムくさい部屋(ヤバい。空気の入れ替えをしなくては)で愛しさを篭めて呟くと、枕に埋まった君の頭がイヤイヤをするみたいに動いた。
・・・・・・・・・・・私の恋人は、少しつれない。
 そして、物をもらってもあまり喜ばない(最新式のスコープをあげた時はものすごく喜んでくれたけど)。
 だから、この型で作る靴を渡す時には一計を案じるとしよう。君が決して断ることのできない状況を作り上げてみせるさ。
 待っていたまえ、最愛のリザ。
 




 ゆるく膝を折った体勢で眠る君の踵にもう一度キスをしようとして足首を持ち上げると、急に膝が伸びて顎を突き上げるような絶妙な蹴りが放たれた。
「ぐぉっ!」
 そうしてこの夜、ジンジン疼く顎を抑えながら、俺はこの美しくも危険で、鑑賞に堪えながらも極めて実用的な君の足の真価をかみ締めるのだった。
 あー、顎痛ぇ。

【Fin】
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