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ぬらりくおの嫁 参

 ぬら孫 リクつらss。

 「高砂や」の続編です。毛姐さんのターンは続く・・・・そろそろ止めようよ、首無。


 そろそろ。そろり。
 足音と気配を忍ばせて歩くのは、猫系妖怪の得意技。
 店で一番上等な奥座敷の前の廊下をうろついているのは、先日、この部屋から出ていく組長二人を目撃してしまった、不運な猫娘だった。
 あの後、困った酔っ払いそのものになり果てた親分たちは、こともあろうに関東総元締奴良組本家の組長の部屋にアポなしの上に無断で上がり込み、仕置きとして、庭で氷漬けの刑を喰らったらしいと聞いてから、彼女はずっと、「アタシがもっと早く気づいて止めていれば」と後悔していたのだ。
 だから、彼女は、またしてもうちの良太猫の親分が鴆の親分と呑み会をすると知って、今度こそは危ういことになる前に止めてみせる、と張り切って聞き耳を立てていた。
 そして・・・・・洩れ聞こえてきた毛倡妓姐さんのあんまりにも昼メロな語りに、すっかり心乱されてしまって、忍び足ながらもそわそわと歩きまわっているのだった。好奇心は猫を殺すの言葉通りに、猫娘という妖怪は好奇心の塊なのである。

 廊下にそんな曲者がいるとは露知らず、部屋での語りは続いていく。





「・・・ダメだろ、牛頭丸」
「そうねぇ。全然ダメね。でもまぁ、牛頭丸は単なる前振りよ」
「前振り?」
「ええ、鴆様。本家上空をパトロールしてた黒羽丸が下りてくるんです」
「・・・姐さん、なんでその人選なんで?」
「三羽鴉とつららは幼馴染なのよ。だから、リクオ様が人間の幼馴染を嫁にもらうなら、こっちも幼馴染ネタで行くわ」



:::::::::


 伸ばした手を氷漬けにされた牛頭丸を我に返らせたのは、上から近づいてきた羽ばたきだ。
 後ろを見やると、奴良屋敷の上空を警護していた黒羽丸が舞い降りてきた。牛頭丸の声を聞いたか、氷の壁を見つけたかで、様子を見に下りてきたのだろう。
「つらら?」
「おい、止めとけ。凍らされるぞ」
 牛頭丸が制止したが、黒羽丸は構わずに、様子のおかしな雪女に手を伸ばした。案の定、手甲に包まれたその手が凍る。牛頭丸は、ほらみろ、とため息を吐いたが、黒羽丸は怯みはしなかった。
「つらら」
 呼びかけても雪女は反応しない。壊れた人形のような有様で、氷の涙を零すだけ。ぽろり。ころころ。
 転がって来た白玉が、黒羽丸の爪先に当たった。
「つらら、俺だ。黒羽丸だ。部屋まで運んでやるから、掴まれ」
 あきらかに異様な雪女の様子に露とも動じず、黒羽丸は再び雪女に歩み寄った。
 当然、雪女の畏れが空気中の水分を氷結して氷の壁を形成するが、腕の一振りで叩き割る。それでも、冷気は止まずに黒羽丸の鎧や髪を凍らせ、翼にすら霜を撒くが、黒羽丸は些かも躊躇わずに、つららをそっと抱き上げた。 途端、強い冷気が走って、黒羽丸の足を氷漬けにする。
 けれど、それでも、黒羽丸は退かなかった。
「トサカ丸とささ美は、今は少し離れた場所を巡回中だが、呼べばすぐに来てくれるだろう。つらら、トサカ丸に歌を歌ってもらうか?ささ美に添い寝してもらうか?」
 黒羽丸は、己が身を蝕む凍気など感じていないかのように、常通りの声を出す。
 彼が語ったのは、昔、雪女がまだ幼い雪ん子だった頃に、泣き止まぬ雪ん子をなんとか宥めようとした三羽鴉の行い。
 幼い頃、三羽鴉にとって、歳近い雪ん子は妹のようなものだった。小妖怪も交えて、よく、一緒に遊んだものだ。雪ん子は泣き虫で、いつもは甘い菓子などですぐ宥めることが出来るのに、時々、何をしても何を言ってもなかなか泣き止まないことがあり、そうなると、小妖怪たちは、我らの手には負えぬと三羽鴉を呼びに行くことにしていた。
 とはいっても、三羽鴉もまだまだ子供であったし、三羽揃って真面目が取り柄で、気のきいたことが言えるタイプでもない。だから、彼らに出来るのは、三羽の中で一番力持ちの黒羽丸が、庭や廊下などで蹲って泣いているつららを抱き上げて部屋に連れ帰り、一番歌が上手いトサカ丸が子守唄を歌って、ささ美が隣に添い寝して寝かしつける、という戦法だった。 幼い雪ん子は、どれほど激しく泣いていても、三羽がこうして宥めてくれると、必ず健やかな寝顔を見せ、次に起きた時には明るく笑っていたものだ。
 冷え切った雪女の胸の内を、その思い出が僅かに温めたのだろうか。それまで何の反応も示さなかった雪女が、震える指で、黒羽丸の着物を掴んだ
「くろ、う、まる・・・・・?」
 涙で潤んだ黄金螺旋の瞳は焦点を結んではいないが、それでも、僅かに顔を動かして黒羽丸の方を見た。黒羽丸の足の氷が砕ける。
「トサカ丸とささ美も呼ぶか、つらら?」
 涙を止めないまま、雪女はふるふると小さく首を振る。
「わかった。ならば、あいつらは呼ばない。だが、部屋まで運ぶからな」
 俯いたままの雪女は、こくんと小さく頷く。小さな雪ん子だった昔と違い今はもう立派な雪女だというのに、幼女のような稚い仕草に心痛を取り繕う術もないことが窺えるのが憐れで、黒羽丸は、これ以上誰にも見つからぬように静かに、けれど迅速に、そして優しく飛んだ。
 牛頭丸は、何も言えず、遠ざかる二人の姿を見送るばかり。



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【もちろんまだまだ続く】
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