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大人と子供【大人編】

 ぬら孫ss。リクつらin奴良家。
 すっかり大人になってしまわれた方の話。
 鵺との決戦が終わってしばらく経っています。

ぬ「あら、巨峰。今年ももうそんな季節なのね」
「契約農家から産地直送だから、やっぱり美味しそうよねぇ」
 勝手口に届いた段ボールを開けると艶やかな紫に輝く巨峰が姿を現したので、台所を預かる女衆は色めき立った。
 大所帯の奴良家は、いくつかの農家と契約して旬の野菜や果物を直送してもらっている。送られてきた食材を元にして献立を考え、足りない物は近所の店から配達を頼む、というのが基本のスタイルだ(それでも足りない細々した物を買い出しに行ったりもするが)。
 作物の出来は天候によって左右されるから、何がいつ届くのかはその時にならないとわからない。今日のお届け物は、丸々と大きく実った巨峰だった。
 女衆が、洗って冷やしておいて明日のおやつにでも出そうかと話し合っていると、入口から声がした。
「おい、つらら・・・・いねぇか」
 入口からひょっこりと顔を出したのは、先日鵺を倒して名実共に夜の世界の天下を取った奴良組三代目総大将
奴良リクオだ。お目当ての側近頭の姿がないのに気づくと踵を返そうとした息子を、母親が呼びとめる。
「リクオ、つららちゃんならお部屋だと思うわよ」
「そうか。ん、なんか届いたのか?」
 普段台所仕事にはノータッチのリクオは、勝手口にででんと置かれた段ボールが珍しかったらしく、近づいてきて中を覗きこんだ。
「ええ。巨峰よ。今届いたの。明日のおやつにするわ」
「いや、今くれよ」
「冷えてないわよ?」
「つららに冷やしてもらうから、大丈夫だ」
「そうね。それじゃ、はい」
 若菜は、リクオとつららが夕飯前に摘む分として、一房を洗って皿に載せて息子に渡した。





「つらら、入るぞ」
「えっ、あ、リクオ様?何かご用ですか?」
 日本家屋にノックの習慣は無い。それでも昼姿ならば一応伺いを立てるのだが、あいにく今はもう夜姿へと変じてしまっていたので、リクオは返事も待たずに襖を開いた。
 つららは、他の男妖怪にそんなことをされたら抗議するはずだが、幼い頃のリクオが、夏になると、「暑いよ~、つらら~っ」と帰宅するなり涼を求めてつららの部屋に駆け込むことも多かった為、妖怪として成人した今となっても、なんとも思わずに受け入れてしまうのだった。
「巨峰、今届いたんだと。冷やしてくれよ」
 巨峰を一房載せた皿を持って、リクオはつららの隣に腰を下ろした。
 雪女であるつららは、冷やすのは大の得意。幼い頃から、リクオが食べる果物はつららが冷やして饗すると決まっていた。だから、台所に顔でも出して巨峰を目にして食べたくなったリクオが、冷蔵庫で冷やされるのを待ち切れずに冷却を依頼する為にこの部屋を訪れたのだろう、とつららは考えて、皿を受け取ろうと手を伸ばした。
「わかりました・・・・・リクオ様?」
 しかし、リクオは皿を渡さない。そして、丸々と太った実を一つ摘む。
「つらら、口開けろ」
「え?」
「いーから。ほら、あーん☆」
「?あーん・・・?」
 リクオが幼い頃はつららが食べさせるばかりだったのだが、中学に上がってからは、「お返しだよ」と言って、リクオがつららに果物などを食べさせようとするようになった。
 はっきり言って、つららが差しだす時のように冷えているわけでも、綺麗に皮が剥けているわけでもないのだが、自分を気遣ってくれるリクオの優しさが、下僕として誇らしく、養育に携わってきた身としては微笑ましく感じられて、つららはいつも、素直に食べさせてもらっていた。
 だから、この時も、リクオ様はお優しいから冷却を依頼する対価として巨峰を分けてくださるのだろう、と思ったつららは、無防備に口を開けた。
 リクオの指が皮から実を押し出す。ちゅるん、と口の中に飛び込んでくる実。さすが、産地直送だけあって、巨峰は、瑞々しく薫り高く甘かった。
「おいしいです」
「あっ!おい、つらら、食べるなよ」
 だが、これは、やってはいけないことだったらしい。
「えっ、そんな、リクオ様が私に食べさせてくださったのに」
 つららは混乱する。手ずから実を口の中に入れておいて、食べてはならないなどと言われても、訳がわからない。
「いや、まぁ、お前の分もあるから食ってもいいが、先にオレに食わせてくれ」
 やはり、リクオはつららに巨峰を分けてやるつもりはあるらしい。ならば、とつららは手を伸ばす。
「でしたら、お皿を貸してください。冷やしますから」
「ダメだ。オレは、凍ってるやつが食いたいんだよ」
「あの、おっしゃっている意味が、よく・・・・・」
 リクオが皿を渡してくれないので、つららは首を捻る。
 凍らせた巨峰は今日のような暑い日には特に美味なのでリクオが食べたがるのはわかるのだが、凍らせるのならば、先に皮を剥いておく方がいい。凍る前の葡萄の皮の始末は指で口に実だけを押し出せばいいが、凍った実はそうはいかないからだ。常温で少し放置しておくか流水に晒すなどして皮を剥くか、皮ごと口の中に入れて後で皮を吐き出すかしなければならない。
 だから、これまでつららがリクオの為に葡萄の実を凍らせた時には、一粒一粒皮を剥いてから凍らせてきた。ちまちま皮を剥くのはもちろん手間ではあったが、リクオの為ならばこの程度どうということはない。なので、皿を渡してくれとつららは手を伸ばしたのだが、リクオは首を振るのだった。
「お前の吐息で凍らせることが出来るってことは、お前は口の中に入った物を凍らせることもできんだろ?」
「それは、できます」
「よし。じゃあ、それをやれ。凍らせろ。でも、今度はオレの分だから、食うなよ」
「ふぇっ?」
「はい、あーん☆」
 つららは元来素直な娘だし、リクオの言うことは基本的に受け入れる。だから、この時も、半ば反射で口を開いて、口の中にちゅるんと押し出された巨峰の実を、凍らせた。
「凍ったか、つらら?」
 口の中に物を入れたまましゃべるなんてはしたないことは出来ないので、つららはこくこくと頷く。その様子を見て、リクオは、満足そうに笑った。
「じゃ、いただきます」






 意味不明なリクオの「いただきます」についてつららが考える間もなく、いつの間にか皿を机の上に置いてつららの肩を掴んだリクオが、顔を近づけてきた。
 ぬらりひょんという妖怪は、夢幻を司るだけあって、夢のように美しい容貌をしている。単純に目鼻の配置が整っているというだけではなく、目にした者を夢に引きずり込むような、暴力的なまでの魅力を湛えているのだ。百鬼の心を捕らえ、離さぬほどに。
 その顔をこんなに近付けられて、魅了されない女はいない。ましてや、つららは、我が手で育てたと言っても過言ではないのに、と己の気持ち否定しようとしても誤魔化しきれない程に、成長したリクオに心惹かれてしまっている。
 故に、顔を背けることすらできずに、唇を重ねてしまった。
「!」
 ごくごく幼い頃、『ちゅー』なる物の存在を知ったリクオは、お気に入りの守役に何度も『ちゅー』を仕掛けたもので、つららはそれを微笑ましく受け止めていたが、今のコレは違う。
 コレは、微笑ましさなどどこにも見出せない、性的なニュアンスがたっぷり含まれた口づけである。
「んう・・・」
 混乱が極みに達したつららが、抗議する為に口を開こうとしたその隙を、まだ中学生と言えども血筋的に色事に才ある男が見逃すはずがない。すかさず、熱い舌を差しいれた。
 ぬるり、と忍び込んでくるリクオの舌。
「!?」
 雪女の口吸いは、時に、相手の男を死に至らしめる。氷の吐息で相手の内臓を凍らせてしまうからだ。 
 それは、雪女にとってはある意味非常に甘美な行為であるが、当然取り返しがつかないので、成人した雪女は、先達から、己が望まぬ時に死の口吸いを行わないように、と厳重な注意を受ける。突然の口吸いに混乱極まっているつららの脳裏に、その時の注意の言葉が浮かんだ。
 リクオを守るのが、つららの使命であり、望みだ。殺すわけにはいかない。
 抵抗するよりも先に、リクオの安全を気遣って、瞬時に、口内の温度を瞬間冷凍から冷蔵庫程度に引き上げたつららは、だからこそ無防備だった。
 リクオは、ひんやりした口内を堪能する。真珠みたいな歯も、ほどよい冷たさの天鵞絨みたいに滑らかな舌も、丹念に舐めた。そして、最後に口蓋をくすぐってから、凍った巨峰を己の口の中に引き取る。
「はふ・・・」
 驚きと衝撃と官能と急激な温度変化と息苦しさとで、つららはすっかり息が上がり、涙目になっていた。
 そんなつららを満足げに眺めながら、しゃくりと凍った巨峰を噛みしめたリクオは囁く。
「ごちそうさま」





「なっ!リクオ様っ!何をなさるのですかっ!?」
 乱れていた呼吸が整ってから、やっと、つららの頭が事態を理解した。そして、あまりのとんでもなさに慌てて暴れる。
「大人の食べ方、だな」
 しかし、つららが慌てるのを予想していたリクオは、ぽかぽかと胸を叩かれたぐらいで手を離すわけがない。反対に、ぐいっと抱き寄せて己の胸につららの身体を密着させることで、抵抗を封じてしまう。
「!?」
 これまで、内心でお慕い申し上げてはいたものの、叶わぬ恋なのだと諦めていたつららは、頭がショートしそうだ。
 何がどうして、こうなった!? 
「あのな、つらら、お前はいつも、オレの為に果物なんかを剥いて食わせてくれたよな。オレは、中1の頃に、世話してもらってばかりじゃ子供のままだ、大人というのは相手の世話も焼けるものだ、と思って、それから、時々、お前に果物なんかを食わせてみるようになった」
 目をぐるぐる回しているつららの髪を宥めるように撫でながら、リクオは耳元で優しく囁く。
「ええ、はい。そうですけど・・・・?」
「だが、それもまた子供の考えだ。大人の食べ方ってなぁ、そうじゃあねぇよな」
 愛しいリクオに低い美声で耳元に囁かれて、つららは腰が砕けてしまう。力が入らなくなって、もう、抵抗すらできなくなった。
 つららに出来るのは、ただただ、熱に浮かされたような気分で、リクオの言葉を受け止めることだけ。
「なぁ、雪女の姐さん、昼間は渾身のプロポーズを見事にスルーしてくれて、ありがとうよ。調子こいてたオレは、あっさり子供扱いされて、地の底まで沈んだぜ。だがなぁ、奴良組の総大将が、己の人生の一大事をちょっとやそっとで諦めちゃあならんよな。というわけで、オレがもう大人だってお前が認めるまで、止めねぇぞ。つらら姐さん、大人の食べ方で、も一つ食わせてくれよ。ほれ、あーん☆」
 巨峰の実を摘んでそう言うリクオの紅の瞳は、炯々と光っている。
 そう、リクオは最初から拗ねていたし、キレていた。
 遠野での別離と伏目稲荷での再会と土蜘蛛によって浚われた件で、リクオは、己がつららに惚れていることに気がついた。
 しかし、鵺の一件が終わるまでは、妖怪との間に子が為せないという狐の呪いが解けたかどうかがわからない為に、父の悲恋の二の舞になることを恐れて、己の気持ちを口にすることはできなかったのだ。
 先日、ようやっと鵺の件に決着がつき、これで憂いなく思いを告げられると、近頃はずっとプロポーズの言葉に頭を悩ませていた。そして、本日の昼間、タイミングも状況もムードも考慮して繰り出した渾身のプロポーズは、・・・・・子供扱いされた上にスルーされて、男のプライドは粉々になったのだった。
 数時間ほど打ちひしがれて死体のように床に転がっていたのだが、夜姿に転じた瞬間に天啓が下りる。
 たぶんきっとおそらくつららはオレに惚れている(はず)なんだから、了承を得るより先に既成事実を積み上げちまってもいいんじゃね?
 故に、リクオは、さっそく、こうして攻勢に出ているわけだ。
「リっ、リっ、リクオ様ぁっ、そ、そんなっ、私は・・・ふにゅっ」
 ちゅるん。
 唇に巨峰を押し付けて文句を封じ、実を押し出したリクオは、清々しいほどの笑顔で、こう告げる。
「嫌だったら、氷の吐息で殺しちまいな。言っとくが、他には、逃げようはねぇぞ」
「!!?」
 そんなふうに言われたら、リクオ大事のつららが抵抗できるはずもなくて・・・・・・







「つららー、今日のおやつは巨峰よ。こっちいらっしゃいよ」
「・・・・・私、今、忙しいから」
「しゃあねぇな。オレが、後で、お前の分を持ってってやるよ。部屋で二人で食おうぜ」
「いいいいいりませんんっ!」
「遠慮すんな。昨夜みてぇに、美味い食い方しようぜ」
「あら、何か特別な食べ方があるんですか?」
「おう。大人にしかできねぇ食い方があってな」
「リクオ様のばかぁーっ!」




【おしまい】

 なんでこんな話かと、こないだライチが1パック70円、レッドグローブが1房+αで200円と安かったので、買ってきて食べたからです。レッドグローブは、半分ぐらい皮剥いて冷凍した(食の為には手間を惜しまない水鏡)。
 あー、巨峰食べたい。
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