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雛逃げ (後)

ぬらりひょんの孫、リクつらss。後編。
 
 33334hitのしのぶ様リクエストの「つららに『あなた』と言わせておいて自ら悶絶するリクオ」で、言わせるだけは言わせてみましたが・・・・・すいません。つい荒ぶってリクオ様にセクハラさせてしまいました。いや、リクオ様若いから、追いかけっこしてるうちに頭に血が昇っちゃうかなーと。
 えーと、R指定は・・・15かもしれませんが、18はセーフ(マイ基準)。でも、リクオ様が、畏れが足りない感じなのは、セーフじゃない気もします・・・・

 こんなのでアレなのですが、前編と合わせて、しのぶ様に献上させていただきます。
 リクエスト、ありがとうござました!

 ・・・・・・わたし、たぶん、このリクエストの解釈間違えてる。でも、申し訳ないが、修正はききませんので、これで我慢していただきたい。

 以下からどうぞ~。あ、セクハラ注意報発令中です!
「・・・・・」
 リクオの部屋に運び込んで、縛り上げ正座させた二人から事情を聞きだした首無は、ぼんやりと天井を仰いだ。大雑把な者が多い本家の男衆の中で珍しく細かいことに気がつく首無は、かつて、つららの教育係のようなことをしていたし、現在は、鴉天狗から仕事を引き継ぎながらリクオの家令のような立場にいる。
 だからこそ、己の教育方針に疑問を感じてしまって、なんだか頭が痛くなってきた。
「・・・・『組の一大事』っていうのは」
「オレの嫁取りは組の一大事だろうが。おい首無、正直に話したんだから、紐を解けよ」
 開き直った夜のリクオは、大変ふてぶてしい。己の所業に一切の疑問も罪悪感も感じていないのだろう。
「何おっしゃってるんですか、リクオ様!よ、よ、よ、嫁って・・・・!」
 反対に、つららは、動揺しまくっていた。毛倡妓の髪でぐるぐる巻きに縛られて尚、この場から逃げようともぞもぞ動く。
「オレにこれだけ追いかけられといて、お前こそ何言ってんだ?わかんねぇふりもたいがいにしとけ」
「ふりって、そんな!私はそんなのじゃなくて・・・・」
「じゃあ、焦らしてんのか?そんなテクは、後何百年かして、万が一倦怠期でも訪れた時に披露してくれ。今は必要ねぇよ」
 奴良リクオは、最近の若者には珍しい程、決断力のある男である。
 だから、今宵こそこの女を落とすと決めた彼の口説きは、留まるところを知らない。つららは、混乱のあまりに涙目になっている。
 そんな二人を見やった毛倡妓は、髪をかきあげて、深いため息を吐いた。それから、全てをふっ切った様子でリクオに声をかける。 
「リクオ様ぁ、お客様用にとっといた純米大吟醸の黄泉桜と番凩、今夜の追っかけっこに巻き込まれた面々で飲んじゃってもいいですかぁ?」
「おぅ。好きにしろ」
 三代目総大将は気前よく頷いた。
「じゃ、もらいますね。行くわよ、首無」
 首無の頭をひっつかんだ毛倡妓は、つららを縛り上げていた髪を解く。まだ往生際悪くもぞもぞと暴れていたつららは、勢い余って畳の上に転がった。
「きゃっ」
「おい、毛倡妓、それは・・・・・」
 毛倡妓の胸に頭を抱え込まれても、首無はまだ納得がいかない顔で、紐でリクオを縛っているままだ。
 ここで、毛倡妓がキレた。
「あーもーうるさいっ!こんなバカバカしいことに巻き込まれて、飲まずにいられないでしょっ!それから、つらら!あんた、いい加減腹括りなさい!好いてんなら受け入れて、嫌だったら完膚なきまでに振っておしまい!今度逃げて皆に迷惑かけたら、明日からのあんたのご飯、熱いもんばっかりにするからね!」
 毛倡妓の剣幕に押されて、首無は紐を解いた。そしてそのまま、抱えられた頭を追って身体も部屋を出て行く。
 こうして、部屋には、リクオとつららが残った。 





 
 さて、とオレは一計を案じる。
 つららは、毛倡妓の一括が効いてしょげてんのか、拗ねてんのか、畳に突っ伏したまま顔を上げねぇ。オレの部屋で惚れた女が転がってる、てのは一見すると据膳みてぇだが、これはそうじゃねぇよな?
 つららは、何でなんだかさっぱりわからねぇが、さっきの見事なぐらいの逃げっぷりを見るに、妙に強情だ。普通に問い詰めたところで、あの夜のことをどう思ってんのか、口を割る気がしねぇ。
 だから、つまり、普通じゃない問い詰め方をしなくちゃならんということだ。
 さぁ、どうしてやろうかね?、と思って突っ伏すつららを眺めたところで、妙案を思いつく。よし、これなら、つららは痛くも辛くもなくて、オレが楽しくて、且つ確実につららを追い詰められる。
 オレは、そろりとつららに近づき、右足の横に胡坐をかいて、右の足首(細いな)をがしっと掴んで持ち上げた。
「きゃあっ!?」
 畳とにらめっこしてたつららが、主の暴挙に驚いて首を捻ってこっちを向く。よしよし、こっち見たな。
「つらら、毛倡妓の言う通りだ。オレはもう充分に待った。今夜こそ決着をつけようぜ」
 といっても、振られてやるつもりは毛頭なくて、たった一つの答え以外は阻止するつもりなのだが。
「な、ななな何のお話でございますのでございましょうか!?」
 慌てるつららに構わず、オレは、胡坐をかいた膝の上にうつ伏せのつららの膝を乗せて、右足の足袋を脱がせる。
「リクオ様っ!何をして・・・!?」
「うぉっ、危ねぇ!つらら、お前、主の顔を足蹴にするつもりかよ?」
「ふぇっ!?す、すすすいません!」
 急にしゃちほこみたいな体制にさせられた上に足袋まで脱がされて、つららが暴れるのは当然なんだが、忠誠心に訴えかける言い方をすれば、すぐに大人しくなった。 
 さぁ、楽しい尋問タイムの始まりだ!
「つらら、お前、オレのことどう思ってんだ?なぁ、あの夜、オレを凍らせなかったのは、何でだ?今夜逃げたのは、どうしてだい?」
 問いを放ってから、つららの右足の親指をぱくりと口に含んだ。
「!!」
 つららがビクリと大きく震えるが、蹴られはしなかったので、オレは止まらない。口の中に含んだ足の指の爪の輪郭をなぞるように舌を這わせ、ちゅるっと吸ってやる。
「リ、リクオ様、止めてくださいっ!」
 つららは真っ赤で涙目だが、そんな顔されても可愛いだけなので、もちろんオレは止めてやらない。足の指の付け根を、これでもかとばかりにエロく舐める。つららがびくっと震えた。
「足なんか舐めちゃダメですっ!汚いですっ!」
 女としての羞恥心と、下僕としての困惑と、思いもよらない快楽で混乱したつららは、半泣きでふるふると首を振るが、オレは勘弁してやらねぇ。
「お前の身体で汚いとこなんかねぇよ。足の小指なんか、こんな小っちぇえのに綺麗な形してて、むしろ感動しそうだ」
 そう言って、足の小指を舐めた挙句にやわやわと甘噛みしてやったら、つららが身体の芯からブルブルっと揺れた。
「ど、どこでこんなこと覚えてこられたんですか!?わ、私はそんなふうにお育てした覚えはありませんよっ」
「確かに、オレも、そんなエロい教育は受けた覚えがねぇな。けどまぁ、思春期のやりたい盛りの男の前で、惚れた女が日夜うろちょろしてたら、イロイロやってみたくなっても仕方ねぇってもんだ」
 そう言えば、前に、アイドルやってるつららのマネージャーになって、足を揉めと命じられる夢を見たことがあったな。あれは、我ながら、夢判断だの夢占だの持ち出すまでもなく動機が明らかな夢だった。あの後しばらく、つららの足を揉んでから起きればよかったのに、と悔んだものだ。
 つまり、オレは、あの頃すでに、この女をこんなふうに触りたかったんだろうな。
 それもまぁ無理はねぇよ。だってなぁ、雪女ってのは男を虜にして精気を奪う妖怪だけあって、どこもかしこも、ビックリするぐらい整ってやがんだ。肌は白くてきめ細かいし、足の指の爪まで形がいいし、足の裏にもマメの一つも無くて、踵だってすべすべだ。
 どこもかしこも綺麗な形してて人形みてぇだけど、人形じゃねぇから、うっとりするほど柔らかくて、可愛く反応してくれる。
 なんて思いながら、足の甲に何度も音立ててキスすると、このシチュエーションの倒錯具合に耐えきれなくなったつららが、畳をバンバン叩いて訴えてきた。
「セ、セクハラです!」
「セクハラ、ねぇ?じゃあ、オレは、お前の赦しが出ねぇ限り、足首までしか触らねぇよ。約束する。それなら、小っちぇえ頃にお前の足の裏をくすぐってたのと、同じだろ?」
 内心で、いやいや同じなわけねぇけどな、と思いながらもオレは、土踏まずから踵まで舐め上げて、踵にかぷりと噛みつき、濡らした土踏まずを指の腹でゆっくりと撫でる。
「あっ!いやぁっ!だめぇっ!」
 くすぐったさと別種の悦楽とが同時に押し寄せてきたんだろう。髪を乱して首を振るつららの目は潤んで焦点を失い、艶やかな唇は半開きになっている。
 ・・・・・エロい。お前、今、すげぇエロい顔してるぞ、つらら。
 それに、あの夜はこっちも興奮してて夢中だったからよくわからなかったが、お前、かなり感度いいだろ(今後がすげぇ楽しみだ!)。
「言ってみろよ、つらら。『あなた』、て。言ったら、止めてやるよ」
 真っ白ですべすべの足の甲に頬ずりしながら、オレはノリノリ(特に下半身が)で無茶振りをかました。





 ぞくっ!ざわっ!ぞわぞわっ!
 お尻から背筋にかけて、何度も、電気信号みたいな刺激が這い上ってきて、熱い舌が這う足の裏は、もう溶けちゃいそう。身悶えしそうなほどくすぐったいけど、それだけじゃなくて、あの夜リクオ様を受け入れた場所がきゅんきゅん疼くから、頭の中なんか、もうぐちゃぐちゃです。
 晩ご飯までは正しい主従だったはずなのに、一体、今、何が起こっているんでしょう?どうしてこんなことになってしまったんでしょう?
 あの夜、ちゃんと拒めなかったのがいけなかったのでしょうか?
 あの夜・・・・奇跡の、夢のような、夜。
 リクオ様が私に手を伸ばして、私はその手を受け入れました。忠誠心故ではなく、抑えきれなかった恋慕故に。
 ですが、私も、奴良組三代目側近頭である前に、・・・・女です。どうしようもなく、女なんです。
 だから、お若いリクオ様が戦勝の興奮に流されていらっしゃるのだろうと思っていても、夢にまで見た愛しい手を拒むことなど出来ませんでした。
 この一夜の思い出を生涯の宝にして、以降は己が女であることは忘れて側近としてより一層励みますから、どうか、どうか一度だけでいいから抱いて欲しい、などと浅ましくも思ってしまったのです。
 でも、それはきっと、間違いだったのでしょう。
 リクオ様は、お優しく情が深い方です。
 ですから、幼い頃から傍にいた私に情をかけ、憐れんで受け入れようとしてくださっているのでしょう。もしかしたら、常に傍にいる相手への幼い愛着もあるのかもしれません。それに、リクオ様はまだお若いから、若さを持て余すこともおありで、私は、熱を吐き出すのにちょうどよい相手ではあるでしょうし。
 けれどね、それは間違いですよ、リクオ様。
 世には、確かに、そのようにしてなる恋人や夫婦はございますし、それらを間違っているなどとは申しませんが、リクオ様にとっては間違いです。
 リクオ様は、己が心の望む相手を娶ってきたぬらりひょんのお血筋。いずれきっと、初代や二代目のように、コレという女に出会い妻にと望むことでしょう。
 今ここで情けをいただいてしまえば、私は、きっと勘違いをします。貴方が私を恋うている、などとうぬぼれてしまいます。それは違う、己の立場をわきまえろ、とどれだけ理性が申し立てても、あんなに優しく、なのに、熱く激しく抱かれてしまえば、感情は、理性など無視したくなります。
 その挙句、私は、貴方の奥方様となる方に、害を為してしまうかもしれない。いいえ、それだけならばまだいいですが(そんな憎らしい女は刺し違えてでも殺してやりたいのが本音ですから)、貴方も傷つけてしまうかもしれない。それは、嫌です。
 貴方を守る、という私の誓い、命より魂より重く尊い誓いを破るなんて、絶対に嫌。
 だから、逃げてくださいよ、リクオ様。
 この国の闇を統べる貴方は、一介の雪女の邪恋などに煩わされてはなりません。ですから、ぬらりくらりと、なかったふり見えないふり気づかないふりをして、逃げ切ってくださいよ。そういうの、お上手でしょう?
 ねぇ、リクオ様、こんなお戯れはいけません。貴方にとっては一時のお遊びでも、私にとっては致死量の毒です。清い忠臣でありたいと願う私を、浅ましく卑しい女なる生き物に変えてしまう、毒なのです。
 取り返しがつかなくなる前に、その手を離して逃げてください。
 今なら、逃がしてあげますから。
 心だけは凍らせることができないけれど、遠ざかる背を追いかけようとする足を、追い縋ろうとする手を、未練がましく姿を追う目を凍らせて、貴方を追いかけるのを我慢します。
 だから、私から逃げてくださいよぅ、リクオ様!
「リクオ様ぁ、もういやぁっ」
 ちゃんと、理路整然とそう説明したかったのに、蕩けた身体が、浅ましく疼く女の器官がそれを赦してくれなくて、舌ったらずの子供みたいな声を出して、とうとう私は泣き出してしまった。






「リクオ様ぁ、もういやぁっ」
 鈴を鳴らすような声を乱して、くすんくすん泣きながらこんなふうに言われると、頭が沸騰しそうになるな。剣戟の最中のように、血が熱い。
 やべぇ・・・・・男を虜にする雪女の畏れって、こういうことか?悠長に焦らしてんのが、辛くなってきた。つららより先に、オレの限界がきそうだ。
 正直な話、お太鼓の帯が、ものすごく邪魔だ。あれがなかったら、足を舐める度に、尻から背中にかけて電流が走ってるみたいに蠢く様子を、もっとよく観察できんのに、とか思っている自分がいた。はっと気づくと、手が、帯の方に伸びそうになってやがる。
 着物って意外に身体の線を顕わにするから、この角度からだと小ぶりな尻がまろいのがよくわかる。触るとしっとり冷たくて、張りがあるのに、指が食い込むほど柔らかいんだよな。ああー、揉みしだきてぇ・・・
 いやいや、いかん。落ち着け、オレの手。
 昔話でも語られてるが、雪女は、『約束』を大事にする妖怪なんだ。これまで、(特に悪戯盛りの子供の頃)散々つららに嘘を吐いてきたが、これでもオレは、つららと交わした『約束』は破ったことがねぇ(我ながら微妙な線引きだが)。だから、今さっき、「約束する」なんて余計なこと言っちまったから、無断で足首より先に手を伸ばすわけにはいかねぇぞ。
 だが、オレもそろそろ限界だ。はっきり言って、勃ってる。それも、思いっきり。
 つらら、こんだけ追いかけてここまで迫ってんだ。そろそろ陥落してくれ。
「つらら、『リクオ様』じゃなくて、『あなた』だろ?いい加減、堕ちろよお前。なんでそんなに意地張ってんだ?」
 そう、なんでつららはこんなに頑ななんだ?
 つららがオレを男として見られない、というのはないだろう。足舐められてこんなエロい顔しといて、それはないはず。
 だったら、なんでだ?
 もしや、主従の別がどうとか気にしてるのか?
 いや、だが、オレはいずれつららを嫁にもらうつもりだし(そうじゃなかったら手出さねぇよ)、つららが奴良組三代目の妻になるのは何も問題がない。むしろ、皆(特に鴉天狗)は、妖怪の嫁さん、しかも、強くて可愛くて家事万能で(ドジは愛嬌だ)組を愛してる嫁さんなんだから、喜ぶだろ。どう考えても。
 側近連中だって、皆、年下のつららを妹みたいに可愛がってんだから、喜んでくれるはずだ。 
 どこにでもつまらねぇことを言い出す輩ってのはいるから、何やかやと言う奴も出るかもしれねぇが、そんなのはオレがどうにかすればいいこと。
 ・・・・・・・・やっぱりわかんねぇな。
「離してっ!やだぁっ!もう止めてぇっ!」
 考え事しながらも、散々舐めて濡れてる足の指の股に、恋人繋ぎでもするみてぇに指突っ込んで抜き差しして擽りながら、指を一本ずつ口に含んで吸っていたら、そろそろ限界を迎えたらしいつららが暴れ始めた。
 つららは、主の顔を足蹴にしてはならんと気遣って膝から下は動かさないが(お前ホント可愛い奴だな)、畳の上をずりずりと這いながら逃げようとする。だが、オレの手が、がっちりと足首捕まえてるし、そもそも、オレの胡坐の上につららの膝が乗ってるから、ちょっと動いたぐらいじゃ逃げられない。
「つらら、こら、無駄な抵抗すんな」
 じたばた。じたばた。
「おい、お前が意地張るってんなら、オレも好き勝手するぜ?」
 今でも十分好き勝手してるくせにこれ以上何を?、と言わんばかりの顔で、つららが上半身を捻って振りむいた。
「!」
 オレは、息を飲んだ。
 無理やり駆り立てられた情欲に潤んだ黄金螺旋の瞳、零れる霰の涙、白い肌を赤く染めた頬、切なげに吐息を洩らす唇、加えて、暴れたせいで襟の合わせが緩んだ上に、鉄壁の首筋ガードのはずのマフラーが緩んで、鎖骨がちらちら見えている。足も、膝のあたりまで見える。
 現代女性の風俗から考えると、露出度が高いとは言えないが、そんなのは問題じゃねぇよ。普段の露出度があんまり低いし、きっちり着た着物が崩れてるってシチュエーションがたまらねぇし、おまけに、チラリズム! 
 惚れた女のこんな姿見てテンションが上がらねぇわけがねぇだろ(上がらないなら、機能に問題がありそうだから医者に行け)!
 すっかり頭(と下半身)に血が昇ったオレは、足首以外に触らないように注意して、つららの膝を胡坐の上から落とし、仰向けになったつららの足元に移動した。
「?」
 しゃちほこのような苦しい姿勢から解放されたが足首を掴んだままなので、つららは不審げに眉を寄せる。
 オレは、つららの疑問に答えるように、唇に薄く笑みを刷いて、こう言い放った。
「お前があんまりエロいから、こんなんなっちまった。約束通り他のとこは触らねぇから、足でオレのこと気持ちよくしてくれよ。なぁ?」
 オレは、すっかり昂ぶってしまったところに、つららの足の裏を擦りつけた(あ、一応、着物越しだから。生じゃねえぞ)。




「っ!!」
 足の裏に触れた、布越しでもわかるその、熱。
 ソレがなにでどういう意味を持つのかは、察しが悪い私でもさすがにわかります。
 は。はわわっ!
 なにコレ!?じゃなくて、ナニなのかはわかりますけど、どうして!?リ、リクオ様は、もしかして、私でこういうふうになっているんですか!?
 そう思ったら、強いお酒を煽った時みたいに、胸がかっと熱くなった。身も世も無くお慕いしている殿方が、『男』として私を望んでいるのだと思うと、頭がおかしくなりそう。
 リクオ様、貴方はなんでこんなに悪戯っ子で、やってはいけないことばかりやりたがるのですか?『守子』だ『主』だと言って必死で誤魔化してきたのに、私の薄っぺらい嘘が、枷が、溶けてしまったじゃないですか。
 貴方は、本当に、いつまで経っても困った悪戯っ子です。
 だから、私は、・・・・・・今夜だけは、いけない雪女になってもいいですか?人間より永く生きる妖怪の生には、奇跡の夜が二夜ぐらいあってもいい気がしてきましたんです。なんだか唐突に。
 だって、この後、熱を持て余した貴方が化猫横丁にでも繰り出してしまったら、すごく嫌ですし。
 それに、私も。
 熱くて。
 熱くて。
 とても熱くて。
 身体の芯が熱くて苦しいんです。助けてください。ねぇ・・・・・・

「ねぇ、『あなた』、・・・・足だけでいいんですか?」 





「ねぇ、『あなた』、・・・・足だけでいいんですか?」
「っ!!」
 妄想してみると実際に経験してみるとでは大違いなことは、たくさんある(例:女の身体の柔らかさ)。
 これも、そうだった。
 すいません。オレは、雪山で遭難した男に生死の危険を忘れさせるほど虜にするという雪女の実力を、舐めていました。つららは雪女だけど、清楚健気かわいい系だと思い込んで油断してました。悪かった。なんか謝る。ホント、すまん。
 意外なぐらいに艶やかな声のせいで、鼓膜がくすぐったい。台詞も、予想外にエロかった。その上、つららの奴、この台詞と同時に、足動かしてオレのを擦ってくるし!
 何だコレっ!?雪女の畏れ、半端ねぇよ!
 一気に赤面しちまったオレは、つららの足首から手を離して、背中を向けて手で顔を覆った。
 あー、やられた。
 変だな。オレ、今夜は『男』だってとこ見せつけて、意識させてやろうと思ってたのに、さっきまではそれ出来てたと思うんだが、今はダメダメだ。つららの『女』を見せつけられて、魑魅魍魎の主だなんだと言ったって、童貞卒業したばっかの経験不足な小僧に過ぎないのが丸わかりじゃねぇか。カッコ悪ぃ。 
 どうにもこうにも主導権を取り戻す方法が思いつかなくて、背中を丸めたまま唸ってたら、火照った背中に心地よい冷たさが触れてきた。
 つららだ。
 つららが、背中に手を当ててぴったり身体を寄せてきた!
「『あなた』、どうなさったんですか?意地悪しないで、こっちを向いてくださいな。背を向けられては、つららは寂しゅうございます」
 丸めたオレの背に両手と頬を押し当てて、身体もぴったりと添うようにくっつけて、つららはそう言う。
 すげぇかわいいお願いの仕方だから叶えてやりてぇんだが、我ながら顔がかなりカッコ悪ぃことになってるのがわかるから、振り向けねぇ。
 いや、だって、こう、肌の温度が伝わるぐらいにくっつかれていい匂いされたら、冷静になれねぇよ。それに、背中に当たってるふにふに柔らかいのって、アレだろ?頭ん中で、その感触に集中しようとする自分と、冷静になる為にその感触を無視しようとする自分とがせめぎ合ってて、今は身動き取れねぇよ。
 ちょっと、ちょっと待て、つらら。
 どういう心境の変化か知らねぇが素直になってくれて嬉しいが、オレ、案外打たれ弱かったから、『男』としてみっともねぇとこさらさねぇぐらいに心の準備が出来るまで、もうちょっと待ってくれ!
 なんて、ますます背中を丸めながら内心で思っていたが、そんなのつららには知ったこっちゃねぇわけで。
 つららは、更に止めを刺してきた。

「『あなた』、今宵は、つららを可愛がってくださらないんですか・・・?」

 !!!
 夜に、自分の部屋で、惚れた女と二人きりで、冷たい指でつつぅーっと背筋をなぞりながら、艶やかな声でこんなん言われて、我慢できる男がいるかっ!!
 オレは、もう自分の顔がどんなことになってるかとかすっかり頭から飛んで、即座に振り向いて、つららを押し倒した。
 そして・・・・・・






 
 どんな夜だろうと、朝は来る。
 苦い夜も、恐ろしい夜も、甘い夜も、いずれ訪れる朝を阻むことは出来ない。その朝が、救いだろうが無情だろうが。
 というわけで、朝だ。
 十六夜の月は山の端の向こうに消えて、障子の隙間から差しこむのは陽光。庭では雀の鳴き声。厨房の方向からは、耳慣れた朝の喧騒が聞こえる。うちは妖怪屋敷だけど、主のボクに合わせて朝型の生活をしている者も多いから、そろそろ皆も起き出す時分なんだろう、他の場所からも物音が聞こえた。
 うん。大戦を経て取り戻した、いつも通りの朝・・・・・・・なわけないだろっ!
「つららっ!?」
 寝惚けて伸ばした手が予想してた冷たい肌を見つけられなかったから、ボクは即座に布団から跳ね起きた。
 部屋を見回すと、昨夜、頭(と下半身)に血が昇りきっていたボクが無造作に脱ぎ散らかした自分の着物が、枕元にちゃんと畳まれているのは発見できたが、同じく無造作に脱がせたはずのつららの着物の痕跡は、どこにもない。腰紐一本、転がっていない。
 布団を触ってみると、・・・・温い。つららが抜け出してから、だいぶ経ってるな。
 だからといって、昨夜のことが夢だったなどとは、毛頭考えもしないけど。
 身体がだいぶすっきりしてるし(男子の事情的に)、指にうっすらと歯型が残ってるからね。昨夜、唇を噛んで声を殺すのを止めさせようとして、つららの口に指を含ませたら、奥を突いた拍子に噛まれちゃったんだよね。 
 こんな物証が残っていては、昨夜のことをなかったことにはしてやれない。
 だけど、今この場にいないということは、つららは、またしても往生際悪く、何もなかったふりをするつもりだな。
「そうはさせるかっ!」
 手早く着物を着たボクは、障子をスパーンと開けて廊下に駆け出した。
 廊下の角にいた納豆小僧が、こちらを見てビクッと震える。豆腐に焦げ目がついてる豆腐小僧は、納豆小僧の影にそそくさと隠れた。庭の河童が、ボクと目が合うとささっと視線を逸らす。廊下で大の字になって寝転がっていた青と黒は、勢い余って腹を踏みつけてしまったけど、全然起きなかった。
「つららっ!」
 ボクは、勢いよく厨房へ駆け込む。
 朝の厨房では、母さんと女妖怪たちがせわしなく働いていた。流しで、みそ汁の具にでもするのか大根を洗っていたつららの後ろ姿が、びくぅっと大きく震える。ボクは、足早にその背中に歩み寄った。
「おはよう、つらら」
「・・・・おはようございます、リクオ様。朝ご飯はまだ少しかかりますから、先に身支度なさってください」
 今ではつららより少し背が高くなったボクが、斜め上から顔を覗き込んでも、つららはどもったり慌てたりしなかった。昨夜のあの艶やかな声が嘘みたいに、平静な声を出す。
 そう。何事もなかったかのように。
 だが、今朝のボクは、これぐらいじゃ引き下がらないぞ(また2ヶ月もお預けなんてごめんだからね)。
「つらら、お前、寝不足だろう?今日は日曜日だし、ボクもまだ眠いから、朝ご飯の準備は皆に頼んで、一緒に寝直そうよ」
「あら、リクオ様、もしかして朝ご飯はいらないのですか?じゃあ、取っておきますね」
 ・・・・昨夜のつららも途中までかなり頑なだったけど、今朝のつららはまた別の意味で手強いな。窓から差し込む朝日に照らされた笑顔が、爽やか過ぎる。
 だが、ここで、爽やかさに気圧されて己の恋情が邪な気がして怯んでしまっては、魑魅魍魎の主たるぬらりひょんの名が廃るというもの。
 これしきで、惚れた女と甘い夜を過ごして絶好調のボクを阻めると思うな。
 辺りを見回すと、昨夜の追いかけっこには屋敷中が気づいていたようで(声大きかったし、廊下凍ったしね)、察しのいい女衆は皆、だいたいの事情をわかってくれていそうだ。だからこそ気になって仕方ないようで、皆、作業をしながらもチラチラとこちらを見ている。
 あ、母さんと目が合った。力強くサムズアップしてくれたのは、きっと、息子の恋路を応援してくれてるんだろう。 ちょっと気だるげに皿を用意している毛倡妓とも目が合う。ウィンクしてくれたのも、たぶん、応援だな。
 他の女妖怪たちも、皆、うんうんと頷いたり、拳を振り上げたりしている。
 さすが、うちの組員だ。いい奴ばっかり。皆が味方してくれて、嬉しいな。
 うん。ボク、がんばるよ!
「つらら、これ、なーんだ?」
 ボクは、つららの目の前に右手を突きだす。中指の第二関節あたりに歯型があることに気づいて、つららの手から大根が落ちた(流しに落ちたから、セーフだ)。
「えっ、あっ、あのっ、・・・え、えーと、リクオ様、怪我をなさったのなら、すぐに手当を」
 思わぬ物証を前にして、つららのガードはあえなく崩れた。耳まで真っ赤になって、あたふたと意味なく手を動かして動揺している(この小動物っぽいところが堪らないんだよね)。
「お前の歯型なのに、随分他人行儀な言い方をするね?ああ、そうか。もしや、怒っていたから、ボクの指を噛んだのかい?」
 この唇で、と言わんばかりに唇を人差し指でなぞると、つららは本格的にパニックに陥ったらしく、半泣きで目をぐるぐるさせた(あー、可愛い。ボクの雪女、すごく可愛い!)。
「いえっ、そ、そんなことは・・・・っ」
「何が気に食わなかったのか、言ってごらん?ボクも改善の努力をするから。キスのやり方?体位?それとも、ボクがしつこかったから?」
「!!」
 押せる時には押せるだけ押せ、と遺伝子(おそらくお爺ちゃん譲りの)が囁くので、衆目集まりまくりの朝の厨房で押してみると、恥ずかしさが限界に達したらしいつららは、身を翻して逃げようとした。
 しかし、ボクは学習する男だ。同じ失敗は繰り返さない!
 つららの動きは予想していたので、大きく一歩踏み込んで、後ろから抱きついて捕まえることができた。
「リ、リクオ様っ、やっ!はな、離してっ!」
 つららはじたばたと暴れるが、人間の姿でもこう見えて案外力持ち(つららより背が低かった中一のGWの時点で、中腰の体勢でも片手でつらら抱えてもう片手で刀を構えたり出来たからね)なボクが逃がすはずはない。
「わかった。わかったよ、つらら。落ち着いて。ボクも、自分勝手に事を進めるつもりはないんだ」
「リクオ様・・・」
 幼い頃散々罠にひっかけたからよく知っているが、つららは純真だ。だから、今も、安堵した様子で暴れるのを止めてしまった。・・・・ボクが言っていい台詞じゃないけど、お前の警戒心の薄さは心配になるよ。ホント。
 しかし、古参の幹部連中からも腹芸を評価されているボクは、お前の隙を逃さずに容赦なく追い詰めるけどね。
 ボクは、高らかに声を張り上げた。
「ここは、民主的に多数決を取ろうじゃないか!というわけで、主の指を噛んじゃったいけない雪女は、今からボクの部屋にお持ち帰りされるべきだと思う人と妖怪、手を上げてー!・・・・ん、圧倒的多数により可決だね!じゃ、お持ち帰りってことで!」 
「ほぁぁっ!?」
 繰り返すけど、うちの女衆は皆察しが良くて、ボクの味方なんだよ。
 だから、厨房で作業しながらこちらを見つめていた皆は、ささっと手を上げてくれた。
 協力、ありがとう!ボクら、幸せになるからね! 
 ボクは、今になってやっと、ここが朝の厨房で皆がこっちを見ていたことに気づいて更に混乱したつららを、お姫様だっこして、走り出した。
 





 嗚呼、嗚呼、貴方は本当になんて困った子なのでしょう!
 いくつになっても、やってはいけないことをして、私を困らせてばかり!
 私は、恐ろしい雪女から貴方を逃がしてあげようとしたのに! 

「・・・・もう、逃がしませんよ」

 私は、抱えあげられた愛しい腕の中で、黄金螺旋の瞳をうっとりと眇めて、誰にも聞こえない小さな声で呟いた。 
  


【おしまい】
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