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高砂や・拾壱

 鴆様と良太猫のリクオ嫁取り論、想像してみろのコーナー。

 いや、わたしが想像してみて、ホント寒々しいと思ったから、鴆様に言っていただきました。
 でも、これ実現したら本当に昼メロですヨ・・・・・


 さて、ここで、蛇足を承知で、奴良組の三代目にお仕えしている話題の雪女について、少し説明をしよう。

 名は、氷麗(つらら)。人間に擬態時の姓は、及川。
 妖怪としてはまだ年若く、母親は、初代の側近を勤め上げた雪女の雪麗。
 主が赤子の頃より守役に励み、覚醒の兆しを見せた頃からは護衛も務め、先頃、その忠節を認められて、側近頭へと出世した。
 二代目の側近が引き続きお仕えしている三代目の側近連中の中で、一人彼女だけは、三代目のみを主と仰ぐ身。
 お仕え申し上げる主は、幼き頃より、この雪女が大層お気に入りで、常に傍らに侍らせるどころか、母を慕う子のように後をついて回ることもしばしばあったとか。
 主が跡目を継がぬと宣言してからは、以前ほどの睦ましさではなくなったが、それでも、日々のお世話を、秘密の護衛をしっかと勤め、その忠節には些かの陰りもなかった。
 主が若頭に就任なされてからは、なおのこと側近として励み、かの大妖土蜘蛛相手にも怯まぬ勇姿を見せつけた。
 噂を聞いて、ならば勇ましき女傑かと想像した者は、実際にその姿を見て、驚く。
 男を虜にする女怪なれば美しかろうとは思っていても、これほどに可憐で愛らしいとは、と。
 そのような女であるので想いを寄せる男も多いのだが、満月の如き黄金螺旋の瞳で雪女が見つめるのは、たった一人。
 我が愛し子、悪戯っ子な弟、思慮深き兄、優しく強く頼もしき主、心トキめかす男君、その全てである唯一の相手のみ。


「雪女は、料理上手いぞ。たまに凍ってるけど。リクオの毎日の弁当は、雪女が作ってる。男ってのは大抵、女よりよっぽど保守的な生き物で、世に『おふくろの味』って言葉があるように、毎日の食事には、慣れ親しんだ味を求めるもんだ。リクオが慣れ親しんだ味ってのは、若菜様や毛倡妓やなんかの味もあるだろうが、当然、雪女の味もあるよな。リクオは、凍ってても全然平気で食えるぐらいに雪女の料理に慣れてるし、味付けを気に入ってるらしくて、弁当は雪女にまかせっきりときた。だから、そのカナちゃんは、リクオ好みの飯を作ろうと思ったら、雪女にも教えを請うことになるな」
「・・・・・そんな台所には居合わせたくないですね」
 源氏物語から現代の昼メロに至るまで、同じ1人の男を愛する複数の女という図は、不穏の種を孕んでいる。
 夜の店の店主としてそのあたりに詳しい良太猫は、鴆の語る様をリアルに想像できて、しおしおと猫耳を垂れた。
 カナとつららが、互いの嫉妬を押し隠して和やかに振舞おうとすればするほど、台所の空気は重苦しくなっていくことだろう。その場を逃げられぬ無関係な女妖怪の胃に穴が空いてもおかしくないほどに。
「オレも嫌だ。若菜様ぐらいだろ、同席できんのは」
 さすがの鴆も、げんなりした顔をする。
「けど、これだけじゃねえ。リクオの着物は、出入りの呉服屋が仕立ててる。けどな、寝巻は雪女が作ってんだぜ?赤ん坊の頃から、ずっと」
 たかが寝巻、されど、誰が作っても同じというわけではない。
 以前、鴆宅を訪れたリクオが、深酒が過ぎて泊めてもらう羽目になったことがある。鴆は医師なので、診療所も兼ねている自宅には、患者の為に様々な大きさの寝巻が用意してあった。だから、その夜の寝巻も、リクオの身体に見合った物を用意したつもりだ。
 しかし、身に付けたリクオは、一瞬、微妙な顔をした。リクオは、酔っていても気配りの出来る男なので、すぐにその戸惑いを隠したが、気になった鴆は、後日、その理由を問い詰めてみた。
 すると、家で着る物ほどしっくりこなかったのでちょっと戸惑ったのだ、とリクオが答えたわけだ。
 つまり、リクオは、つららが主の身体の動きの癖まで考えて設えた、最も着心地がいいだろう物に慣れているので、本人も思いもよらないところで贅沢になってた、ということらしい。
 カナの裁縫の腕は知らないが、年季の入ったつららより上ということはあり得ない。
 ならば、若奥様になったカナは、自分の亭主に惚れてる女から、亭主の寝巻の縫い方を習うのか?それとも、カナと婚姻が為ってもつららが作るのならば、つららは、他所の女を嫁にもらって共寝するのだと思いながら、惚れた男の寝巻を縫うのか?
 どちらにしても泥沼だ、と良太猫はため息をついた。
「それだけじゃねえよ。学校行く時のマフラーとか手袋とかも、雪女のお手製だ。つぅか、半襟つけかえしてんのも雪女だろうぜ。綻び繕ったり、ボタンつけたりだのも、雪女だな。オレ、昼姿のあいつに、『おい、袖の釦取れそうだぞ』て言ったら、あいつ、すかさず、『つらら~、これ、釦つけといて。よろしく』とか言ってたぞ」
 学校でのリクオは『良い奴』として種々の雑用に励んでいるのだから、別に、リクオに細かいことができぬ、というわけではない。
 ただ、大抵の場合、リクオが頼むより先に、つららが、気づいた途端に、誇らしき我が仕事!とばかりにやってしまうし、リクオが自分でやろうとしたら寂しそうにするので、任せるのが常になっているだけだ。
 それに、裁縫や料理の類は技量が明確に結果を左右するので、リクオが意地を張って自分でやるより、つららに任せる方が、遥かに具合がよく出来上がる。
「『まざこん』の男に嫁ぐのは辛い、姑と同居なら尚更、とは聞くが、リクオの場合は、『つららこん』じゃねえのか?あいつ、身の回りのことは、何もかんも雪女に任せてるぞ」
「そんな、大げさな・・・・」
「いや、マジで。朝は雪女に起こされて、配膳も雪女。日によっては、朝飯作ってるのも雪女だ。リクオの洗濯物は雪女が洗って干して仕舞ってるらしいし、学校行く日の弁当作ってるのも、雪女。護衛だから、登下校はもちろん一緒だし、部活の時間もずーっと一緒。リクオは昼だとマメな奴だから、自分の部屋を片付けたりはするけど、本格的に掃除してんのは雪女だろ。それに、あいつの部屋で茶を飲もうが、酒を飲もうが、給仕に来るのは必ず雪女だし。あ、あと、夜は布団も敷いてたな、雪女が」
「あ、あの、それ、本当ですか?」
 良太猫は、目を丸くした。それは、護衛や側近の範疇を遥かに超えている。
「信じがたい気持もわからんでもないが、リクオの義兄弟として断言する。事実だ」
「だから、リクオの部屋で、替えの足袋だの新しい手拭いだの探そうと思えば、雪女に聞くのが1番早いぜ。リクオ本人もそうしてるし。リクオは、『側近やら護衛やらで忙しいのに、何でもかんでもつららに任せちまって悪ぃとは思うが、つららに任せんのが1番オレの好みに仕上がんだよな』、て言ってたぞ。雪女に酌させながら」
「・・・・・・」
「だからよぅ、そのカナちゃんとやらがリクオの世話を焼こうと思ったら、一から十まで雪女にリクオの好みを教えてもらわにゃならんだろうな。けど、どんなに賢い娘でも、一朝一夕で全部覚えて滞りなくやってみせんのは無理だろ?だから、その娘が使いもんになるまでは、リクオはやっぱり、雪女に頼ることも出てくるんだろうな。その娘の目の前でも、よ。その娘の心中察するにアレだが、まあ、仕方がねぇよなぁ」
 リクオは、天下の奴良組の三代目総大将である。
 だから、身の回りの世話などは誰かにやらせて当然なのだが、この場合問題なのは、「誰か」がほぼ全て「つららが」となっていることだ。 
 しかし、長年世話をしてきたつららが一番リクオ好みにできる、となれば重用してしまうのも致し方ないこと。
 そして、その理屈は理解できても、感情を宥められるとは限らないのが、女心というものだ。
 カナが、よっぽど手先が器用で要領の良い娘で、つららが教えたことを素早く吸収して早く仕事を移行できればいいが、技量がなかなか上達せぬ場合は、劣等感を感じるに違いない。
 そして、つららは、カナが早く仕事を覚えようがなかなか覚えられなかろうが、どちらにしても辛い思いをする。
 家内でそんなふうになっていたら、リクオとて、さすがに居心地が悪かろう。
 初代の嫁取りにもこれと似た問題が生じていたはずだが、初代の世話は、リクオの場合のように雪女1人に集中するのではなく、もっと分業化していた。それに、雪麗は、なんだかんだ言っても、珱姫を好いていたし、珱姫は器の大きな女で、素直に雪麗を慕っていた。
 だが、カナとつららでは・・・・・
 良太猫と同じ結論に至ったのだろう、鴆も、ぐぐっと眉を顰め、口元を苦く歪めた。
「雪女もなぁ、そうなっちまったらさぞ辛かろうな。母が子を手放す寂しさと、惚れた男を諦める苦渋とを同時に感じてるだろうよ。雪女は情が深い分悋気も激しいと聞くが、相手が奥方様で自分はただの下僕でしかないとなったら、『女の悋気は可愛いもんだ』なんて言ってられる範囲じゃ済まねえだろうよ。オレは男だからな、そういうのはよくわかんねぇけどよぅ、そんな状況なら、氷雪で出来たその身を焼き焦がす業火のような想いを、主には露とも見せてはならぬと、それはそれは苦しい想いをしそうだなぁ。失恋につける薬なんてオレも知らねぇが、離れて忘れちまえたら救われるかも、とは思う。けどよぅ、側近頭の地位まで賜って『未来永劫』と誓った身で、雪女は、リクオから離れられねぇだろう。あの雪女は、さっきから散々お前に話してきた通り、一途な女なんだからな。・・・・なぁ、良太猫、恋だ愛だに善悪はねぇと言うが、罪深いってこたぁ、あるぜ」
 

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