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夜もすがら

 ぬら孫ss。リクつらと遠野、みたいなのをいくつか書きたいです。
 今回は、冷麗。

 水鏡は雪女が好きなんですよ。銀魂の銀さんはナースだと加点3らしいけど、わたしも雪女には加点3です。氷麗も、雪麗さんも、冷麗も、雪子姫も、ゆきめも、雪菜も、おユキちゃんも好きだー!しまった、楠桂の恋してフローズンをもっかい読みたい!

 小説2巻で冷麗が言ってたリクオの台詞、『うちの雪女にも教えてやってくれ』がいいなと思ったので、そのシチュエーションについて妄想を広げてみました。
 
  
 音もなく障子が開いて、するりと部屋に忍び込む男が一人。
 吹き上げる妖気に靡く白銀の髪は、夜とて大層目立とうはずなのに、大部屋で飲み食いする輩の目に止まることはない。
 上下の別が厳しい任侠社会にあって、遠野のあり様は少し変わっていて、この場にさほど明確な序列はなかった。頭領の赤河童はさすがに上座に坐しているが、他は、てんでバラバラに好きな場所で好きなようにくつろいでいる。
 遠野の妖怪忍者は各々が独立しており、人間社会に例えるならば、他所からの傭兵の要請を仕切る頭領や長老たちは人材派遣会社、妖怪忍者たちは契約社員といったところ。頭領や長老格は敬意を示されるが、敬意は忠誠心ではない。郷土愛厚く、組織としての規則や慣習には従えども、みな、個として己を認識している。だから、親分・兄弟分・子分と呼び合い一家を為す組とは雰囲気が違っていて、他所者の目には珍しく映った。陸上や水泳などの個人競技の部活と、団体競技の部活に例えるのも、近いかもしれない。
 こういうのも、あるのか。
 大家の跡取りとして育てられ、常に輪の中心にいた身としては、ひどく新鮮に感じた。
 そのせいで気が抜けてしまったのだろう。畏れがとけて、姿が顕わになる。けれど、近くにいた者が多少の目線を寄越したぐらいで、注目を集めて取り囲まれるということはなかった。
 ならば再び身を隠すこともないか、と思って、そのまま、縁側近くの集まりに近寄っていく。
 今宵、縁側近くに集っていたのは、リクオの教育係たちだ。
 遠野に、閥というほど明らかなものではないが、それでも、集団となれば気の合う者同士が身を寄せることは出てきて、グループのようなものはある。
 そういう関係性なので明確にリーダーを定めたわけではないが、なんとなく、このグループでは、雪女の冷麗がリーダー格と目されていた。
 一本気で単純な者が多い妖怪の、特に男は、戦況全体を見極めた上で、あえて己は下がって他者のサポートに回る、ということがなかなか出来ない。若ければ、尚更。
 だから、個としての攻撃力が随一というわけではなくとも、補助と防御に優れ、なにより、冷静な観察眼と判断力があって細かな気配りが出来る冷麗は、皆から一目置かれていたのだ。
 その冷麗にじっと視線を定めて、リクオは歩み寄っていく。
「リクオ?」
 夕餉も終り、ある程度の片付けも済んで、この場に残っているのは、酒を飲む者と、碁や将棋などの遊戯に興じる者たち。酒を飲みながら雑談する男たちの隣で、冷麗は紫と二人で碁を打っていた。
 この数日でリクオは随分彼らと打ち解けたから、一緒に酒でも飲むつもりだろうか?しかし、皆の雑用をおしつけられたリクオは一番朝が早いのに?、と少し訝しげに、紫が小首を傾げる。淡島と雨造もリクオが近寄ってくるのに気づいた。
 けれど、リクオは他の者には視線もやらずに、一心に冷麗の瞳を見つめている。
 雪女特有の、黄金螺旋のその瞳を。
 じっと。




「何だったんだ、あいつ?」
 雨造が頭を捻りながら呟いた。
 先刻、この広間に訪れたリクオは、つかつかと冷麗に歩み寄って、じーっとその瞳を見つめ、やがて、「おやすみ」とだけ言って去っていったのだ。
「リクオの奴、冷麗に惚れたのかな?」
 淡島も、酒を飲む手を止めて、首を傾げる。
 他の者に構わずに冷麗の黄金螺旋を見つめていた様子は、ほんの数日前に出会ったばかりとはいえ、あきらかに普段と違っていた。まるで、恋でもしているかのように。
「・・・・そうなのか?」
 イタクは、隣の冷麗に問いかける。
 すると、冷麗は柔らかく微笑んだ。
「違うわ」
「えっ?でも、さっきのアレは・・・」
「本家にも雪女がいて、その娘はリクオの元守役で、今も世話係と護衛をしてるんですって。だから、リクオが用事があったのは、『私』じゃなくて『雪女』よ。明日も朝が早いし、雑用も修行もしなくちゃいけないのに、『夜もすがら もの思ふ頃は 明けやらで ねやのひまさへ つれなかりけり』なんて可哀想じゃないの」
「・・・・ああ、そういうこと」
 紫はすぐさま納得して頷いたが、男たちは冷麗の言葉の意味がわからない様子で、不思議そうな顔をしている。
 だが、冷麗はそれ以上説明してやる気などなかったので、唇に蠱惑的な笑みを佩いたまま、碁に戻った。




 
 リクオが遠野につれてこられた最初の夜、たまたま、リクオの仮の寝床となっている大釜が置かれた土間近くを通りがかった冷麗は、寝巻でうろうろしているリクオと出会った。
 喉でも乾いたのか?井戸や厠の場所がわからないのか?と思って声をかけてみたが、リクオは何も言わない。
 ただ、艶麗な顔立ちなのに童子のように一途な目をして、冷麗を見つめるばかり。
 しばらく見つめてから、「おやすみ」と言って、リクオは寝床に戻っていった。
「?」
 不審な行動ではあったが、寝ぼけていたのだろうと思って気にせずにいたら、冷麗は、翌日の夜も、今度は縁側でリクオと出会った。
 キョロキョロと辺りを見回して歩いていたリクオは、冷麗の姿を見つけると近寄ってきて、やはり何も言わずに瞳を見つめ、しばらくしたら「おやすみ」と言って去っていく。
「?」
 冷麗は、仲間から一目置かれるぐらいに賢い落ち着いた女であった。
 なので、他の娘ならばリクオの美貌に舞い上がってしまいそうなものなのに、冷静に分析して、一つの仮説を抱くに至る。
 冷麗は、さっそく、その翌日の稽古の休憩時間に、仮説を確かめてみることにした。二つの容器に入れたレモンのハチミツづけのうち、大きい方を他の者たち、小さい方を切り株に腰かけるリクオに手渡して、隣に座る。
「これ、美味いな」
「ありがとう。皆にも好評なの。ちょっと特別なレシピなのよ」
「へえ」
「そういえばリクオ、奴良組にも雪女がいるんですって?名前は、確か、雪麗・・・」
「違う。そっちはじじいの雪女で、もういない。オレの雪女は、雪麗の娘で、氷麗って名前だ」
 群れを形成したり、他者に付属せねば、畏れを集められない妖怪もいるが、雪女は、個で畏れを集められる妖怪だ。冷麗を見ればわかるように、本来は、『どこ出身の』ならばともかく、『誰の』という言われ方はしない。
 だが、どうやら、冷麗の睨んだ通り、奴良組では勝手が違うらしい。リクオは、何の躊躇いも気負いもなく『オレの』と口にする。
 『うちの組の』や『オレの側近の』でなかったところがポイントだと、冷麗は思った。
「・・・・・あなたの雪女ちゃんは、どんな娘?」
「どんなって・・・・・ドジで、いつも一生懸命で、泣き虫で。でも、結構強いし、気が利くし、がんばりやだ。料理もうめぇよ。時々、凍ってるけど」
「仲良しなの?」
「つぅか、あいつはオレの守役で、そのまま側近になって、オレが人間の姿の時は護衛もしてるから、ずっと一緒にいんだよ。オレの身の回りの世話とかも、皆あいつの仕事だし」
「ああ。だから、あなた、洗濯の仕方も知らなかったのね」
「人間の学校でなら雑用やってんだけど、家ではそういうのしねぇからな」
 予想以上のお坊ちゃまぶりに冷麗は少々呆れるが、リクオは生まれた時からそうなので、悪びれも照れもしない。
「他所の雪女がどんなことしてるか興味があるんだけど、その雪女ちゃんは、いつもどんな仕事をしてるの?」
「どんな、て・・・・学校がある日は、オレを起こして、洗濯して、朝飯配膳して、・・・あ、違う。その前に、オレの弁当作ってるはずだ。で、一緒に登校して、授業中は、もう一人の護衛と交代で屋上で見張りとかしてる。昼は、一緒に弁当を食う。放課後は、部活がある日は一緒に部活出て、なかったら一緒に帰ってるな。家では、食事当番の時は飯作ったり、片付けしたり。オレが風呂入る時には着替え用意して、布団敷いてくれて、・・・あー、たまに晩酌に付き合わせる」
 リクオの口から語られたあまりの接触時間の長さと密度の濃さに、ある程度は予測していたはずの冷麗は、ちょっと呆れた。
 なにソレ?
 夫婦?
 それどころか、夫婦以上だ。普通の夫婦の方が、ずっと、接触時間が短いだろう。
 遠野で生まれ育った冷麗は、妖怪任侠として主従を結ぶ相手はいないが、他所へ派遣された際などに目にしているから、『普通の主従』が如何なるものかは理解している。その冷麗の目から見て、リクオと氷麗の関係性は異様に見えた。語ったリクオが何も気にしていない様子なのが、また余計に。
 昼姿のリクオは氷麗との関係を周囲に誤魔化しているが、それは、相手が人間で、妖怪任侠の主従関係を奇異に思うだろうと考えるからだ。しかし、今は、細かいことを考えるにはあまり向いていない夜姿で、会話の相手は雪女の冷麗なので、すっかり気を抜いてしゃべっている。妖怪任侠の社会においても、自分と氷麗の関係の密度の濃さは珍しいものだ、などとは思いもせずに。
 だから、つまり、リクオにとって、幼い頃からずっと、氷麗なる雪女が自分の傍にいるのはあまりにも当然のことなのだろう。
「・・・・奴良組の若頭が、四国の狸と戦ったとか噂を聞いたんだけど」
「よく知ってるな。ああ、そん時は、背中を預けて一緒に戦った」
「ふぅん」
 冷麗は雪女であるので、同族として、その娘の気持ちを類推したくなる。
 雪女は女の性の強い妖怪だが、誰彼構わず閨に引っ張り込むような行いはせず、むしろ、昔話にあるように、気に入らぬ男は凍死させ、気に入った男だけ命を助けてやった上に嫁になり子を為すような、そんな一途な女妖である。
 幼い頃から甲斐甲斐しく世話をして、一日の大半を共に過ごし、出入りでも背を守って戦うというのならば、その雪女は、単なる役目として以上にリクオに情を寄せているに違いない。そうでなくば、もう少し分業してくれ、せめて、護衛か世話係かどちらか一方にしてくれ、と言い出しているはず。
 その雪女の胸の内に在るのが、母の愛なのか下僕としての忠節なのか女としての恋なのかはわからぬが、いずれにしろ、何かはあるのだろう。たっぷりと、溢れんほどに。
 そして、それはこのリクオも同じなのだろう、と冷麗は考える。
 生まれついての若君様でちやほやと世話を焼かれるのを当然として受け止めていても、気に入らぬ者をそうまで長く傍に置いたりはしないはず。リクオがその雪女を信頼し気を許しているのは、間違いがない。
 いやいや、それどころか・・・・・・
 冷麗は、自分の仮説に確証を得て、にこりと微笑む。
「?」
「その雪女ちゃんも、やっぱり、私と同じ瞳をしてるの?」
「あぁ。似てる。同じ満月色の螺旋だ」
「月?」
 己の瞳をそのように表現されたことがなかった冷麗は、少し首を傾げる。
「ああ、月だ。『むばたまの夜のみふれる白雪は 照る月影の積もるなりけり』とか言うぐれぇだから、雪女に月が似合うのも道理だろう?」
 唇に薄く笑みを佩いて、まっすぐに瞳を覗きこんでくる美しい男。
 誤解しても仕方のない状況だが、冷麗は、まだ元服前のリクオが、『雪女が夜闇に白く美しく輝くのは、実はお月さんの光で出来てるからなのかねぇ』などと口説き文句のようなことを言い出すのがおかしくて、くすくすと笑い出した。そして、大人の余裕でもって、紛らわしい口説き文句にこう返す。
「あらあら。じゃあ、私は、さしずめ、『ふたつなき 物と思ひしを 水底の 山の端ならで いづる月かげ』といったところなのね」
 冷麗が口にした歌の意は、この場合、『あなたが月みたいだという雪女の瞳を、家を遠く離れたここ遠野で見られるとは思ってもいなかったことでしょうね。だからあなたは、『オレの』雪女ちゃんを思って、私の瞳を見つめているのね?』といったところか。
 若いながらも旧家の御曹司として詩歌に通じるリクオは、すぐに冷麗の揶揄を理解し、それが自覚していなかった自身の心情を見事に言い表しているので、照れくさくなってそっぽを向く。
「・・・・・悪ぃな」
「構わないわよ。『見しままに 姿も影も 変わらねば 月ぞ都の 形見なりける』なんて、雪女冥利に尽きるんじゃないかしらね、その娘。いつか、その雪女ちゃんに紹介してね?会ってみたいわ」
 若さに似合わず落ち着いた風貌のリクオが初な少年らしい反応を示すのが楽しくて、冷麗は『私の瞳で良ければ、いくらでも眺めていいのよ。リクオったら、それほどに、家で待っている『オレの』雪女ちゃんが恋しいのね』などと、さらにからかった。
「・・・・・・・レモンのハチミツづけ特選レシピ、『うちの』雪女にも教えてやってくれ」
 眉を顰めたリクオは、レモンのハチミツづけの入った容器を、乱暴な手つきで冷麗の膝に戻して立ち上がる。
 冷麗は、しばらく、くすくすと笑いが止まらなかった。






「ほんと、不思議な妖よね、リクオって。里に来てまだ一週間なのに、皆の心を掴んでしまったわ」
「お前もか、冷麗」
「私も?」
「お前も、リクオに畏れを感じているのか?」
 いつも通りの無愛想な顔で、なのに口調に些かの焦燥を滲ませて、イタクが問いかける。その様からは、リクオが気になるのだということがバレバレで、なのに当人は自覚していない、いや、したくなくて意地を張っている様子なのが面白くて、ついからかってやりたくなった。
 本当、戦闘時の注意力は人一倍なのに、己の気持ちにも周囲の気持ちにも鈍いわね、イタクったら。
 私は、この間の夜、ちゃんと、言ったじゃない。『夜もすがら もの思ふ頃は 明けやらで ねやのひまさへ つれなかりけり』て。
 あれは、『リクオったら、守役やら側近やら護衛やらでいつも一緒だった『オレの』雪女ちゃんがよっぽど恋しいみたい。それこそ、一晩中眠れないかもしれないぐらいに。だから、リクオは、探しに来てまで、私の瞳を見つめるのよ。せめてもの慰めとして、『雪女の』瞳を見ないとよく眠れないのかもしれないわね』という意味よ。
 つまり、私は、他の女を恋しがるリクオに瞳を覗きこまれるのを嫌がらないぐらい、顔を背けたりせずに見つめ返してやるぐらいには、リクオを気に入っている、ということ。
 紫はすぐに察したのに、まだわかっていないなんて、これだから男ってのは。さてさて、何て言ってやったら、この鈍感男に伝わるかしらね?
 しばし思案してから、私はこう言った。
「私、言われちゃった」
「なにをだ?」
「レモンのハチミツづけ特選レシピ、うちの雪女にも教えてやってくれって」
 口に出すと、あの時のリクオの様子が思い出されて、自然と顔が綻ぶのがわかった。
 私が『紹介してね』と言い、リクオが『教えてやってくれ』と返したのだから、リクオは私と自分の雪女ちゃんを会わせる気がある、てこと。私が望むならば奴良家に招いてくれる、ということ。
 ならば、私は、会ってみたい。少し離れただけでリクオがああも恋しがる、その雪女ちゃんに。  
 我々雪女は、いかに恋すれども冷たきこの身、温かい手に選ばれず、叶わぬ思いに魂削れ氷雪に還る同族も少なくない。だからこそ、同族として、捧げた想いを返してもらえる彼女を言祝いでやりたいというもの。
 『あなたの若君様は、夜もすがら我が雪女を恋うてらっしゃったわよ』て、言ってやったら、その娘はどんな顔をするのかしらね?あ~っ、楽しみ!



「冷麗、レモンのハチミツづけ、今日はたくさん用意しておいてくれ。疲労回復には、あれが一番だ」
 何かを理解できたのか、それともまだ意地を張っているのか、不器用で鈍感な男は、愛用の獲物を取りだす。 
 稽古場で戯れる男たちを見守りながら、賢い雪女は、この先の展開を想像して、くすくすと楽しげに笑っていた。

 畏れ深く、霧も濃く、陽の光差すことも少ない、遠野の隠れ里。
 されど、この地を見守る月の光の、なんと優しく美しきことか。


【おしまい】
 
 ・・・・わたし、雪女好き過ぎるだろう。
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