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高砂や・捌

 水鏡は、普段、全部決めてから話を書き始める派ですが、このシリーズだけは、リクつら萌えポイントをつらつら語らせたいだけだったので、何にも考えずに書き始めました。
 が、どうやら、鴆様には意図があったらしいです(この部分書くまで知らなかったのですが)。



 焼き牡蠣を摘んで、お猪口をくいっと干す。芳醇な海の香りを酒が膨らませて、鴆は満足げに頬を緩めた。
 今宵は、好い酒だ。酒肴は美味いし、酒もいい。おまけに、話が楽しいときた。
 鴆は、うんうん唸り始めた良太猫を見て、目を細めた。

「おーい、良太猫。そろそろ降参するか?」
「いやいやまだです!・・・・と言いたいとこなんですが、正直、難しくなってきやした。とりあえず、奴良家の雪女は三代目総大将にとって特別な存在であることは、オイラも認めやす。その特別の種類については、何分、まだお若いことだし、妖怪の13歳は元服済みでも人間の13歳はまだ子供と扱われるわけですから、言いきれねぇとは思いますがね」
 賭けは運に左右されるモノ。引き際を見誤っては、いかな賭け師でも損を免れぬ。とはいえ、賭け事に熱くなってしまうのが、良太猫という妖怪だ。
 良太猫は、自身の賭けにまだ見切りをつけ難いようで、もごもごと反論する。
 鴆は、その様子を見やって、こっそりため息をついた。
 今宵、鴆が良太猫に賭けの話を持ち出したのは、意図あってのこと。
 奴良組三代目組長奴良リクオの嫁取りは、実際に祝言を挙げるまで夜の世界から注目を浴び続けるに決まっているのだが、最近の世間の興味の持ち様は、異様な程だった。
 側近に酒を奢ったり小妖怪に菓子を貢いで聞きだそうとするのは、まだ可愛い方。己の眷属の小動物やら手足をひっこめさせた憑喪神やらを屋敷に潜り込ませよう、いやいや、『あきば』なる人間の街で売っている盗聴器を買って仕掛けよう、などと言いだす不定の輩が現れるなど、あってはならぬことだ。
 幸い、それらの不届き者は三羽鴉に見つかって、大事に至る前に始末をつけることができた。が、すわ敵の諜報か!?といきり立って理由を調べた三羽鴉は、賭けでヒートアップした連中がリクオの恋路へのワイドショー的興味を高まらせた挙句の愚行だとわかって、絶句して、途方に暮れた。
 真面目な三羽鴉(トサカ丸はリベラルに見えるかもしれないが、それは兄妹との比較でそう見えるだけであり、本質的には真面目な硬派である)の手に負える問題では、なかった。
 すっかり困ってしまった黒羽丸より相談を受けた鴆は、三代目を襲名したとはいえまだまだ年若い義兄弟の初めての恋が、周囲のつまらぬ野次や横槍なぞに邪魔されてはならんと、一肌脱ぐことにしたのだ。
 新しく賭けようとする連中が、その前に実態を調査しようとする。ならば、これまで賭けた分は仕方ないとしても、これ以上は賭けられぬようにすればいい。
 法外な賭け金も、つららに関する長話も、全ては、胴元である良太猫の口から「じゃあ、賭けはこれにてしめぇにしやす」と言わせたいが為だ。
 その為に、恋話が三度の飯より好物な女子とは違うはずの妖怪任侠の親分が、背中が痒くなりそうな甘ったるい話をこうして長々と語ってきたのだが、どうやら、まだ足りぬ様子。
 鯛のかぶら蒸しをつつきながら、鴆は、今夜はとことんまで良太猫につき合う覚悟を決めた。
「お前がこれで退かねえってんなら、しゃあねえな。続きを話してやろうじゃねえか。こちとら、まだまだネタはあるんだぜ」
「・・・・・・あの、鴆様、今更言うのもなんですが、どうして、そんなに語るネタがあるんですか?詳細に観察して、よく覚えていらっしゃいますよね?」
「ああ。そりゃあ、医者の特性だな。鴆っていう妖怪は、代々、奴良組の薬師で医者だ。それが、弱いこの身に一番いい道だとオレ自身も思ってるし、親父もそう思ってた。だから、オレは、幼い頃から、医者になるもんだとして育てられたのよ。医者ってのは、まず、患者の状態を把握しなくちゃならねえ。どんな技術や薬があったって、患者の状態を見誤っちゃあ、せっかくの薬も毒にならぁよ。だから、オレは、『まず観察しろ。把握しろ。理解しろ』と親父に教わった」
「なるほど。飯屋は注文間違えても謝って許してもらえたりしやすが、医者ってのは、間違えましたゴメンなさいじゃ済まされねえ職ですからねぇ」
「そうだ。そんで、奴良組傘下のオレが一番気にしなくちゃならねえ患者は、義兄弟で三代目のリクオだ。あいつは、オレを守ってやると言ってくれたが、オレだってな、オレなりにリクオの奴を守ってやりてぇのさ。あいつ、あんな涼しい面しといて、一人で飛び出してったり無茶かますからな。平時はリクオが健やかであるように、戦時は無茶の後始末で、オレが死ぬまでは役に立ってやりてぇのよ」
 得意げではなく、さらっと当たり前のこととして、鴆は言う。
 良太猫は、自身が寿命の長い妖怪だからこそ些か無頓着な己の生き様と真摯な鴆の生き様を比較して、素直に感心した。
「医者のオレだからこそ言うが、心と体は繋がってる。人間だって、心が風邪引きゃあ、体だって具合がおかしくなるってもんだ。気が凝って出来ている妖怪ならば、尚のこと。だから、オレは、リクオの心の具合が気になんのさ。でもまあ、恋心ばっかりはさすがの薬鴆堂でもつける薬がねぇ病なんで、どんだけ進行しようとほっぽとくしかねぇんだけどな」
「お医者様でも草津の湯でも、て言いますからねぇ」
「おう。というわけで、この、奴良家お抱え薬師の観察の結果報告続編、といきてえとこだが、その前に、お前に一つ、お題を出す」
「へ?」
 唐突に、鴆が、これまでとは趣が異なことを言いだしたので、良太猫は目を丸くした。
 ぱちぱち瞬きをする良太猫の前で、鴆は、ニヤリと片頬を上げてみせる。
「あのな、良太猫。オレだって、お前の言い分を無視したいわけじゃねえ。だから、いっぺん、お前が推してるその『カナちゃん』とやらがリクオの嫁になったらどうなるか、考えてみようじゃねえか。さあ、想像してみろ、良太猫。『カナちゃん』がリクオの嫁になったら、組は、リクオは、どんな塩梅だい?」



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