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あいににている

 カルバニア物語で、エキューとライアンとタニア。

 3人でお茶を、なんて言い出したのは誰だったのか。あー、目の前で寝こけてる伯爵令嬢だったっけ?
 とりあえず、まあ、私はその申し出をOKしたさ。最愛のお前と大切な彼女のお誘いだからね。そりゃあ、ね。
 おしゃべり雀どもが煩い王宮に行くのはヤだったけど、それも我慢したさ(彼女はそう簡単に外出できないしね)。人嫌い王宮嫌いの私がわざわざ出向くってんで、うちの連中が「伯爵もやっと大人になられて」なんて言いやがったのも、1発殴るだけで勘弁してやったさ。 
 だがこの状況は何なんだ!?
 彼女の公務が伸びて待たされたのは構わない(ていうか待ってる間、お前と2人きりでイチャこいてたわけだから全然OK)。時間も遅くなったことだしお茶じゃなくてお酒で、となったことも構わない(泊まるつもりになってたし)。
 だが、エキューお前、なんでタニアにばっかり抱きついてタニアにばっかり頬っぺたにちゅーとかかまして、タニアの膝枕で寝こけてんだ!
 お前の恋人はタニアじゃなくて私だろうが!この、(地位・金・容姿・包容力全てにおいて完璧な)ライアン・ニックスだろ!!
「ダメよ、ライアン。エキューはお酒が入って寝ちゃうと、何しても朝まで起きないわ」 
 愛しいからこそ余計憎らしいエキューを睨んでたら、タニアがクスクス笑った。超過労働をこなしてきた後なのに、我らが女王陛下はご機嫌がよろしい(私とは違って)。
「知ってる。仕方ないタニア、今夜は2人でとことん飲もう。こいつは後で私がベッドに叩き込んでやる」
 今は真夜中、ここは王宮の奥まった場所にある、タニアの私的なスペース。床には座りごこちのいいふかふかの敷物が敷かれていて、至る所にクッションが散らばっている(毛布もある)。低いテーブルの上には酒とツマミがたんまり乗ってて(替えのグラスや割るための水もある)、だらしない飲み会をするには最高の環境だった。
 使用人以外でこの場所に足を踏み入れた人間は、エキューと私だけらしい(光栄だな)。
 だから、何にも気兼ねせずにどんな軽口でも叩ける。裕福な私たちはそれに比例して枷が多くて、だからこそそれらの枷を取っ払えるこんな機会は貴重だった。
 




「エキュー、今夜はペースが早かったわね。1番強いくせに1番最初に潰れちゃうなんて、ビックリしたわ」
 パサパサの金髪を梳きながら、タニアは優しい顔で言う。タニアとエキューの絆は深くて、特にエキューはタニアに甘ったれてる(何でも筒抜けらしいしな)。タニアは家族と暮らせないから、エキューが一番の身内みたいなもので、誰に対するよりも気を許している。
 今宵は闇夜。月の出ない夜。でもここは暖かくて明るくて、柔らかい空気に満ちている。
「大好きな君と、大好きな私と、誰にも邪魔されない最高の飲み会で、嬉しくて興奮し過ぎたんだろ。この動物は」
 私は手を伸ばして、エキューの髪をツンと引っ張ってみる。エキューは少し眉を顰めたけれど、起きる気配はない(ふん、つまらないな)。
「・・・・ライアンって自信家ねえ」
 果実のリキュールを水で割った物を口に運びながら、タニアは少し呆れた口調で言う。
 タニアは私にも気を許している。まるで、私が彼女の肉親であるかのように。
 他の女にそんな態度を取られたらうっとおしいと思っただろうが、タニアならそうは思わない。時々、本当に私たちが血の繋がった兄妹だったらよかったのに、と思うことがある。そうならば私もタニアも寂しくなかっただろうし、私は爺どものうざったい思惑なんかに振り回されずに、今よりタニアの役に立ってやれただろう。
 でもまあ、国王とかは真っ平だけど(だって面倒くさいし向いてない)。
「別に。明白な事実を述べてるだけだよ。君だって、エキューのことも私のことも大好きだろ?」
 他の人間がこんなことを言ったら、きっとタニアは社交的に完璧な笑みを浮かべて肯定とも否定ともつかない曖昧な返事を返すだろう。でも今、私の目の前のタニアは子供みたいに笑ってて。
「そうね。私はエキューが好き。あなたも好き」
 なんて言う。酔ってきたのか、少しだけ舌足らずな口調で。
「だろ?」
 この空間が私たち3人に優しくて居心地が良い(1人は居心地良過ぎで寝てるがね)ことが嬉しくて、私も自然と微笑んだ。
 こんな夜は滅多に無いだろうけれど、この先もまたあればいい(そしたら、次こそエキューを寝かせない)。
「あなたはどうなの、ライアン先生?エキューをお好きなのはさーんざん伺いましたけど、私のことも好き?」
 長い睫に囲まれたセピアの瞳が、まっすぐ私を見つめていた。
 タニアは賢い。だから、よくわかっている。
 私たち3人がお互いに向ける感情の種類が異なっていて、誰も何も脅かされずに一緒にいられることを。だからずっと、好きでいていいんだと知ってる。そんな関係は貴重で得難いものだから大切にしなくちゃと、大切な家族と別れてしまった彼女はそう思っている。
 私とエキューは、彼女のその願いを守りたい。
「大好きだよ、私のタニア。この世に数多いる女性の中で、君とエキューだけは特別だよ。生涯、ね」
 だから、照れもせず告げる。大切なタニアが寂しい時に思い出して、ちょっとでも寂しさを拭い去れるように、ちゃんと言葉にして告げる。
「情熱的ね、ライアン。いつもそうやってエキューを口説いてるの?」
 あんまり真面目に私が言ったから(私も酔っているのかもしれないな)、タニアは少し照れた様子で、自分の髪を食べそうになってるエキューの口元から髪を除けてやりながら、俯く。
 ひどく幸せそうな顔で。
「そうだよ。なのにこの動物はなかなか応えてくれない」
 癖があるが切れがいい蒸留酒をぐいっと呷って、私はクッションに埋もれた。そして、タニアに手を伸ばす。
「バカなエキュー。エキューだってライアンのこと大好きなくせにね」
 そしたら、俯いたままタニアはその手を握った。手入れを施された美しい手。細い指。この国という重責を独りで背負う、この華奢な手。
「そうだよ、バカな奴」
 私は手を握り返す。伝わればいい。
 その膝の上で寝こけてるバカと私は君の味方で、君が重荷に耐え切れなくなったら必ず助ける。だから、君は独りじゃない。
 そんな気持ちを篭めて強く手を握った。
「・・・2人とも、大好き」
 震える声と共に落ちた涙が、ぐうぐう寝こけるエキューの額を濡らした。



 泣いてもいいよ。
 でも、寂しがらないで。

 数年前の今日、君は父親を亡くしたけれど、でも、私たちはここにいるから。
 君を、大好きだから。





 優しくて暖かいまま、夜は更けていく。


【おわり】
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