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戦場のメリークリスマス

 鋼の錬金術師。ロイアイ。クリスマス。

 
 「メリークリスマス!」
 高らかにそう言って、グラスをぶつけて乾杯し中の透明な液体を飲み干す。飲み干した後の満足そうな顔までしてみせる。
 貴方は、無駄なところが凝り性だ。
 私が呆れを通り越してもはや感心しながら見ていると、その視線に気づいた貴方が視線で促すから、私もグラスの中の液体を飲み干した。
 グラスの中の、水を。
 貴方が自宅から持ってきた精緻な切子細工が施されたグラスがいかに美しかろうとも、水はやはり水の味だった。
「欺瞞を感じます・・・・」
 ソファのテーブルの上には、デリバリーのチキンとピザ(食堂に行く案は却下されました)、水の入ったボトルとグラス。ソファの上には軍服の男女。
 もうおわかりかとも思いますが、ココは執務室です。そう、このヒトの仕事の締め切りがギリギリなんです。昨日の段階ならばなんとか定時に上がれそうだったのですが、本日朝に急ぎの書類が届いたんです(絶対に上層部の嫌がらせ)。というわけで、クリスマスデートを泣く泣くキャンセルした貴方は、それでもクリスマスの雰囲気を味わうことを諦めきれず、副官と水(勤務時間中は飲酒厳禁です)で乾杯しているわけです。
「欺瞞ではないよ。この聖なる日を1番愛しい人と過ごしているのだからね。大事なのは形ではない。実質だ。クリスマスのためだけの急場凌ぎの恋人たちの豪華ディナーなんかより、水で乾杯する私たちの方がずっと本質に叶っている」
 私の手を取ってまっすぐに見つめ、そう言ってくる貴方。その声は真剣で、眼差しは真摯で、指は熱い。だから・・・・・・
「そんなに悔しいんですね」
 イベントが大好きな貴方の悔しさが如実に伝わってきた。ああもう、子供じゃないんだから。
「うん。悔しい」
 私に事実を指摘されて、しょぼんとうなだれる姿が情けなくも可哀想だったので、せっかくのクリスマスだし少しだけ甘くしてあげようと思って、子供みたいなヒトの黒髪を撫でる。
 「締め切りをクリアしたら、予約していたレストランに食べに行きましょう」
私の方が年下なのに母親みたいな気持ちになって、髪を撫でながら呟く。そうしたら、やっと機嫌を直してくれたみたいで、顔を上げてくれた。
 手のかかるヒト。うっとおしくて、可愛らしいヒト。
「では、今宵は、聖者の生誕を祝して、このささやかな晩餐を楽しもう。で、ついでに来年に持ち越すつもりだった旧市街地の再開発計画を仕上げて、企業家に根回しもして、今年中に認可の判を押して来年度の公共事業に盛り込めと言って、お偉いさんたちをキリキリさせてやろう。私からクリスマスを奪ったのだ。奴らのニューイヤー休暇なぞ亡き者にしてやる。手伝ってくれるね、中尉?」
 公私混同も甚だしい発言が子供みたいで、私は少し頬が緩んだ。
 どうしようもないヒト。
「何を今更」
 貴方のそのどうしようもなさにやられている私は、もっとどうしようもない。
 唇が、聖夜に相応しい笑みの形になった。

 【END】 
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