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高砂や・参

 りくつらss。
 鴆様、四国編のリクつらを語るの巻。

 奥座敷の卓上に並ぶは、季節感の溢れる品々。蟹の活け造りに、焼き牡蠣、鯛のかぶら蒸しに、ふきのとうの天ぷら、うどの合え物に、ふろふき大根。酒は、純米大吟醸のぬる燗。
 いかにも美味そうなのに、一向に箸は進まない。
 鴆と良太猫は、すっかり話に夢中だ。

「そうさなぁ、何から話すか。じゃあ、リクオと側近が盃を交わした時の話から行くか」
「あぁ。四国の奴らとの出入りの前、でしたっけ」
「おぉ、よく知ってるな。それだ、それ。その時に盃を交わしたのは、青田坊、黒田坊、首無、雪女、河童の順だ。リクオは最初昼の姿だったが、途中で夜の姿に変わったんだ。まぁ、昼でも夜でも、リクオはリクオだ。いつだって、おんなじ魂で、同じ心だ。だけど、あれだ、普通の奴でも、仕事場と家ん中とか、酔う前と酔った後とかで、言うことや態度がすこぅし違ってたりすんだろう?リクオは、その降り幅がちょいと大きい」
「へぇ・・・」
 良太猫はリクオに恩があるし、リクオも化猫屋を贔屓にしていて、ちょくちょく通ってきてくれる。だが、良太猫は、鴆ほど親しいわけではない。だから、夜姿の麗容には惚れ惚れと感心すること頻りだが、その分、人の子の稚さが残る昼姿を前にすると少し扱いに困るというのが、本音だ。仰ぎ見る我らが大将として接するべきか、庇護の対象と思うべきか、どちらが正しいのかわからなくなるのだ。
 だが、鴆にとっては、昼夜の差異はさほど大したことではないらしい。それは、リクオをよく見、よく知り、理解したが故だろう。
「昼姿のリクオは、己を選んでくれた下僕に対して、そうだな、誠実に、真心を差し出して盃を干したさ。そうさ、それがあいつの真だとも。だが、雪女との盃事の最中に夜姿に変化したんで、そこにちぃっと色がついた。想像してみろ、良太猫。動乱の予感に揺れる本家、その奥に一か所だけ静謐な一室があって、威儀を正したリクオと側近共が並んでる。天には月、地には桜。新雪のように可憐な雪女が、忠義と覚悟と思慕との全てを捧げて、今まさに盃に口をつけんとした。人間より永いこの先の妖怪の生を、未来永劫を誓う盃だ。その盃は重かろうよ、だが、これこそが雪女の真の望みだったんだから、どんなに嬉しく誇らしかろうなぁ。と、その盃に悪戯な花びらが舞い降りて、その刹那、リクオが夜姿に変化する。驚いて目を丸くする雪女に、リクオの奴、あの三国一の男ぶりでな、ずぃっと膝を詰め寄ってよぉ。雪女が盃を干すや否や、黄金螺旋をしかと見つめて、あの低い声で女の真名を呼んだわけだ。・・・・・口説いてるだろ、コレ。それまでの奴ら相手と、空気の色が全然違ぇよ。この後は河童の番だったんだが、あのマイペースな河童もさすがに居心地悪そうにしてたぜ」
 素直に想像してみると、出来過ぎてて芝居の一幕のような図が良太猫の脳裏に描かれた。
 確かに、これが芝居だったならば、色男役の色香で女性客がため息をつくシーンだろう。
「・・・・・・まぁ、口説いてやすねぇ。それは。だけど、総大将から三代、あの方々は素の言動が既に口説いてるっていうか」
 己の畏で百鬼を魅せねば、百鬼夜行の主は務まらない。力で圧するのではなく、心を絡め取ってこそ主たり得る。
 魑魅魍魎の主たるぬらりひょん三代は、その方面において天与の才があった。当人が特に意図していない時でも、この罪深いスキルは発動されている。この化猫屋でも、リクオが訪れる度に、誰が給仕に侍るかで一悶着あるのだ。
 鴆も、その点は認めた。素直にこくりと頷く。 
「そうだな。あいつは、特に夜は、いつでも誰でもそんなんだしな。でも、雪女に対しては、たぶん、他とちょいと違うんだろうよ。今話した盃事の後で、四国の連中と戦った時とかもよぉ、いろいろあったさ。いやな、この時オレは、情けねぇことに後ろに下がって遠眼鏡で見てたんだがな」
 威勢も覚悟も人一倍だが生まれつきの問題で身体が伴わぬ己を悔しがって、鴆は皮肉気に片頬を歪めた。
「いや、鴆の旦那が治療してくれると思うからこそ、みんな思い切って戦っていられんだから、そりゃあ後ろにいてもらわねぇと困りますよ」
「ありがとよ。でだ、その時な、お前も聞いたかもしれんが、リクオは、己の畏でもって、邪魔されずに敵方の大将の前にたどり着いてよ、もはや一騎打ち、となったところで主の命を受けた夜雀の攻撃を受けた。リクオの視界が閉ざされ畏が途切れて、あわや魔王の小槌で一刀両断、と振りかざされた刃を受け止めたのは、誰あろう雪女だった。あの雪女、小柄で華奢いくせに心根は立派な任侠者だからよ、きりりと襷掛けにして最前線に躍り出て、薙刀を構えて、見事にリクオを守ったのよ」
「へぇ~、やりますねぇ」
 冴え凍る美貌を誇った母雪麗とは違い、いつでも一生懸命でちょっとドジなつららは、愛らしく可愛らしい。淑やかな中にも愛嬌があって、男の庇護欲をそそるタイプだ。
 そのつららが乱戦の中で凛々しく主を守る姿は、さぞかし健気だったろう。可愛いタイプが好きな男ならば、ぐっとくるに違いない。
「おぅよ。あの女はやるぜ。こん時もな、一人敵陣に乗り込んだ主の無謀を叱ってよぉ。良太猫、コレ、重要なとこな。リクオの奴は真面目だから、下僕を率いるには自分が身体を張らねば、て気負い過ぎるとこがあって、オレも心配してたんだ。だから、雪女がちゃんとリクオを叱って、それでリクオが雪女に背を預けたってのは、イイことなんだよ。でな、雪女が夜雀を討ち倒して暗闇の呪いを解いて、リクオがあの化け狸を倒したわけだ。そう、だから、つららは普段がああなんで見くびられがちだが、主を諌めることも出来るし、ちゃーんと戦える、有事の際に役に立てる女なんだよ」
「ほほぅ」
 良太猫は、旧鼠組との一戦を思い出した。あの時も、つららは、女とみて侮った連中をその氷の息吹で凍らせていた。牙を爪を剥き出しにして襲いかかる敵に対して、全く怯む様子は見せなかった。なるほど、かわいいイメージと普段の言動で忘れそうになるが、彼女は案外武闘派だ。
 そう、確かに、戦場で垣間見たあの黄金螺旋の瞳は、常の柔らかさを拭い去って、母に似て氷雪の如く冴え凍り、畏ろしいほど美しかったのだ。
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