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高砂や・弐

 リクつらss。
 壱からどうそ~。


 夜毎お祭り騒ぎが繰り広げられる化猫屋の奥座敷は、今宵、店主良太猫と鴆の親分が貸し切りで、何やら密談のご様子。
 
「ほほーっ、おもしれぇ賭けだなこりゃ」
「いやぁ、公平且つ楽しめる賭けにしようと思いましてね。この良太猫、無い知恵を絞りだしたって寸法でさぁ」
 良太猫が語った賭けの概要は、以下のようなものであった。
 一、賭けには、人間・半妖・妖怪・土地神という四つの枠があり、枠に賭けることが出来る。
 一、枠ではなく名指しで賭けることも可能。もちろん、名指しで賭けて当たった場合の方が、枠に賭けた時より配当が大きい。
 一、何度でも何口でも賭けることが出来るが、一度賭けた分を引き上げることはできない。
 一、リクオ本人や周りに、嫁取りに関して探りを入れるのは構わないが、リクオ本人には賭けの所在を明かさぬこと。
 一、リクオの嫁が決まったら、賭け金総額の一割を、祝いとして嫁に献上すること。
「うちの組の者はみんな賭けてくれましたぜ。鴆の旦那は、どうなさいます?」
「良太猫、お前はどこに賭けたんだ?」
「いやいや、いくら鴆の旦那といえど、こればっかりは・・・・」
 いかさまも博打の技だが、この賭けは、本人も言った通り公平に営まれている。胴元である良太猫当人も賭けることは出来るが、全ての賭け金の仔細は、立会人である算盤坊に報告することになっているのだ。いかな良太猫とて、出入りでは一切役に立たないのに幹部の座に上り詰めたほど数字に強い算盤坊の目を、誤魔化すことはできない。
 だからこその、公正な賭け。だからこその面白さ。
 お愛想に細めた良太猫の眼の奥の光は、だがしかし剣呑だった。
 けれど、鴆は、あっさりと笑い飛ばす。
「ちげぇよ。オレはな、当たりを知ってんだよ。だから、お前にも儲けさせてやろうと思ってな」
「当たりって、えっ、三代目は結納でも済ませたんですかぃ!?オレらが何度探りを入れても、のらりくらりとかわしていなさるのに!?」
 この界隈の飲食店や夜の店を取り仕切る良太猫は、本家直属の諜報部隊たる鴉天狗には及ばぬものの、その次に早耳であると自負している。関東の妖怪のことで良太猫が知らぬ情報は少ないはずだが、何せ鴆は、ただ一人リクオと五分の盃を交わした義兄弟だ。聞いた話によると、鴆は、病弱の身をおして京都遠征に参加し、信頼がなければできぬという三代目の新必殺技に協力したとか。
 ならば、良太猫がまだ知らないリクオの艶聞どころか、リクオ当人の口から出た確約などを知っているやも、と良太猫はずずぃっと身を乗り出した。
「いやいや、結納はさすがに先の話だし、リクオからはそういう話題が出たことはねぇよ。誰かが聞いても、すーぐかわしやがる。ぬらりくらりと、な。というか、オレの見たとこ、あいつが自覚してるかどうかも怪しい。けどな、確定はしてんだよ。もう、すでにな」
 意味ありげに鴆が微笑んだので、良太猫は興奮して耳をぴくぴく動かす。
「オレは、名指しで、人間の娘に賭けましたぜ!リクオ様の幼馴染の、家長カナって娘です!旦那はご存じですか?」
「もちろん知ってらぁ。今も、学校の何とか言う団に一緒に入ってるっていう、なかなかカワイイ娘だろう?で、お前はなんでその娘にしたんだ?」
「鴆の旦那だから話しやすが、実はね、リクオ様が、その娘を連れてうちの店に来たことがあるんですよ。娘の十三の祝いだとかで、お一人で連れてこられてね。その時の娘の様子がねぇ、ありゃあ、どう見てもリクオ様にホの字。リクオ様だって、わざわざ人間をうちに連れて来なさるぐらいなんだから、こりゃあ、奴良組の将来の奥方として、妖怪に慣れさせる意味があるんじゃねぇか、と」
 鼻息を荒くして、良太猫は自分の推測を語った。良太猫は、この推測にかなりの自信を持っている。だからこそ、こんな賭けを始めたのだ。
 しかし、鴆は、落ち着き払って盃を干した後、首を振る。
「なるほど、な。だが、そりゃあ外れだ。その娘がリクオに惚れてんのは確かかもしれねぇが、リクオが、てのはねぇよ。京都までついてったオレが保障するぜ。悪ぃこた言わねえ、良太猫、すでに賭けちまった金はご祝儀にくれてやったもんだと諦めて、オレと同じとこに賭けな」
「・・・・だったら、鴆の旦那はどこに賭けるおつもりで?」
 良太猫は、むぅと眉を顰めて不服顔。彼は、これでも、繁華街を仕切る身だ。艶聞に対する嗅覚は鈍くないはず。その上、賭け事に熱い良太猫は、昼のリクオは人間の少年であることを考慮して、密かに、リクオと同年代の少年が好みそうな恋愛漫画だの何だのを、研究の為に何冊も読破していた。
 『幼馴染の美少女 家長カナ』というのは、そうまでして纏めた推測なのだった。
 しかし、しかめっ面の良太猫と対照的にご機嫌の鴆は、あっさりと良太猫の推測を否定する。
「本家の雪女、つららにオレの小遣い1年分全額だ」
 言って、懐から小切手を取りだす。小切手に書き込まれた数字を見た良太猫が、鴆の本気を理解して、目をまんまるにして驚いた。
「全額!?そりゃちょっと豪気じゃねぇですかい?」
 薬師一派で最も博識で有能な薬師は、組長である鴆だ。だからこそ、病弱の身で組を纏めていられるのだ。つまり、鴆は、一派の中で一番の稼ぎ頭ということ。そんな彼の一年分の給料は、遊びにぽんと支払う額ではなかった。
「何言ってやがる。ホントなら、うちの組のシノギを全部注ぎ込んでもいいぐらいだぜ。それを、オレが一人勝ちし過ぎじゃまずいだろうから、これぐらいにしといてやろうって話だ」
「いやいや旦那、落ち着いてくだせぇ。確かにね、本家の雪女は人気ですよ。でもね、言っちゃあなんだが、雪麗姐さんの例もありやす。あんまり思い込むのは・・・・・」
 初代総大将に心底惚れて、側近中の側近として長く仕えた先代の雪女、雪麗。強く美しく気風のいい女怪だったが、総大将が愛したのは人間の姫だった。
 夢幻を司る妖、ぬらりひょんたち。彼らは、老若男女を問わず、魅了して心を虜にしていく罪な色男だ。三代目を継いだリクオも、人間としてはまだまだ子供の歳だというのに、夜姿の艶麗なことといったら。
 そんな色男の恋愛とは、相手が惚れているかどうかより、『リクオが』惚れているかどうかが焦点となる。
「バッカ野郎!思い込みどころか、お天道様が東から昇るのと同じぐれぇの道理だぜ、こいつぁ」
 熱くなった鴆が、卓をバンと叩く。だが、良太猫も引かない。ぐっと眉を顰めて、鴆をじぃっと見つめる。
「・・・・旦那、そこまでおっしゃるなら、その根拠を教えてくださるんでしょうね?」
「おぉよ。耳かっぽじってよく聞きやがれ」

 そして、鴆は語った。



【つづく】
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