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 シャーマンキング。アンナとたまお(CPは葉アンナ)。
 ふう。
・・・・電話、遅いなあ。
「電話、遅いね」
 突然、私が考えていたのと同じことをまん太様が言ったから、私は驚いて、座り心地のいいソファから落っこちそうになってしまいました。


 今は真夜中。窓の外は星が輝いています。
 ここは、葉様のお友達、小山田まん太様のお家です。
 ものすごい豪邸で、私はさっきから、何かを汚したり壊したりしないようにびくびくしています。
 数時間前、アンナ様がここを訪れたのは、まん太様に葉様のいるアメリカに連れて行ってもらうためでした。同時に、葉様に会いたがっているに違いないまん太様をアメリカに連れて行くためでもありました。
 アンナ様の話を聞いたまん太様は、すぐにお父様に国際電話をして、ヘリの手配を頼んでくださいました。
 別室で待っていたのでよくわからないのですが、まん太様とお父様の間には、何か軋轢があったようです。私は心配でしたが、アンナ様が落ち着いてお茶を飲んでらっしゃったので、手癖の悪いポンチとコンチを叱りながら、部屋で待っていました。
 そうして、話し合いが終わり、後はヘリを手配してくれるかどうかの返事を貰えばいいというところになって、お父様に来客があったらしく、私たちは二人でその返事の電話を今か今かと待っているのでした。
 騒ぎ疲れたポンチとコンチは寝ています。


「は、はい。どうしたんでしょうか?あ、あ、でも、きっとまん太様のお父様もお忙しくて、それで・・・」
「うん。わかってる。大丈夫。きっと、お父様はヘリを出してくれるよ」
 私の失言を気にせず、まん太様は落ち着いた笑みを浮かべました。
 葉様のために出雲まで来ただけのことはあります。まん太様は、いざと言う時にはやる人です。  
「そ、そうですよね」
「アンナさんも、そう思ってくれてるみたいだしね」
 アンナ様は、「先行ってるわ」と言って、さっさとヘリポートに行ってしまわれました。まん太様のお父様がヘリを出してくださると、少しも疑っていらっしゃらないようでした。
 さすがアンナ様です。すぐ心が揺れてしまう私なんかとは違います。
「アンナさんも、動じない人だよね。葉くんと似たもの夫婦だなあ・・・・・あ」
 まん太様の顔に、(マズイこと言ってしまった)と書いてあります。
 私が、幼い頃から葉様に憧れつづけてきたことを知っているからです。
「いえ、気にしないでください。私、アンナ様にかなわないことは、ずっと前からわかってましたし」
「アンナさんは確かにすごい人だけど、そんな風に言わなくても、君だって・・・・」
「いいんです。それに、私・・・・・」
 

 そして、私は昔の話をしました。
 アンナ様と出会った時の話を。






 私がアンナ様に初めてお会いしたのは、5歳のお盆の時です。
 真夏の、とても暑い日でした。
 アンナ様は、前の年のお正月にも麻倉家にいらっしゃってましたが、その時私は幹久様とお山に行っていたので、留守でした。
 葉様は、その日は朝から、自分の足に躓いて転んでみるなど、珍しく落ち着かない様子で、アンナ様がいらっしゃるのを待っていました。
 私は、こんな葉様を見るのは初めてでした。
『葉様、今日来られるのはどなたなんですか?』
 気になって仕方が無いので、私はスケッチブックで話し掛けました。
「うぇっへッへ。オイラのばあちゃんとアンナだよ。ばあちゃんはイタコで、アンナはその弟子だ」
 葉様は、機嫌がよさそうでした。
『どんな方なんですか?』
「二人とも、キッツイぞ~。じいちゃんですら、ばあちゃんにはかなわんし、オイラはアンナにいっつも泣かされちまうしな。ビンタ喰らってさ」
 葉様のおじい様の葉明様は、日本のシャーマンの宗主である麻倉家の当主です。その方よりも強いおばあ様、そして、葉様を泣かせると言うアンナ様・・・・・・
『も、もしかして、ものすごく怖い方なんですか?』
 私もビンタされてしまうのかしら。ど、どうしよう。
「まあ、怖いこた怖いけど、・・・・」
 そ、そんな~。 
 その時の葉様が少し顔を赤くしてらっしゃったことに、幼い私は気がつきませんでした。
 



「久しぶりね、葉」
「おお。よく来たな、アンナ」
 昼近くになって、アンナ様がいらっしゃいました。アンナ様は、葉様と同じ歳だそうですが、とても落ち着いた大人っぽい雰囲気の方でした。
 黒のワンピースに、紅のバンダナ、数珠を首にかけて、暑さなんか無縁のように、背筋を伸ばして涼やかに立ってらっしゃいました。
「葉、その子は誰?」
 怯えて柱の影から見ていた私に、アンナ様は視線を向けました。
 まっすぐな、強い力を持った眼差しでした。
 私はびくっとしました。
「おお、とうちゃんの弟子のたまおだよ。オイラたちより2コ下だ。ほらたまお、さっき話してたアンナ」
 私は、すっかり怯えてしまって挨拶が出来ませんでした。
「・・・・・葉、どんな風に話したの?」
 アンナ様が、唇を笑みの形にして、葉様に聞きました。
「んん、いや、オイラはいっつも泣かされてるって、ビンタ喰らってるって言った」
 真紅の華が綻ぶようなアンナ様の笑みに見惚れていた葉様は、素直に答えてしまいました。
 バッチーン!
 葉様の頬に、見事なビンタが決まりました。
「いってえ!何すんだよ」
「お黙り!人をなんて紹介の仕方するのよ!」
「オ、オイラ嘘ついてねえぞ」
 バッチーン!
 もう一発、決まりました。
真紅の華には棘があったようです。葉様は、涙目です。
 私は、全速力で、その部屋を逃げ出しました。
 や、やっぱりアンナ様って、葉様のおっしゃったとおり、怖い方なんだわ。 






 ここ、どこかしら・・・・?
 その夜、夜中に目が覚めて、トイレに行った私は、見事に迷っていました。
 麻倉の家は、本当に大きくて、その当時の私は、まだ、自分がよく使う場所くらいしかわからなかったのに、あまりにも真っ暗な廊下が怖くて、縁側を伝って部屋に帰ろうとしたことが、原因でした。
 おまけに、そうまでして縁側に出たのに、新月で、少しも明るくありませんでした。
 ただ、星だけが輝いています。街よりも山寄りにあるこの麻倉の家からは、空の星だけでなく、地上の星も、ずいぶん遠くに思えました。
 人口密度が低く、早寝の麻倉の家は、一つも明かりが灯っておらず、真っ暗です。灯りを点けることはできましたが、それで誰かを起こしたら、叱られてしまうでしょう。
 けれど、真っ暗な廊下も庭も、本当に怖いのです。この麻倉の家に、許可無き霊が入り込めるわけがないことを知っていても、もし霊がいたら、それは味方だとわかっていても、5歳の子供の私は、真っ暗闇が怖くて仕方ありませんでした。
 どうしよう・・・・・・・
 心細くなった私は前に進むことも出来ず、蹲って泣き出してしまいました。



「誰かいるの?」
 不意に、暗闇の中から声が聞こえました。
 怯えた私は、とっさに隠れようとしましたが、その前に、目の前の部屋に明かりが灯りました。
 するすると障子が開いて、現れたのは・・・・・・アンナ様でした。
「たまお、よね。こんな時間にどうしたの?」
 下を向いてしゃくりあげている私に、アンナ様は手を伸ばしました。
 殴られる!?
 私は身を竦ませました。
「何かあったの?」
 アンナ様が伸ばされた手は、私の頭を優しく撫でていました。
 夜とはいえ蒸し暑い夏の最中、アンナ様の少し冷たい手で撫でられるのは、とても気持ちがよくて、わたしは顔を上げました。
「とにかく部屋に入りなさい」
 アンナ様は、私の手を取って、立たせてくださいました。



 アンナ様のお部屋は、いつもほどほどに散らかっている葉様のお部屋に比べると、ずいぶん片付いていました。布団の枕元には、明日着るらしい服が畳んで置いてあります。
 どうしたらよいのかわからず、突っ立っていた私の頬を、アンナ様は真っ白なハンカチで優しく拭ってくださいました。
 さっきからずっと黙ったままでいる私に、苛立ったりなさいませんでした。
 私は、勝手に怯えて今日一日アンナ様を避けていたのに。
 人と話すことが苦手な私にとって、今日初めて会ったアンナ様に話し掛けるのはとても難しいことだけど、何か、言わなくてはいけないと思いました。
 どうしよう、何を言ったら良いの?
「別に無理して話さなくてもいいわよ。たまおは恥ずかしがりやさんだって、葉が言ってたもの。どうせ、真っ暗だから部屋に帰れなくなったんでしょ。あたしもあんたの部屋は知らないから、今夜はこの部屋で一緒に寝たらいいわ」
 利発なアンナ様は、私が言わんとすることを全て察していらっしゃいました。 
 すごい、どうしてわかったのかしら?
「何よ。イヤなの?」
 察しの良いアンナ様に驚いていた私の顔をアンナ様が覗き込まれたので、私は慌てて首を振りました。
「じゃあ、一緒に寝ましょう」
 アンナ様は、にこりと微笑まれました。



「電気消すわね」
 私を布団に入れて、アンナ様が電気を消そうとなさるので、私は慌てました。
 また真っ暗になるのが怖かったのです。
「大丈夫よ。見えなくっても、あたしがいるわ。手を繋いであげる」
 そうおっしゃったアンナ様の声が本当に優しかったので、私は安心してこくんと頷きました。
 アンナ様は、電気を消して、私の隣に横になると、手を繋いでくださいました。
 少し冷たいその手は、優しくて、柔らかくって、私はお姉さんができたような気がして、嬉しくなりました。



「たまお、暗闇は必要なものなのよ」
 真っ暗になってから、アンナ様がおっしゃいました。
 小さな声でしたが、同じ枕に頭を乗せている私には、はっきり聞こえました。
 でも、私は真っ暗なのは怖いです。アンナ様。
 本当に真っ暗で私の顔が見えているはずが無いのに、アンナ様は私の考えてることがわかるみたいでした。
「確かに、何も見えないと不安になるけど、暗闇の中でも、音は聞こえるし、気配だって感じることができるわ」
 それでも、私はやっぱり怖いです。夜なんか無ければいいのに。
「じゃあ、こう考えれば良いわ。夜はお日様の休憩時間なの。ずっと働いてばかりいたら、お日様も疲れてしまうでしょう。だから、お休みする時間が必要なのよ。でもね、お日様はいなくなったわけじゃないわ。休憩が済んだら、また、あたしたちを照らしてくれるのよ」
 本当に?
「ええ。必ず」
 そう言ってくださったアンナ様のおかげで、私の中の暗闇を怖がる気持ちはすっかりなくなりました。
 ただ、きっと華のように微笑んでいるに違いないアンナ様の顔を見ることが出来ないので、やはり暗闇を好きにはなれなかったのですけど。






「アンナー!朝だぞー!」
 ばたばたという足音と共に、障子ががらっと開きました。眩しい光が、部屋に差し込みました。
「・・・・・煩いわよ、葉。何でお寝坊のあんたが起こしに来るのよ」
 アンナ様は顔を顰めたまま振り返りました。
障子を開けたのは、葉様でした。
 珍しいと思いました。葉様は寝るのが大好きで、いつもなかなか起きてこられないのに。
「うぇっへッへ。なんか早く目が覚めちまってよー。アンナを起こしてやろうと思ったんだ。朝飯の前に裏山に行こう、アンナ」
「ったく、あんたって人は」
 アンナ様は、気だるげに髪をかきあげて、身体を起こしました。
「あれ?たまお?何でアンナの布団にいんだ?」
 やっと私に気がついた葉様は、驚いた顔をしました。
「夜中に迷子になってたのよ」
 いくら広いとはいえ、家の中で迷うなんて間抜けな私。
 アンナ様は優しくしてくださったけど、葉様には、やっぱり呆れられてしまうでしょうね。
「ああ、広いからな~この家。オイラもやったことある」
 え?
「そうよね。あんたはそのまま廊下で寝ちゃって、風邪ひいたのよね」
「たまおはアンナの布団にいれてもらえて良かったな」
 葉様は、そう言って笑ってくださいました。
 自分の間抜けさに落ち込んでた私の心を明るく照らす、笑顔でした。
「でもよう、アンナ、お前オイラとはもう一緒に寝てくれんくせに、たまおならいいのな」
 葉様は、少し拗ねていらっしゃるみたいでした。
「何言ってんの、あんたは。たまおは女の子でしょ。『男女七歳にして、席を同じくせず』よ」 
 呆れた口調でなにやら難しいことをおっしゃったアンナ様は、いつのまにか部屋に入っていた葉様を、障子の外に押し出しました。
「お、おい、何すんだよアンナ」
「それはこっちの台詞。裏山に行くんでしょう。着替えるのよ。あんたはそこで大人しく待ってなさい」
「え、ちょっと、アンナ~」
 葉様の抗議なんか物ともせず、アンナ様はぴしゃりと障子を閉めてしまわれました。
「全く、葉のやつ」
 あ、あの、アンナ様、私はどうすればいいのですか?
「たまお、あたしの服貸してあげるわ。着れない大きさじゃないでしょ」
 アンナ様は、てきぱきと箪笥から白いワンピースを出してくださいました。
 あ、あの・・・・・・・
 まごまごしてる私の横で、アンナ様は寝巻きの浴衣を着替え始めました。
「あんた、夜中に話したこと覚えてる?」
 ええと、はい、覚えてます。
 私は頷きました。
「あたしたちのお日様の休憩時間は終わったみたいよ。さっさと用意しないとふてくされちゃうわ、あいつ」
 障子の方を見て、アンナ様が笑顔になりました。
 お日様に照らされて、咲く、華みたいな笑顔。
 とっても綺麗な笑顔だから、アンナ様が葉様のことをどう思ってるか、私にもよくわかりました。
「何してんのよ、たまお。一緒に遊びに行くでしょう?」
 アンナ様が、その笑顔をこっちに向けてくださったので、
「はい!」
 私も笑顔になりました。






「ふーん。アンナさんてそんな昔から、葉くんのこと好きだったんだ」
「そうなんですよ」
 そして葉様も、おそらく、そんな昔からアンナ様のことが好きだったんです。ただ、自覚はしてなかったようですけど。
 今の私には、ようくわかります。
「だから、私、お二人共に幸せになって欲しいんです」
「そうだね。ぼくもそう思う」
 まん太様も、私の言葉に頷いてくれました。
 でも、私、知ってるんですけど。心配する必要なんか無いって。
 だって、葉様がアンナ様を不幸にするはずがないし、アンナ様が葉様が不幸になることを赦すはずもありません。
 なので、本当は私がアメリカまで着いて行く理由はありません。でもまあ、私だって葉様に会いたいですし、それに、滅多に見ることが出来ないアンナ様の極上の笑顔も見たいですから。
 だから、早く電話が鳴ればいいのに。
 リリリリリーン!
「!」
 わたしがそう思ったまさにその時に、電話が鳴りました。
 まん太様の顔が輝きます。
「アンナ様に、知らせてきますね!」
 受話器を手に取るまん太様を見もせずに、私はヘリポートまで駆け出しました。
 結果なんて、大丈夫に決まってます。私たちが信じてるんですから。
 さあ、一刻も早くアンナ様に知らせなくちゃ!



 

窓の外は、夜空。
 でも、明けない朝なんてないわ。
 お日様の休憩時間はもうすぐ終わり。
そして、私たちはお日様に会いに行くんです!





そして、ポンチとコンチのことをすっかり忘れていた私は、数分後、部屋に戻って来た時、粉々になった花瓶を見て涙するのでした・・・・・・・
   

END
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