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音量最大

 シャーマンキング。葉アンナ。

 相手の心の内を知ることが出来たならどれほどにうまくいくだろうかと、誰しもが一度は思う。
 けれど、それは常人には叶わぬ事。
 故に拙者は、幽(かそ)けき調べにも似た人の心の呟きを聞き取るべく耳を澄ます行為に、価値を見出す。
・・・・・・・・・つもりだったのでござる。つい先程までは。



 それはよくある光景。
 ロードワークに出かける葉殿と、居間でてれびじょん(これが正式名称だとまん太殿が教えてくれたでござる)を見ているアンナ殿。たまお殿は夕食の買出しで、まん太殿は塾。
 本来ならば葉殿の従者である拙者も修業に憑いて行くべきでござったが、葉殿がアンナ殿を家に一人で残していくことを好んでいないと知っているので、拙者はあえて家に残ったでござる。だから、お昼の大江戸恋愛ドラマ『ユルユル侍』が見たかったからというわけではござらんよ(まあ、たまたまアンナ殿が見ているので一緒に見てはいたでござるが)。
 主役のユルユル侍が、拉致されたおしゃまな許婚を救うべく、悪代官(ユルユル侍の生き別れの双子の兄)の元に乗り込んでいこうとして、アンナ殿と拙者がちゃぶ台から身を乗り出したところで、葉殿は帰って来たのでござる。
 「ただいま」の声と玄関を空ける音はちゃんと聞こえたけれど、悪代官がヒロインの帯に手をかけているのでアンナ殿も拙者も振り向くことが出来なかったでござる。
「何だ、いたんか。返事くらいしろよな。なあアンナ・・・・・・」
「うるさい。今いいところなのよ」
 振り向きもせずに言い放ったアンナ殿の台詞が酷いことは客観的に理解できたが、実は同じ気持ちだった拙者はアンナ殿を諌めることは出来なかったでござるよ。
 ぴしゃりとやり込められた葉殿は黙って、アンナ殿の向かいに腰かけたでござる。
 流石に少し気になって拙者が視線を送ると、最初不満げな顔をしてアンナ殿を見つめていた葉殿は、だんだんと表情をユルめていったでござるよ。
なんと申すか、こう、『でれでれ』といった感じに(主君に対してこの表現はどうかとも思うけれど、他に言いようもないほど)。
 そうしたら突然、アンナ殿が振り返って葉殿の頬を思いっきり叩いたので、拙者は驚いて部屋の隅に逃げたでござる。
 な、何が起こったのでござるか!?葉殿はただアンナ殿を見ていただけでござるのに?
「何考えてんのよあんたは!」
「うえっへっへっへ~、イイこと♪オイラ健全な男子なんだから仕方ねえだろ。怒んなよ、こんなんノーマルじゃねえか。こういうのとかああいうのとかを想像してんなら、怒られても仕方ねえ気もすっけどよう」 
 葉殿は、殴られたことなどちっとも堪えていない様子で、やけに機嫌良さそうにアンナ殿に笑いかけた。
 顔を真っ赤にしたアンナ殿は、全く怯まない葉殿をさらに叩こうと腕を後ろに引いたでござる。
「結局想像してんじゃないの、バカ!」
 危うし葉殿!
けれどアンナ殿はその腕を振り上げることはなかったのでござる。なぜなら、臆せず距離を詰めた葉殿が、アンナ殿のもう片方の腕を取って、手首の内側に口づけたからでござる。
「じゃあ、想像じゃねえようにしような」
 そう言って捕まえた手首を引いてアンナ殿を抱きしめた葉殿と、部屋の隅にいた拙者は、アンナ殿の肩越しに目が合って・・・・・・・・・・
拙者は超特急で部屋を出て行ったでござる。後ろから聞こえる、「やっ!もうっこんな明るい内から!」と言いつつも微妙な甘さを含んだ声や、「明るいとよく見えてイイよな~」という上機嫌な声も、聞かなかったことにして。
 今しがたユルユル侍が屋敷に乗り込んでいったので、てれびじょんが今頃拙者の大好きなちゃんばらシーンであるとわかっているから、非常に残念でござる。しかし、どんな言葉よりも雄弁に葉殿の視線が物語っていたので、拙者は居間に戻ることは出来ず、寂しく屋根に座っているのでござる。
 どうも、色々な意味で葉殿の心は音量最大のようでござる。
 ああ、空が青いでござる・・・・・・・・・・・・・・・・




〈終わり〉
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