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サンドリヨン

 鋼の錬金術師、ロイアイ。


 カボチャの馬車に乗り込んだら、イジワルな鼠が「重量オーバーだよ、お嬢さん」なんて言う。
 仕方がないので、ガラスの靴を窓から投げ捨てた。
 ガチャン!
 砕けたガラスを道端に置き去りにして、馬車は王宮へ行く。
 舞踏会の開かれる大広間目指して。



 大理石の床は裸足には冷たい。
 絹の靴下が伝えてくる冷気に怯まず、胸を張って、踊りに夢中になっている男女の隙間を通り抜けていく。
 かかとの高い靴の足音が、カツコツとホールに響く。
 私の足音は、ペタペタ。
 


 急に手を握られて驚いた。
 黒髪の王子様が、私の手を取って手の甲にキスを一つ。
 「お嬢さん、踊ってくださいませんか?」
 「せっかくのお申し出ですが、あいにく、靴がありません」
 断るつもりでそう言って手を振り払おうとしたら、ぐっと腰を抱き寄せられた。
 「なら私は、ステップを間違えても、君に足を踏まれる心配をしなくていいのだね。素晴らしい」
 にこにこ笑った顔の王子様は、私の返答など聞かずに、音楽に合わせてステップを踏み始める。
 どうしようもなくて、私も裸足でステップを踏む。
 アンドゥトロワ。
 アンドゥトロワ。
 今になって、ガラスの靴を投げ捨てたことを残念に思う。
 ガラスのヒールで踏んでやったら、きっとものすごく痛かっただろうに。



 時計塔の時計が、ボーン!ボーン!と鳴り響き、私ははっと我に返る。
 あれから、手を離してくれないこのヒトと何曲も何曲も踊った。ガラスの靴を履いていたなら足が痛くて動けなくなりそうなほど。
 でも、私は裸足。まだ走ることが出来る。
 隙をついて王子様の手を振り解き、私は駆け出した。
 踊る人々をすり抜け、大広間の扉を駆け抜ける。マヌケ面の衛兵が私を見送る。
 長い階段を駆け下りている最中、後ろから王子様の声が聞こえた。
 「君!待ちたまえ!」
 もちろん、振り返ったりしない。さらに加速する。
 「君を妃に迎えよう!栄耀栄華を約束しよう!いくらでも贅沢していいぞ!」
 私は振り向かない。
 「ええいっ何が気に喰わんのだっ!!君は何が欲しいんだっ!?」
 王子様が地団駄を踏んだ気配を感じたので、一度だけ振り向いた。
 そして、彼の問いに対する答えを、唇だけで呟く。
 「えっ!?」
 読み取れなかった王子様が足を止めても、声になんか出さない。ナイショ。
 私は無事、城から逃げ出した。



 御伽噺のマヌケなお姫様と違って、私の仕事は完璧。
 証拠など一切残していない。階段に靴を置き忘れたりしない。
 だから。
 私は、ほどけ難いように固く軍靴の紐を結んだ。



 貴方は私を見つけられないから、私から会いに行く。
 灰を被り泥に塗れ血を浴びた、この姿で。
 軍靴で足を踏まれてもいいならば、もう一度ダンスを申し込んで。



 「そうしたら、あの時の答えを教えてあげる」

 クスクス笑いながら、道端で光るガラスの欠片を踏み砕いた。
 ガチャン!


【Fin】

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