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 「この世界で、貴方だけが私に近い」

 鋼の錬金術師。ロイアイ。
 黒髪黒眼はさして珍しくない。確かに、整ったと言える範疇の顔立ちではあるが、それもそこそこレベル。耳目を引くほどの稀有な美貌などではないし、身長だって決して高くない。
 だから、取り立てて目立つ要素があるわけではないはずなのだけれど、・・・・・・貴方はどんな雑踏の中でも必ず私の注意を惹きつけて止まない(アノ砂に塗れた場所でもそうだった)。
 ほら、今も。




 市内巡察の最中、同行していたフュリー曹長が突然不審な態度を取った。口を「あ」の形に開いて、一箇所を見つめている。その視線を追うと、彼が何を見つけたのかすぐにわかった。
 いつもの青い軍服ではなく、仕立ての良いスーツを纏い、上品なドレスの女性をエスコートしている姿。執務室の机の上で居眠るぐんにゃりだらしない姿勢とは大違いの、威風堂々とした姿勢が、こよなくハマっている。
 そんなモノを見つけてしまった曹長は、憐れにも視線を彷徨わせ口をパクパクさせていたが、私の精神の水面はピクリとも揺らがなかった。だって、何を今更?
「早く行きましょう。遅れるわよ?」
 促すと、叱られた直後の愛犬に似たビクビクした仕草で、曹長は後をついてきた。私は、振り返らずに歩く。
 負け惜しみでも無理でもなく、本当に、あーいうのは見慣れているし感慨を覚えない。体調管理と病気と避妊だけはちゃんとして欲しいと思うけれど(この間の隠し子騒動は本当に大変だった)、ソレ以外は貴方のプライベート。私の関与出来る場所ではない。
 だから、司令部に戻った後、曹長から話を聞いたのだろう少尉たちに妙な気遣いを示されると、かえって居心地が悪かった。
 ゴメンなさいね。私、あなたたちが想定しているような可愛らしい女性じゃなくて。



 上官が非番の1日の仕事を滞りなく済ませ、帰宅して浴びるシャワーは心地良い。髪を拭いながら後を向くと、バスルームの鏡に、背中と秘術と火傷が映っていた。私の肉体と秘密と約束だ。首を捻ったまま、しばし見入る。
 うっとりと、幸せな気分になった。
 約束は鮮明にこの身に刻まれ、月日が経とうとも消えない。生涯残る。私自身の持ち物は、この肉体と命と秘密と約束だけであり、その全てを貴方と共有している。私たちは同じ夢を見て、同じ場所へ行く。もし貴方が逃げたら殺していいとさえ言われた。
 ならば、何を嘆くことがあるの?
「この世界で、貴方だけが私に近い」




 秘密は彼女を孤独にし、約束は彼女を幸福にした。
 呟くその声は哀しげで諦観に満ちていたが、唇は微笑んでいる。


【おしまい】


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