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ゲヘナ

 PAPUWA。ジャンサビ前提で、ジャンと高松。

 『温室』には、『永遠』が在るように見えた。
 空調は完全に制御され、内部の生物の生成と死のサイクルは完璧にコントロールされている。酸素を吸い二酸化炭素を吐く動物は植物を食し、微生物は動物の死骸を分解し、死骸の栄養を吸って植物は二酸化炭素を吸い酸素を吐きながら成長する。水分量は多からず少なからず、土壌は豊か、遺伝子操作された動物も植物もむやみに増殖して生態系を壊したりはしない。内部の温度変化は穏やかで、それでも四季があり、『温室』は、まったくもって、理想郷のように美しかった。
 『外』の世界が壊れつつあるのだから、なおさら。
 『温室』に足を踏み入れた人々は、口々に感動を述べた。曰く、「楽園」「永遠」「神の箱庭」「世界の在るべき姿」、誰もが口を極めて褒め称えた彼の『温室』を酷評したのは、彼と同期の科学者だけだった。
 曰く、「停滞」。
 





 この評を聞いた途端、彼は弾けたように笑い出した。
「高松、やっぱりお前は素晴らしいな。人類の価値を底上げしてる天才様だけあるよ。天才ってのは、凡百の輩とは視界が違うんだな」
「それ自画自賛ですか?私にとっては不本意ですけど、あんた私に匹敵する科学者とか言われてるらしいじゃないですか。『マスタージャンは何でも知っている』と評判ですよ」
「俺は違うよ。俺は人類とはあまり関係無いし。それに、遺伝子の配列も原子の種類と構造も天体の運行も組成も、そーいうこの世界を形作る要素についての知識なら、最初から書き込まれてるだけだし。科学者としては、最近やっと『解釈』を覚えたばっかりのひよっ子だ」
「まあ、知識と知恵は違いますからね」
「うん。だから俺は、お前の知識に、独特の視界に、世界に対する『解釈』に感服しているんだよ。俺は長いこと生きてきたけど、最近になるまで『解釈』なんてしなかった。世界はあるがままなだけで、一部を特別に『分析』したり『意味』づけをしたり、ましてや何かを『願う』『創る』なんて発想はなかった。『時間』について考えたこともなかったよ。ああ、人間は進化し続けて常に新しいなあ。高松、お前は特に新しいよ」
「じゃあ、ついでにあんた自身に対する私の解釈でも聞きますか、ジャン?」
 高松は目を眇めた。光を吸い込むような闇色の瞳に浮かぶ感情は、昔と違って、旧友に向けるモノとは思えないほど醒めている。
 ジャンは目を細めた。光を弾き返す漆黒の瞳を染める感情は、昔と同じく、生物に向けるモノとは思えないほど褪めている。

「いらない。必要ない。だって光はそこにあるのだから」







 コレは、『温室』が製作者の手によって完膚無きまでに破壊される数日前の会話だ。
 存在の最初から『永遠』を手にしている男は、己にとって唯一の伴侶を失くした後の世界を「光はそこにある」と評した。彼は正しい。『人間』は『永遠』ではないし、『人間』が一人死んでも世界は変わらず周る。太陽が爆発でも市内限り、光は在る。
 死ねない彼が、『永遠』に喪失を嘆き苦しみ続けようとも、知らぬ顔で世界は周る。光は照らす。無慈悲に。
 だから、彼は、この後、世界を終了させることを『願い』『創る』ことにした。
 
 
 だって、「光はそこにある。けれどもう、ちっとも美しくない」ので。
 

【おしまい】

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