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 「似合わないよ、そんな顔」

 魔法律で、ムヒョロジ。
「・・・・」
 髪を撫でる手が心地良くて。まだ瞼も開かず指一本すら動かせないのに、意識だけは覚醒した。横たわったままのボクの體。ベッド。髪を撫でてくれる彼の優しい手。
 優しい優しい、残酷なほどに優しい手。普段ボクに拳骨を落としてばかりのはずの手が、髪を梳るように撫でる。とても優しく。
 枕はボクの好みより固くて、さらさらのシーツは冷たかった。薬臭い匂いには覚えがあって、ここは病院だろうと推測する。ということは、この左腕を拘束しているテープは点滴の針を固定するテープ?、と考え始めて左腕に意識を向けると、確かに針が刺さっていた。冷たい液体が体内に直接注ぎ込まれて、皮膚下で体液がざわついている。なんだか、落ち着かない気分(もっとも、體はまだ動かないけど)。
 点滴に鎮痛剤が入っているのか、麻酔がまだ残っているのか。痛みはさほど感じなかった。その代わり、痒みに似た疼く感覚があって、重怠い。表皮が冷たい。要するに、血液が足りてないんだろう。
 それは当たり前だ。だって、あんなに血を流したのだから。
 その瞬間、全ては鮮明でゆっくりだった。
 地獄から召喚された刀は不吉に鈍い光を放っていた。迫る刃はその質量による圧迫感を感じさせず、代わりに、この刀こそが虚へと続く空間の間隙そのものであると無言で知らしめて。悪夢が凝ったような、恐怖と絶望の具現した姿。
 鈍いボクにしては珍しいことに、全てが理解できていた。刃が彼に迫っていること。カウンター状態で刑を執行し本から手を離せない彼は自力で刃を避けられないこと、ボクが彼を突き飛ばすのは間に合うこと、突き飛ばされても彼ならば刑を続行するに違いないこと(そういうとこ本当カッコいいよね)、残念ながら、ボクが刃を避けるのは間に合わないこと。全てわかってた。わかってて、そうした。
 だから、悔いは無いんだ。
 ボクは怖がりで苦痛に弱くて臆病で涙腺が緩いけど、たった一つ誇れるのは、彼を想う気持ちの強さ。愚図でドジで頭も悪くって使えない助手で本当に申し訳ないんだけど(ゴメンね)、こればっかりは世界一。他のどんな人にも負けない。ボクの中で、1番価値のある部分。
 だから。だから。だからね。





 病室のベッドに横たわった包帯だらけの體は僅かな身動ぎも呼吸の乱れもなく、ただ静かに瞼を開いた。前触れの無い覚醒を予感できなかったムヒョは、タンポポ色の髪を撫でていた手を引っ込めることもできない。動けず。何も言えず。
 ただ、常に強い意志を湛えて傲然と前を見据えるはずの瞳が、揺れていて。
 揺れたまま、それでも逸らさずに胡桃色の瞳を見つめるから。
「似合わないよ、そんな顔」
 眼を開けたロージーは、包帯に巻かれたままなのに花が綻ぶように微笑んだ。

【おしまい】
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