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sweet death

 鋼の錬金術師。ロイアイ。
「おはようございます、ハボック少尉。聞いてください。僕、昨夜死にかけたんですよ~」
「おはよう、フュリー曹長。は?何かあったか昨日?ここんとこ平穏だったと思うだが」
「いえ、そういうんじゃないです。スティックタイプの飴食べてたら喉の奥に刺さりそうになって・・・死ぬかと思いました。イヤな死に方ですよね」
「お前な、そんな死に方すんなよ。軍人の理想の死に方っつったら、殉職で二階級特進だぞ」
「それはそれで・・・」
「お前なら犬を庇って車に轢かれる、とかもありそうだな。気いつけろよ。オレは美女を庇って美女の涙に見送られて、とかがいいけど」
「・・・僕は、お爺さんになってから自宅のベッドで家族に看取られて、がいいデス。あ、中尉。おはようございます。あれ、でも、今日は非番じゃありませんでした?」
「おはようっす中尉。昨夜は泊り込んだんすか?」
「ええ、ちょっと。今から帰らせてもらうわ」
「そっすか。ごゆっくり。あ、中尉はどーいう死に方が理想ですか?」
「私?私なら・・・・・・・・・」









 何がきっかけだったかは、はっきり覚えている。このヒトの一言だ。
 そもそもこのヒトは公私混同も甚だしいところがあって、そういうのは昇進のためにも控えた方がいいと再三諫言してもちっとも直す気なんてないみたいだった。
 だから今日も、あんなことを言い出した。
 東部ではこのところ珍しいほどに平穏な日が続いていて、東方司令部の仕官は残業する必要も無く定時で上がることが出来た。
 このヒトと私以外は。
 最近の一日の仕事量自体はさほどの量でなかったはずだが、それでも、溜め込むとそれなりの量になる。デスクワークのコツとは日々マメに処理をして溜め込まないことであるという常識を承知していながら、このヒトは仕事を溜め込んでしまった。平穏な日々が続いて退屈したのが逆にまずかったらしい。何か事件でも起こったならば若くして佐官の地位を得た実力を遺憾なく発揮してくれるのだが、気分が乗らない時は只の大きな子供だ。
 手のかかるヒト。
 手のかかる大きな子供は、一人にしておくと、ここでサボったらさらに仕事が滞るとわかっていながらも部屋を脱出しようとするので、私はこのヒトの残業に付き合っていた。
 これもまた、いつものこと。
 イロイロと策を弄して逃げ出そうとする(その情熱を仕事に向けたらもっと早く終わるのに)このヒトを、脅したり宥めたりして仕事に向かわせ、なんとか全てが終わったのはもう夜の10時を過ぎていた。
 窓の外はかなり暗い。イシュヴァール殲滅戦の爪跡がいまだ残るイーストシティは中央ほど発展していない。加えて、東方司令部は街の中心からずれた場所にある。暗いのも道理だった。この建物内には有事に備えるべく夜勤の人間がいるが、それでも昼間とは比べ物にならない人数だし、光量も落としてある。今夜は月も留守で、空では星たちが遠慮がちに瞬いていた。煌々と灯りを灯しているのはこの部屋だけだった。
 これではまるで、この部屋は夜の大海に漕ぎ出した舟だ。何処へ辿り着くとも知らず夜を往く。
 仕上がった書類を分類してまとめながらそんな取りとめも無いことを考えていたら、私の隙を見出す名人(そんな技能を上げてどうするつもりだろう)がいつの間にか背後に立っていた。
 デスクの前に立つ私の、すぐ後ろに。
 気配を察して振り向き予想される事態を回避しようとした私だったが、普段の昼行灯ぶりからは信じられないほどに素早く伸びてきた腕に封じられてしまった。
 これもまた、よくあるパターンだった。




「大佐、お離しください。女性仕官に対するセクハラは昇進に響きますよ」
 腕の中に閉じ込められた私は、やんわりと軍服に包まれた胸板を押して抗議する。ここでムキになって抵抗するとかえって煽る結果になってしまうことは、もう理解していた。表情も平静に保ち、冷たい声を出すように心がける。
「セクハラ?誘われたのは私の方なのに?うなじとか指先とか唇が私を呼んでいたよ?勤務中に上官を誘ってはいかんな、中尉」
 にやりと笑った顔は、血の気の多い鋼の錬金術師の少年の台詞を借りるなら「一発ぶちこんでやりたい面」だった。これまたよく見る表情なのだが、今日はいつもより余分に気に触った。
 明日は非番だが、今日はいつもブラックハヤテ号の様子を気にかけてくれるマンションの管理人が留守の日だ。水も餌もちゃんと用意しておいたけれど、一日中独りだったあの子は寂しがっているだろう。だから、本当は早く帰宅したかった。仕事で残業するのは仕方が無いけれど、仕事が終わった後まで手をかけさせないで欲しいというのが、今日の本音だ。
「・・・訴えて勝ちますよ」
「わかった。最後までして嫌だったら訴えてくれ。私は訴えられない自信があるからね。君はいつも最後には私を受け入れてくれるからな。大丈夫、今日もちゃんと気持ちよくしてあげるよ」
 私の苛立ちをさらりと流す物言いは聞き慣れていたが、今日は本当に癇に障って・・・・・頭の奥の方で何かのストッパーが外れるのがわかった。普段私を律し戒めているストッパーが、苛立ちのせいで消え去る。
 私は笑んだ。
「・・・・いつものように?」
 体勢が悪い。男女間の腕力差の問題もある。私がここで抵抗しても組み敷かれてしまうだろう。隙をついて銃を抜いても、こういう状態になってしまったら銃口を向けたぐらいでは止まってくれないし(経験済み)、騒々しい昼間とは打って変わってしごく静かなこの司令部で銃声が響いたら夜勤の兵士が駆けつけてくるに違いない。気心の知れた同僚ならいいが、一般兵士がやってきた場合、銃声の理由をでっち上げるのに苦心するのは間違いない。
 速やかに帰宅することは、不可能。
 ならばせめて、貴方の思惑通りにはなりたくない。甘やかし過ぎると、調子に乗るから。
「ああ。もちろん」
 抱き締められた躯から力を抜くと、貴方は得意そうに笑った。私の思惑も知らずに。
「貴方は単調な繰り返しがお嫌いな方だと存じ上げております。よろしかったら、今日は少し趣向を変えましょうか?」
 甘えるように。この先の熱を予感させる口調で。私は、幼さを感じさせる顔立ちからは意外なくらいにしっかりした肩に、頬を擦りつけるようにして囁く。
「ほう、どのように?」
 面白いことが大好きな貴方は、私の誘導に乗ってしまう。
 貴方は油断している。必ず、私が最終的には従順になると信じている。
 けれど、今夜ばかりはそうはいかない。
「私が貴方を気持ちよくして差し上げます」
「・・・・君が?」
 驚いた顔は戦闘中の険しさを想像できないほどに幼く見える。私より年上のくせに時折少年のように見えることがあって、そこが性質の悪いところだと思う。愛しいと思ってしまった私が、いつも負けるから。
「ご不満ですか?それならば止めますが」
 驚いたせいで艶めいた雰囲気が消えた様子になった貴方に顔を寄せられたから、少し怯みそうになたのだけれど。やっぱりこんなバカなことやめようかと思いかけたのだけれど。
「いーやっ!ちっとも不満なんかない。むしろ大歓迎だ!」
 ・・・・・自信満々で浮かれる顔がやはり憎たらしかったので、計画を実行することにする。貴方の手を引いて、ソファに導く。
「では・・・こちらへ」
 さあ覚悟して。啼かせてあげるわ。




 貴方をソファに座らせてから、パチンと髪留めを外した。髪を纏めるという行為は私にとって公私の線引きになっているのかもしれない。軽く髪を梳いてぼんやりとそう思った。
 公の部分に重きを置く生き方を選んできたつもりだった。そして、そのことに悔いはないはずだった。なのにどうして昇進や保身のためでもないのに貴方と寝ているのか、弁明する言葉を私は持たない。私が言えるのは、ロイ・マスタングは私にとってただの【男】というだけの存在ではないということだった。ただの【男】と【女】として出会っていたならば、私はこれほどまでに貴方に惹かれなかったと断言できる。
 ならば、【男】と【女】として考えた場合、裏切り者は私だろう。私の思慕の形は、『愛する【男】だから守りたい』というよりも『着いて行きたい守りたい人が【男】で、たまたま私は【女】だった』という方が正しい。そんな私には幾度抱かれても貴方の恋人を名乗る資格は無い。だから、貴方が他所の女と寝ても腹が立たないのかもしれない。そう、思った。
 『愛されるよりも必要とされていたい』なんて、薄汚い欲望だ。
「さて。リザ、私はどうすればいいんだい?」
 思わず反省しそうになっていた私の思考を遮ったのは、やたら浮かれた声だった。私を「リザ」と呼ぶのは情事の時の癖で、貴方は、私の暗い物思いになど気づきもしないで陽気な様子。
 貴方が私を理解しないことではなく、私が貴方に理解されたくないと思っている事実が腹立たしくて、いささか荒っぽく靴を脱いで軍服のズボンを脱ぎ捨てた。灯りをつけたままの部屋で、青い軍服の上着を脱がないまま、釦だけ全て外しておく。
 貴方の視線が熱を帯びたのがよくわかった。
 戦闘時とは別の意味で焔を宿した瞳に、肌が炙られそうだ。
「何も。全て私がして差し上げますよ」
 脱いだズボンを無造作に椅子にかけると、私はソファに座る貴方の前に立って、大佐の階級章の付いた上着を脱がせた。この上着もまた、椅子にかけておく。
「こういうのもたまにはいい。ゾクゾクするな」
 上機嫌のままの貴方に返事をせずに、私はソファに膝立ちになる。貴方の右肩を押すようにして、貴方の背中にもたれかかる。後ろから首に腕を巻きつけると、私が危害を加える可能性なんてちっとも考えない貴方は、リラックスしきっていた。
 ああもう。
 腹が立つほどに愛しいヒト。私は逃れることすらできない。




 貴方の背中に胸を押し付けるようにして後ろから抱きつく体勢で、右手で一つ一つシャツの釦を外していく。大動脈を探し当てた左手の指先で、擽るように耳の下から鎖骨にかけての血管を辿る。黒髪の間から覗く右耳に舌を這わせる。
 シャツの釦を外し終えた右手を滑り込ませ、胸の頂きを軽く抓む。強弱をつけて親指で擦ると、段々固くなるのがわかった。左手は脇腹を撫でながら腰に向かっている。耳たぶを軽く噛んだ。
「っ」
 ほんの少しだけ漏れた呼気がなんだか嬉しくて、指先の動きが忙しなくなる。ベルトを外し終わった左手をそろそろと忍び込ませる。
「あー、なんというか、倒錯的というか、こう、変な気分だね」
 珍しく戸惑ったような口調。少し早口なのがちょっとおかしかった。
「嫌ですか?ココは嫌がっていないようですが?」
 ふとイタズラな気持ちになったので、充血しつつあるソレをぎゅっと握って、貴方がよく言う台詞を言ってみる。ビクッと貴方の躯が震えたのがよくわかった。ズボンの前を開けて手の中のモノを外気に晒す。
「っ!だからね、その、君がそーいうことを言うのに違和感があるというか・・・・」
 形を確かめるように全体に指を這わせてから強弱をつけてしごき始めたら、あなたがいささか慌てた感じで後ろを振り返ろうとするので、項に唇を落としながら右手で目隠しする。
「黙って。ただ、感じていて」
 



 貴方が抵抗を止めたのを感じた私は、一度手を離して立ち上がる。そのまま、ソファに座る貴方の前に膝をついて屹立するソレに顔を寄せる。
「リザ、そこまで・・・っ!」
 充血したソレを一度にぐっと咥えこむと貴方は静かになった。
 いいコだから、静かにしていて。
 唇をすぼめるようにして強く吸い上げ、口から出して舌を這わせる。両手の指先で擽るように触れながら、尖らせた舌先で根元から先端まで往復する。また咥えて軽く歯を立てると貴方は声にならないうめきを漏らした。
「~っ」
 チラリと目線を上げて貴方の顔を見ると、こみ上げる衝動に耐えるために目を瞑って眉を強く顰めていて、恐ろしくセクシーだった。ベッドの中でも余裕めいた表情を浮かべていることが多い貴方に、そんな顔をさせることが出来たのが嬉しかった。
 その表情に見覚えがないわけでもなかったけれど、いつもなら、貴方がそんな顔になる頃は私は余裕なんてない状態になっている。
 こんなに落ち着いて見たのは初めて。それだけで、慣れないことをした価値は充分にある。
 根元を強く握って棒状の飴でも舐めるみたいにしていると、貴方が薄く眼を開けてこちらを見た。睨むようなその眼差し。その目の奥の焔・・・・・・・私の躯の最奥に焔が点るのがわかった。
 ずるいヒト。眼差し一つで私を他愛もなく蕩かす。
 咥えた先端を唇で締め付けながら、上着を脱いだ。貴方が点した焔のせいで、暑くて堪らない。
「っリザ、もうっ・・・!」
 ビクビクと背筋を仰け反らせていた貴方が掠れた声を出したから、私は咥えていたソレを解放した。そして、焦りながら自分の下着を下ろす。足から抜き取る余裕すらなく、片脚の足首にすっかり濡れてしまった下着をひっかけたまま、ソファに登って貴方の腰を跨ぐように膝立ちになる。馴らさずに挿れると苦しいだろうとわかっていたが、そんな悠長なことをしていられる余裕など無い。
 限界一歩手前のソレに片手を当てて、性急に熱く蕩けた私の中に導こうと腰を下ろして・・・・・・・・・焦りのために僅かに目測がずれた。ソレが私の下腹を撫でるように滑った。
「あアッ!」
 貴方が一際大きく仰け反った瞬間、私の下腹部に熱いドロドロした液体が放たれていた。




 ソファの上で荒い息をつく男。男の腰に跨ろうとしたまま、動きを止めた女。女の腹に飛び散った白濁した液体。
 放ってすぐ、余韻も冷めない荒い息のまま、瞬時にしてばつが悪そうな顔になった貴方がとても可愛らしく思えた。こういう無防備な表情をした貴方は、少年のよう。野望のために邁進するだけの貴方なら、私は寝なかったかもしれない。貴方と肌を合わせるのは、貴方の中の少年を包み込みたいからだ。
 公人としての貴方を裏切って貴方の中の少年を求め、私人としての貴方を裏切って野望を何より優先する。貴方が私を甘やかすから、私は調子に乗ってしまう。両手に掴んだどちらの貴方も手放す気になれない。
 ひどくちぐはぐなままそれでも【貴方】が欲しくて仕方が無い、欲張りな私。
 驚くほど素直な気持ちになってその事実を認めると、頬が綻ぶのがわかった。こみ上げる愛おしさに逆らわず、腹に飛んだ白い液体を指で掬い、舐め取る。
「もう終わり?」
 珍しく素直に催促したら、貴方は馬鹿にされたと思ったらしく、荒々しく私の腕を取り体勢を入れ替えてソファに押し倒した。
「まだだっ!」
 そのまま、噛み付くようなキスをして黒いアンダーウェアをたくし上げて胸を揉みしだき、荒っぽく私の中に入ってきた。
「っっ!!」
 突然の衝撃に息を呑みながらコレを待ち望んでいた自分を確かに自覚する。
 いつかこの命を亡くさねばならないならばこんな瞬間に失いたいと、混濁した意識の奥で貴方に聞こえないように呟いた。
 
 




 結局、アノ後、ムキになったこのヒトにつきあわされて失神した私は、それでもなんとか早番の同僚に見つかる前に支度を整えることができた。神聖なる職場で昨夜私がナニをしていたかなんて知らない彼らが、無邪気に『理想の死に方』なんて聞いてきたので。
「腹上死ね」
 にっこり笑ってそう返すと、後ろで、成人男性が足を滑らせて転倒したあげく書類の積み上がった司令室のデスクにぶつかって書類をばら撒くような音が聞こえたけれど、私は振り返らない。
「今日も一日がんばってね、二人とも。じゃあ、お疲れ様」
 こうして、硬直した同僚の間をすり抜けるようにして部屋を出た私は、愛犬の待つ家に帰ったのだった。


 
 
 貴方を裏切り続ける私を、いつかその焔で灼き殺して。
 それこそが、私の願い。
 


【end】
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