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「お前が迷う時、オレを呼べ」

 スレイヤーズ。ガウリナ+アメリア。
「ああっ、あたしどうしたらいいの!?」
 多分にテンパり気味声が漏れ聞こえたのは、先日偶然再会した時(大騒ぎだった。どうして彼女はいつも嵐を背負ってやってくるんだろ)に渡された特製レグルス盤からだった。見ると、レグルス盤は通話中を示す緑色になっている。
レグルス盤というのは、音声で通信するためのマジックアイテムだ。若くして伝説の域に達したといっても過言では無い(魔王を倒した人間なんて、伝説以外の何者でもない)彼女は、使用者を承認して他者に使えないようにするシステムや伝言を録音する新機能まで搭載したレグルス盤を開発していたらしく、連絡用にと渡してくれたのだった。つまり、気さくだけど縛られることを嫌う彼女が、私と連絡を取りたいとわざわざ望んでくれたわけだ。
その事実が密かに嬉しかった上にデザインが可愛らしかったので、特製レグルス盤は私のお気に入りになった。可能な限り持ち歩いている。今も公務の真っ最中だけど、書類仕事だけで聞かれてまずいことはないから、スイッチを入れておいたのだった。
「リナ、どうしたの?」
「え、アメリア!?・・・・ああそっか、レグルス盤のスイッチ押しちゃってたのねあたし」
 いっそ暴風雨のようと称してやりたいほど生気に満ち溢れているはずの彼女なのに、珍しく(そう、すごく珍しく)声には元気がなかった。霧雨のよう。
 彼女の強さ、魔力の強さや技能だけでない真の意味での強さを知っている私なのに、少し胸がざわめいた。
 落ち着いて、私。大丈夫、リナが負けるわけないから。リナは強いから。
 内心で呟きながら、できるだけ平静な声を出した。
「何かあった?」
「・・・・・迷ってるのよ。とても。とても、ね。あたし、優柔不断じゃないつもりだったんだけど、それでも2つの選択肢のどちらかを選ぶのが難しいってことはあるのね。片方を選べば、もう片方を諦めなくちゃならない。わかってるの。ええそうよ、頭ではちゃんとわかってるの。・・・・・でも、ね、諦め切れないのよ!どうしても!辛いのっ!ああもうっ、ガウリイのバカバカっ!なんで今ここにいないのよぉっ!!」
 霧雨のようだった声の調子は、話している内に台風並みに荒れてきた。彼女は感情的なとこがあるけど(短気だしね)、素晴らしく賢い。だから、その彼女が取り乱しているのが不穏な気がして、少し鼓動が速くなった。 
「リナ、落ち着いて!ガウリイさんがどうしたの?なんでガウリイさんが一緒にいないの?」
 早口で問うと、返答も早口。
「あンの馬鹿クラゲったら、例によって例の如く迷子になってるのよ!ガウリイのバカ!嘘つき!『お前が迷う時オレを呼べ』なんて言ってたくせにっ!嘘つきっ!!」 
「リナっ、今どこにいるの!?何があったの!?」
 私は思わず、書類を繰っていた手を止めてレグルス盤を掴んで立ち上がった。
 リナは、友達で仲間だ。彼女は自身が正真正銘の天才であるおかげか、身分や地位に萎縮したりはしない(なにしろ、魔王と相対しても怯まない女だしね)。だから、私のことも普通に扱ってくれる。彼女にとってはなんでもないことだろうけど、私にとって、それはとてもありがたいことだ。私は、その義務や責任も含めて王女という出生を肯定しているつもりだけれど、一線を引かれてばかりいるのが寂しくなかったわけじゃないから。そんなわけで、彼女は私にとって特別な人間だ。
その彼女がピンチなら、私が助けに行かなくっちゃ(それが正義というものだわ)!
 私は、頭の中で公務のスケジュール表を思い浮かべ、どうやって都合をつけるかを考え始めた。明日の神殿の会議は欠席可能。明々後日の視察は代理を立てればいい。月末の式典までに帰って来れたらいいけど、無理なら仮病を使わせてもらおう。あいにく私は高速移動できる魔法は習得していないけれど、神殿のレグルス盤連絡網を使って馬を乗り継ぎできるようにしてもらえば、移動時間は短縮できるはず。かなり身体にキツいかもしれないけど、私、体力には自信あるのよ。
 さあ、場所を教えて!必ず助けに行くから!
「アメリア、あたしが今いるの・・・・・」
 声は唐突に途切れた。
「えっ!?」
 レグルス盤を見つめると、通話不可能の赤色に変色している。この特製レグルス盤が通話不可能となる事態は、3種類ある。1、魔力切れ、2、通話先のレグルス盤が壊れた、3、魔力の濃過ぎる空間に入った。1ならばいいが、2や3の場合リナに何事か起こった可能性が高い。息が苦しくなった。
 落ち着けっ!
 自分に強く言い聞かせて1つ深呼吸。私はそんじょそこらの町娘とは違う、聖王国第二王女アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン。純魔族と拳で闘う正義の使者。うろたえるなんて、私の仕事じゃない。
 私は本棚から地図を引っ張り出し、前回報告してくれた場所から推測できる彼女たちの現在地を計算し始めた。






「もしも~し、アメリア?」
 以前聞いた地名とそこから伸びる街道を確認すると、現在地の候補となる街は5つ。現在この場所にいなくても、このうちのどれかを経由してはいるだろう。よっぽど事情がある場合でない限り、彼女たちは大きめの街を避けたりはしない(協会と魔法道具屋に用事があるから)。
 だから、この5つの街の神殿にレグルス盤連絡網を使って彼女たちの情報を訪ねようと思って(こういう時に使うために、コネと地位はある)、部屋を出て行きかけた時だった。特製レグルス盤から呑気な声が聞こえたのは。
 手の中のレグルス盤を確認すると、いつの間にか色は緑。通話中。
「リナっ!あなた一体どうしたの!?さっき何があったの!?もう大丈夫なの!?」
「ゴメンゴメン。さっきは急に通話切れちゃったのは、魔力切れ。魔力補充したからもう大丈夫。最近補充するの忘れててさ、通話しなくても魔力消耗するのにね」
「魔力切れだったの?良かった。でも、さっきの様子は一体何が・・・・」
「さっき?ああ、さっきね、牧場直営のウルトラミラクルに美味しいお菓子屋さんが、本日限定でお一人様1つ限りでできたてのプレミアムスイ―ツを売り出しててさー。あたし、ソフトクリームとスフレが食べたくって、でもどっちも諦められなくってテンパってたの。けどさ、聞いて!ちょーどいいタイミングでガウリイが戻ってきてくれてね、両方とも買えたの!すんっっごく美味しかったぁ~♪」
「おお。すんげー美味かった!」
「ねー♪ソフトクリームのミルクがフレッシュで濃厚なこと!なのに後味はしつこくなくってさ~高原を賭ける爽やかな風のよう、というか」
「スフレも美味かったぜ!ふわっふわではふはふで濃厚で!」
「最高だったわ!蕩けそう!あたし、幸せ!あー、ガウリイが間に合ってよかったわ~。どっちも美味しかったけど、半分こして両方味わえたから2倍幸せになれたもん!」
「うん、間に合ってよかった。オレも幸せだ!」
  バキッ!!!





「・・・・・・・あ、の、食道楽バカっプル!」
聖王国第二王女アメリア=ウィル=テスラ=セイルーンの執務室の床に、類稀な握力で砕かれたレグルス盤の欠片が叩きつけられた。


【おしまい】
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