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 「忘れないで・・・・その名前を」

 ネウロ。ネウ弥子+吾代。
 出会いは唐突だったが、別れはそれ以上に唐突で脈絡がなく且つあっけなかった。
世界を震撼させるほどの大事件が終った直後、事務所に帰ってきてすぐのことだ。俺は珍しく浮かれてたんだと思う。だから、余計に驚いたんだろう。
ピザでも取ってささやかながら祝勝会をと言い出した探偵が、メニュー全部持ってきてなんて人外魔境な注文しててもツッコみはしなかった。ただ、コンビニでビールでも買ってこようと思っただけだった。
「さて、我輩の用事も済んだのだし、帰ることとするか」
 謎を解いた瞬間からこれまで見たことがないほど満たされた顔をしていた探偵助手は、ソファに埋もれるようにして座りながらそう呟いたが、ビールを買いに行くために立ち上がった俺はその言葉を気に留めなかった。





 翌日、奴の姿は事務所になかった。黙って3日待ち、出向先の調査機関の伝手を頼って捜査して1月近く、奴の手がかりの欠片も掴めない。こんなことに奔走する自分がバカバカしくて仕方なかったが(逃げ出したかったんじゃないのか?迷惑だったんだろ?)、なのに寝食も惜しんで探した。
 でも、見つからない。イライラする。
 この苛立ちを共有できる唯一の人間であるはずの探偵は、ずっとひどく非協力的な態度だったので、奴が失踪してきっかり1月経った今日、随分埃っぽくなった事務所に呼び出したこの女に俺が声を荒げたのは当然というか、むしろ気が長くなったな俺、てもんだろう。
 女は胸倉掴まれても焦る様子も怯えた様子も見せず、ただ静かに見返してきた。
「帰ったの。仕方がないの。最初から、『最大の謎』が見つかるまでって言ってたしね・・・・・私たちと違うんだから」
 なんだよそれ、と力が抜けた。俺よりずっとあいつに近しかった女(近しいどころかセットだと思っていた)がずっと前から別離を覚悟していたこと、既に別離を受け入れていることが、認めたくねえけどひどくショックで。力を失った手を、柔らかくて小さな手がそっと掴んだ。
「だから、私たちせめて覚えていよう?ね、吾代さんと私だけでも。忘れないで・・・・・その名前を」
 俺は、大きな目から水分を垂れ流す女を見つめながら、のろのろと頷いた。



なんてことがあった翌日、閉鎖の準備のために事務所の扉を開けると「遅いぞ下僕共!我輩がちょっと里帰りしたからといって弛んでいるにも程がある」なんて声が聞こえたので、俺と探偵は思わず手にしていたマジックリン(掃除のために用意した)を投げつけて全力疾走して、バテて倒れてファミレスに入った。
「なあ、今頃絶対、激しく怒ってるよなあいつ・・・・・」
「忘れようよ、その名前」
 スプーンを握る探偵の手もコーヒーカップを持つ俺の手も、この先に待つ危機を感じ取ってじっとりと汗で濡れてカタカタと震えていた。


 なんてこった、再会も唐突だった!



 【おしまい】
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