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そしてあなたはもう一度私を殺すのねと囁くような声音で言って私に

 冒険王ビィト。キッスとロディーナ。

 扉の閉まる音がした。パタン。

 腕を引っ張られ連れ込まれた部屋には窓がなかった。不思議な光沢のある薔薇色の石が天井も床も継ぎ目なく繋がっている、不思議な場所。整えられた洞窟の中、が雰囲気として近いかもしれない。薔薇色の石が、ほんのりと淡く光を放っている。

 優美なドレスの腹部を血で赤く染め、左腕の星が徐々に砕けつつあるのに、この幻想的な場所に立つ彼女はやはり異様に美しかった。何時見ても、否、この状況だからこそなおさら、吸い込まれるようなその美貌。ぼくは悠長にも言葉もなく見蕩れた。

 憐れみでも優越でも嫌悪でも憎悪でもなく、ぼくが感じているのが美しさに対する賞賛であることを悟ったのだろう(彼女は賢い。とても。とても)、耐え難い苦痛と秒読みで迫り来る死への絶望に苛まれているはずなのに、彼女は花が綻ぶように微笑んだ。

 その微笑で確信する。

 やはり、彼女だけは他の誰とも違う、と。

 彼女の同族が滅ぶ様を幾度も見た。けれど誰もこのように美しくはなかった。生命の終焉は綺麗事では済まされない。皆、憐れで惨めだった。なのに、彼女だけは美しい。

 彼女に致命傷を与えたのはぼくの大切な人で、その攻撃のために彼女の動きを止めたのはぼくの天撃で、前後の経緯や事情はどうあれ、ぼくは紛れもなく彼女を殺害した人間の中の1人なのに、匂い立つような鮮やかな笑みを浮かべる彼女には、怒りも嘆きも見当たらなかった(隠しているのならば、ぼくなどには見極められないだろう。彼女はとても嘘が上手い)。

 彼女は囁いた。

「そしてあなたはもう一度私を殺すのね」

 と。

 もう一度?

 ぼくはその言葉に興味を引かれ、星が砕ける音を聞きながら彼女の話に耳を傾けてしまう。彼女の、最期の毒に。










「キッス、大丈夫!?」

 トドメを差したところで空間移動の特異能力を発動した敵に連れ去られたキッスは、ほどなく見つかった。崩れた城の瓦礫の影で座り込んでいる。ポアラは駆け寄ると外傷が増えていないことを確認し、安堵のため息を漏らした。

 先刻辛くも倒せた敵は、何故かキッスに執着していた。キッスも彼女に対しては少し様子がおかしかった。そして、今も。スカイブルーの瞳には、伏せた睫毛の影が濃く落ちている。白皙の頬は、常より白く。

けれど、その能力は別として性格はバスターに向いていないと思ってしまうほど繊細で優し過ぎるキッスはポアラとは思考回路が少々違うので、ポアラはキッスを理解することよりも信じることに重点を置いていた。だから、ポアラはキッスの様子が少しおかしいことを気にしないことにした。何があっても、キッスはキッスだ。ビィト戦士団の天撃使い。それだけ信じていればいい。

「さ、皆心配してるわよ。帰りましょう」

 促されて、のろのろとキッスは起き上がる。その瞳の青は力無く。

 その青は、天空を舞う卿の称号を持つ魔人と再会した後と同じ色だったのだけれど、彼は俯いてその青を隠す。

 彼は、わざわざ最期の力を振り絞ってまで隔離空間で告げられた真実の、その残酷さに打ちのめされていた。



 





 薔薇の花弁のような唇から放たれた毒が、彼を侵していく。少しずつ。だが確実に。



【おしまい】


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