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別れを告げるその言葉をもう何度耳にしただろうかけれど私にはもう

 PAPUWA。ジャン。

 臨終の床に居合わせたのは、たまたまだった。用事があってその家を訪れると、ちょうど知り合いが死に掛かっていたのだ。家族は皆赤い目をしていて、何となく帰りそびれたジャンは、庭先で、熟れているのに放置されているマンゴー(きっと家族は誰もそんなことに気が回らないのだろう)を?いだりしていた。
 やがて一際高く上がった泣き声と名を呼ぶ声を聞いて、ならば手伝いがいるだろうとマンゴーを手に勝手口から家に入る(この島の住民に施錠の習慣はない)。気温の高いこの島では、香を焚いて火葬するというのが、一般的な埋葬方法だ。香を用意したり、遺体を飾る花を集めたり、家族と近隣の住民のために食事を用意したり、仕事はいくらでもあった。
 泣き声が生命力満ちる南国の島に愁嘆の雰囲気を撒く中、一通りの手伝いを終えたジャンは、参列者が遺体に捧げる花を渡される前に姿を消した。
 ジャンは、死んだ男のことを誕生の瞬間から知っている。彼の母親が道端で産気づいているのを発見して産婆の家まで抱えていったのが、ジャンだったので。その縁で、産まれた子供はジャンに懐き、普段島の住民の輪から外れた場所にいるジャンに頻繁に会いに来た。だからジャンは知っている。幼児が少年になり、青年になり、壮年の男になって、やがて老いていった、その過程全てを。ジャンは基本的に陽気で、執着心の薄さ故に気が良いので、何となくバカっぽく見られがちだが、実は記憶力が良い。彼の造物主は『忘れる』機能が番人に必要だと思わなかったらしく、ジャンは『忘れる』ことができない。だからきっと、永劫に近い永い永い時間、この人間のことを忘れない。
 だが、造物主の待つ祠へと帰るジャンの顔に、嘆きは一切見当たらなかった。永く時を重ねてきたジャンは、自分と造物主とその片割れ(そしてもう1人の番人であるアス)以外の生命体が短いサイクルで産まれて成長しては死を迎えることを知っている。幼い子供が非業の死を遂げると、せっかく産まれてきたのに何もせぬままに死ぬとは残念だと思ったりはするが、今日亡くなった彼は子を3人、孫を8人も持ってから死んだので、ジャンの考え方においては、十分に成果を上げていた。だから、彼は何を哀しめばいいのかがわからない。
 ジャンはずっとそうやって存在し続けてきたし、今後もそのはずで、その運命を疑ったことすらなかった。













 しかし、やがて彼は青の一族の末子と出会い、主以外を望み、楽園の島を去る。
 そうして知るのだ。
 数え切れぬほど聞いてきた別れの言葉、零れる涙、それらの意味を。
「・・・・・・サービス、死なないでくれっ!」
 悲痛な叫びの、その痛みを。



【おしまい】
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