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諸恋ひ【1/6 COMIC CITY大阪 新刊】

●諸恋ひ R-18 A5 p92 ¥900
諸恋ひ表紙


 1/6の大阪インテ発行予定のリクつら新刊です。とらのあなさんにて委託販売もします。
 NEXT冬号読む前に書いているので、冬号と矛盾してる部分があるでしょうけれど、秋号後に分離した別ルートの話だと思っていただけるとありがたいです。

【あらすじ】
 決戦が終って1月、リクオは、今日こそつららとの仲を進展させるぞ、と意気込んでいた。日中はスルーされたり邪魔が入ったりするも、諦めないリクオは、とうとう夜這いをしかける。当然つららには驚かれたが、なんだか流されてくれてイイ雰囲気だ。ところが、つららが口吸いを拒んで……リクオは、やっと、1月前、リクオを目覚めさせる為に、つららが支払った代償を知る。故にリクオと結ばれる資格が無いと泣くつららに、リクオは……!?
 ハッピーエンドです。R18です。本文見本は、この下に入れておきます。完売しました。
【本文見本】


 枝垂れ桜の枝を彩るのは、薄紅の花弁ではなく、萌黄の若葉だ。
 富士の霊泉で目覚めてからはや1月、桜は散ってしまったが、春の空は、今朝も爽やかに晴れ上がっていた。真新しい欄間から、朝日が差し込んでくる。
 奴良屋敷は、すっかり新しくなっていた。ついでにあそこもここもと言い連ねたせいで修理を通り越して建て直しになってしまった工事もやっと終り、かつて近隣の子供にお化け屋敷と恐れられた面影は、もはやどこにもない。あんまりどこもかしこもぴかぴかなので、屋根裏や軒下に棲む妖怪の中には、綿埃や蜘蛛の巣を恋しがる者もいるぐらいだ。
 その中でも一際立派な設えで木の香も心地良いのは、真っ先に建て直された三代目総大将の部屋。
 その部屋の障子戸を開け、軽やかな足取りで、こんもり盛りあがった布団に近づいてくる人影あり。
「リクオ様~、朝ですよ~! 朝つららですよ~!」
 関東総元締奴良組三代目総大将付き側近頭は、生粋の妖怪のくせに、今日も朝から元気いっぱいだ。枕元に座り込むと、容赦なく、丸まった布団をまくり上げようとする。
「昨夜飲み過ぎたからって、朝寝坊はダメですよ! えいっ…ふぇ?」
 だがしかし、掛け布団を剥がされて現れたのは、寝汚い主ではなく、丸められた座布団だった。
「えいっ! 朝つららゲット!」
「きゃあっ!?」
 珍しく早く目が醒めたので、座布団を身代りに布団の中に詰めて廊下で身を潜めていたボクは、無防備な背中に後ろから抱きつき押し倒した。
「はれ? リクオ様? え?」
「ははっ! 油断大敵だよ、つらら!」
 驚いたつららが大きな目をぱちぱちしているのが面白くて、ボクは、朝からこの世の幸せを独り占めしたような気分になってきた。
 だって、わたわたと慌てる姿は小動物のように可愛いのに、布団に散った黒髪が色っぽくて、頬を真っ赤に染めてこちらを見上げる初心な様子が、すごく可愛いんだもん。
 朝つららっていいなぁ! 人生って素晴らしいなぁ!
 上がったテンションのままにおはようのキスもゲットしてやろうとして、目を瞑ったまま顔を近づけたら。
「リクオ様、みそ汁が冷めちま…!?」
「はわわっ!」
「わっ!」
 なんてこった。障子を閉め忘れて廊下から丸見えだったせいで、青田坊に見つかった。
 慌てたつららが跳ねあがるように立ち上がったので、乗っかっていたボクは、布団の上に転がり落ちる。そして、つららは、ボクが立ち上がるより早く、逃げ出してしまった。
 つららは、逃げ足が、意外なぐらいに早いんだよね……
「……えーと、あの、すんません」
 青田坊は、大きな身体を縮こめて謝ってくれたが、ボクは、しばし、座布団を抱きしめて、寝転がったまま不貞腐れたのだった。

 教訓:障子は閉めておけ。



******


 
 氷粒が呼び起してくれた意識を保つことが出来ず、静穏と沈黙の底へ再び沈んでしまいそうになった時、ふいに、強く刺激された。
 甘い。
 とても、甘い。
 唇に、柔らかく冷たいものが触れていて、そこから、馨しい甘露が流し込まれている。思わず飲み干すと、全身に心地よい痺れが走り、魂と肉体がしっかと結ばれたのがわかった。
 五感が蘇ったので、ようやく、己の状態がわかった。
 オレは、胸より下を水に浸されている。水は冷たくも熱くもなく、ただただ清く純粋で、故に、大地が内包する活力を身体に注ぎ込んでくれていた。晴明に削られてあれほど損なわれた肉体が、今、傷一つないのがわかる。
 細く滑らかな指が、頬を撫でていた。頭の下で枕になってくれているのは、柔らかくて寝心地抜群の膝だ。
 そして、重なった唇が、甘い。
「んっ……ふ…」
 ひんやりした唇の持ち主は、まだ身動ぎの一つもしていないので、オレの意識が覚醒したことには気づいていないらしく、己が口に含んでいる甘露を口移しでオレに飲ませようとしてくる。
 触覚で嗅覚で聴覚で、間違えようなく相手が誰かを確信しているオレは、指先をこっそり動かしてみて動きに問題がないのを確認してから、腕を伸ばして頭を抱き寄せた。
「!?」
 更に深く重なった唇から奥に忍び込み、舌をぺろりと舐めた。
「…ッ…ふぁっ…」
 ああ、甘い。
 ずっと、この唇はどんな味がするのだろうと夢想していたが、想像の何倍も甘かった。
 だから、飢えた獣のようにがっついてしまう。
「あ…んむっ…」
 更に強く頭を抱き寄せ、獲物に喰らいつく獣のように大きく口を開けて、飴玉を口の中で転がす時みたいに、ひんやりした舌を舐めまわす。
 目覚めた直後だというのに、女と口づけするなど人生で初めてだというのに、最初は冷たかった舌が自分と同じ温度になるまで散々貪って。甘露も全て舐め取ってからやっと、捕まえてた腕を離す。
 目を開けると、目の前には、満月色の瞳を潤ませた愛しい女が居て。

「つらら、ただいま」

 目覚める前に呼びたくて堪らなかった名を呼べば。

「…おかえりなさい、リクオ様」

 思い描いていた通り、花みたいに笑って嬉し涙を溢すから、今度こそ、この指で涙を拭ってやった。

 お前の居る此処に還って来れて、良かった。



******



 そのせいで、リクオ様の声も足音も気配も気づいてはいたけれど、わざわざ私の部屋までいらっしゃったご用は明日にしていただこうと思って、寝たふりを続けてしまいました。
 正直に申しますと、まるで夜這いのようなシチュエーションなので、天然タラシなリクオ様の前で、私ばっかりが変に意識しちゃって無様にうろたえる姿を晒したくない、という保身もありました。
 んもう、リクオ様ったら、夜に女の私室を訪れるなんて! 
 天然タラシなのはぬらりひょんの体質で改善の余地ないでしょうけど、成人なさった御身で鈍感過ぎるのは問題だと思いますよ!
 私は、内心腹を立てながらも、寝たふりでやり過ごすつもりだったんです。
 なのに。
「つらら、起きろ。起きねぇと……食っちまうぞ」
 ちゅ。
 言葉の意味を判じるより先に、頬に、温かくて柔らかい何かが触れました。
 え? これって…
 昔、今は立派な男君に成長なさったリクオ様が、悪戯っ子だった頃に、似た感触を味わった気がします。リクオ様は、幼少期の一時期『頬っぺにちゅー』がマイブームで、その対象は、母君の若菜様と世話係の私でした。いやいや、でもまさか。
 などと私が戸惑っていると。
 ちゅ。ちゅ。ちゅ。
 頬に、目尻に、耳元に、次々と触れてきた感触。もう疑う余地もありません。これ、頬っぺにちゅーです!
 ど、どうしてぇ!? 幼い頃の夢でも見て、寝惚けてらっしゃるのぉ!?
 驚いた私は、寝返りのふりをして、仰向けの体勢からリクオ様に背を向け、枕に顔を押しつけました。
 すると今度は、大きな手で髪を櫛梳られ、挙句。
 ちゅ。
 う、う、うなじにちゅーは、子供の頃もなさってませんでしたよ!
 ちゅ。ちゅ。ちゅうっ。
「ひゃんっ」
 きつく吸い上げられた瞬間、いつぞや喰らったスタンガンの電流に似ているけれどそれよりずっと甘い衝撃が身体を駆け廻り、喉から変な声が漏れて、身体が大きく跳ねました。
 な、なにこれぇっ!?


*****


「あッ」
 予想外のオレの攻撃に、つららが動揺した。その隙に、乱れていた寝間着の襟をぐいっと引き下げる。新雪のように白く柔らかそうな膨らみが、姿を現した。
「やっ」
 つららが身を捩ろうとした。が、オレは、襟をぐいっと引っ張って横向きだったつららを仰向けにし、脱げかけの寝間着の上から両の二の腕を掴んで、抵抗を封じる。元々力の差は大きいわけだし、これで、つららは腕を動かせねぇ。
「み、見ないでください…」
 ぎゅっと目を瞑ってふるふる震えるつららは、他のことなら何でも言うことを聞いてやりたくなるぐらい可愛らしかったが、今は単に逆効果だった。
 見るなとか、絶対無理だろ。この雪見大福、予想以上なんだからよ!
 いや、世間的な物差しで測るならば、『巨』の文字を頂くサイズでは無いのは、恋に浮かれたオレにもちゃんとわかってる。身長差があるとはいえ、毛倡妓や羽衣狐のボリュームとは比べるべくもねぇし(淡島は、オレの中では男扱いなので、あえて比較はしない)、正真正銘の中学2年生女子である巻と比べても、やっぱ負ける。
 だが、夢の中で『片手サイズ』なんて判定をしていたオレの認識だと、予想外に大きかった、と言わざるを得ない。これは、両手を使わんと抱えきれねぇ程ではないが、かといって、片手の中に易々と収まるサイズではなく……
 夏でも冬でも露出度低い極まりない上に、激しい出入りでも服装が乱れることの無いつららだから、もったりしたセーターとか、胸元をきっちりガードする着物とかの奥に隠されていた雪見大福の真実を知る男は、この世でオレ1人だろうなぁ。 
 どうしよう……嬉しい。
 いやいやいや、オレは『巨』が好きなわけじゃねぇし、女の価値は胸だなんて思ってねぇが、……でもなぁ、なんつーか、思ったより大きかった、というのはこう、サプライズご褒美的な嬉しさがこみ上げるぜ。うん。
 オレは、浮かれた気持ちに任せて胸に顔を突っ込んだ!
「きゃあっ! リ、リクオ様お止めくださいぃぃ」
 往生際の悪いつららはわたわたと慌てたが、オレは、本能に従って胸に頬擦りする。うわぁ、柔らけぇなぁ。
 つららは、手も頬も柔らけぇし、子供の頃はこの胸に飛び込んで頬擦りしたこともあったが、やっぱ、襦袢と振り袖を重ねて整えた上から触れるのと、直に肌に触れるのは、全然違うな。幾重にも布で覆われてもまだ柔らかかったが、生だと、焼きたての食パンみたいにふかふかふにふにしてるのに、肉としての確かな質感がむにゅむにゅのもふもふで、大きさ的には足りんかもだがマシュマロおっぱいって言葉の意味を納得するというか、……はっと気がついたら、痛くないように力は弱くしたけど執拗に、しつこく、胸を揉みしだいている自分がいた。
 ……男って生き物は、本当にどうしようもねぇな。



******


 その時にどうすれば1番正しかったのか、という答えは、事の真っ最中の当事者には、わかりません。後になって判じてみて、そうだったのかと思うばかりです。
 それに、もう少しマシな結末を手に出来ただろう別の選択肢も、結局、選ばれなかったからには机上の空論に過ぎませんしね。マシなはずの選択の結果が、更に酷い結末に繋がっていた、なんてことがあるやもしれませんから。
 だから、選択する時に出来ることなんて、覚悟ぐらいです。
 選択の結果、予想していた苦しみ以外に、予想もしなかった苦しみが生じるかもしれない、と考えておけば、いざそうなった時にうろたえなくて済むのでしょう。苦しいのは、変わらなくとも。
 だから、つまり、私は、覚悟したつもりなのに出来ていなくて、そのツケをリクオ様に払わせてしまったのでした。
 事この期に及んで、リクオ様を傷つけて、それでも私は、1月前の己の選択を悔いておりません。
 翼を1枚しか持たぬのに飛び回る禍々しい蝶も、感情が全く窺えぬ虚ろな瞳でなのに朗々と言葉を紡ぐあの妖怪も、好きになどなれませんが、それどころか、百物語組の騒動については恨んでもいますが、それでも、あそこで彼らが現れねば良かったとは、決して思えないのです。
 今この結末に至るのだと知っていてあの日あの時に戻ったとしても、私は、同じ選択をするでしょう。
 故に、悔いるべきは、選択ではなく、私の覚悟の足りなさと、愚かしさと、浅ましさです。
 私は、富士の霊泉で暇乞いをして、この組を去るべきでした。まだ本調子でなかったリクオ様が心配だったと言うのならば、この奴良のお屋敷に帰ってきた時に、そうするべきでした。
 けれど、私は、期限がはっきりわからぬからと己に言い訳して、少しでも長くこの場所に居座ろうとしたのです。
 その報いがこの状況で、私は、リクオ様を傷つけてしまいました。
 リクオ様、あなたは、情の篤いぬらりひょんであらせられる。初代がいまだ珱姫様を愛しておられるように、鯉伴様が別離の後も長く山吹乙女様を探し続けたように、ぬらりひょんという妖怪の情は深いのでしょう。
 だから、このまま、私が何も告げずに姿を消したら、きっと、あなたは、私が付けた傷のせいで長く苦しんでしまうことでしょう。
 それはイヤです。それが、1番イヤなんです。
 でも、もう、こうなってしまっては、適当な嘘をついて暇を乞うことは無理でしょう。
 私は、一体、どうしたら……
 自分のせいで傷つけてしまったリクオ様を直視する勇気がでなくて、目を瞑ったままの卑怯者の耳に、小さな声が聞こえました。
「え?」
 よく聞き取れなくて聞き返すと、今度は、しっかりした声で同じ言葉を繰り返してくれました。

「つらら、好きだ」

「え?」
 思わず、自分の罪も何もかも忘れて、私は目を開けて聞き返してしまいました。
 紅の瞳が、私を見つめています。
「ずっと、ずっと、お前のことが好きだった。始まりもきっかけも、わかんねぇぐらい最初から」
 リクオ様は、あれだけわけがわからないことを言われて、なのに、怒ってはいらっしゃいませんでした。お声が静かで優しいです。
「お前の世話になりっぱなしだし、守られてばっかだし、自分が妖怪だって受け入れられずに悩んだり、迷ったり、情けねぇとこもいっぱい見せちまってるし、今、お前が泣いてる理由もわからんぐらい頭悪ぃが、でも、……やっぱり好きだ」
 リクオ様が、一生懸命、己を曝け出すようにして言葉を重ねてくださっています。でも、私の涙はまだ止まりません。
「ずっと、一緒に居て欲しいんだ。お前が隣に居てくれたら、オレは、『鵺』にならなくて済む。あんなふうに、歪んで、周りの奴らも巻き込んで堕ちて、世界に呪いを播き散らかさんでいられる……オレから、逃げねぇでくれ」
 声に、皆に慕われ皆を導く主だからこその孤独が滲んでいて、私の胸が痛みました。手を伸ばして抱きしめたくなってしまったから、拳を握って堪えます。今夜の私は、己の欲に負けて、すでに十分間違えました。もうこれ以上、あなたに触れるべきではありません。
「お前は、何でも、オレの為に、て言ってくれるが、オレだって、お前に何かしてやりたいと思ってんだ。お前を手放すこと以外なら、何でもする。だから、今、お前を泣かせてる重荷を、オレにも分けてくれよ。お前は、オレを幸せにしてやりてぇと思ってくれてんだろうけど、オレは、お前がそんなふうに泣いてたら、ちっとも幸せじゃねぇよ」
 ああ、私こそ、あなたの重荷を分かち合いたかったです。
 でも、もうその資格が無いのです。ごめんなさい。
 あなたが私に恋をしてくれたのに、私を求めてくれたのに、あなたを幸せにしたかったのに、応えられません。ごめんなさい。
「お願いだ、つらら。オレを幸せにしてぇと少しでも思うなら、オレに、その涙の理由を教えてくれ。そうじゃねぇと、オレは、爺や親父で実証されてるように、数百年単位で引き摺るぞ。オレは、魑魅魍魎の主。人と妖の夜の境を守る為、勝手に滅ぶことも出来やしねぇ。オレが口吸いしたせいでお前が自害なんざするなら、オレも、死んじまいたくなるだろう。だが、それは出来ん。だから、お前に口づけられねぇ」
 リクオ様の手が伸びて、けれど、頬に触れる前に止まりました。体温を感じるほど近いけれど、触れてはいない距離で。
 リクオ様は、この距離を私が自分から詰めることを望んでらっしゃるのがわかるから、私は、困惑せずにいられません。
 私の間違いは、酷い結果を導きました。リクオ様を理由を告げても、告げずに拒んでも、どちらにしても、リクオ様は苦しみ傷ついてしまいます。
 もうこうなってしまっては傷つけるのを避けられないのならば、どちらの傷の方が早く癒えてくれるのでしょうか?
「……けど、一緒に居て欲しいんだ。夜這いかけてこんだけやっといて説得力全くないだろうけど、でも、お前が死ぬなら口吸いはしねぇから、何でも我慢するから、お前の涙のわけを話してくれよ、なぁつらら。お前の涙を止めてやれねぇ絶望から、お前の苦しみを分かちあえねぇ孤独から、オレを救ってくれよ」
 私は、この悩みに既視感を覚えて、何と似ているのか思い出そうとしました。
 そうです、この選択は、山吹乙女様の話を聞いた時に思ったことに、似ています。
 どうしようもない事実を共に嘆くことを選ばず、独りで抱えて、耐えられなくなったら姿を消した、山吹乙女様。
 私は、あの方の選択を知った時に、何を思ったのでしたっけ?
 私は、あの時、山吹乙女様に深く共感しつつも、不妊の原因が羽衣狐の呪いだと判明した後だからこそ言えることかもしれないけれど、鯉伴様に相談して共に苦しみながらも立ち向ったら、もしかしたら道が開けたかもしれない、と思わなかったかしら?
 ほんの少しも、そう考えなかったかしら?

「……つらら、オレを、助けてくれ」

 その言葉と、リクオ様の瞳から零れた一粒の涙が、ぐらぐら
揺れていた私の心を決めさせ、私は、腕を伸ばしてリクオ様に抱きつきました!
「……つらら?」
「泣かないで、リクオ様。つららも、リクオ様をお慕いしています。話します。全部を、あなたと分かち合います。だから、約束してくださいね。この先、私が滅んでも、今この瞬間、あなたが私をとても幸せにしてくださったことを、あなたの恋が私の心を救ってくださったことを、どうか忘れないでくださいね。私の幸せを、疑ったりしないでください。それだけ、約束してくださるなら、つららは全部お話します」
 この先、私は、この選択を悔いるかもしれません。
 けれど、せめて今この時だけは、私の選択があなたの涙を止めたので、私は、2人で苦しむこの道が正解だと、信じてみることにしたのです。



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