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唇の上なら愛情のキス

 冒険王ビィト。ビィキス。

 ヒック。・・・・・クッ。・・・・・ヒック。・・・・・ヒッック。
 宿屋の狭い室内に響くのはキッスのしゃっくりの音で、姦しいおしゃべりの絶えない隣の女部屋と違って、キッスとスレッドしかいないこの男部屋は本来沈黙に包まれているはずだから、余計にその音が気になった。前の客が残していった小説を手持ち無沙汰に捲っていたスレッドは、しゃっくりの音で集中できなくなって読書が進まなくなってしまい(まあそもそもその小説がスレッドの好みでなかったという問題もあるのだが。なんたってソレ、恋愛小説だったから)、キッスはスレッドの読書の邪魔をしたことに少し罪悪感を感じながらも詫びるのも変な感じがして言い出せない、という少し気まずい状態になっていた。ビィトが部屋に戻ってきた頃には。
「ただいまー。女将さんが飯もうすぐだから降りて来いって」
 といつも通りに明るくずかずか部屋に入り込んできたビィトは、大らかというか大雑把というかそういう人柄だったので、気まずい空気には気づかなかったが、キッスのしゃっくりの音には気がついた(当然だが)。
 ヒック。・・・・・クッ。・・・・・ヒック。・・・・・ヒッック。
「キッス、しゃっくりか?」
「うん。さっきから・・ヒック、止まらなくって・・・ヒッック、困って」
「じゃあ、止めてやるよ」
 ちゅっ。
 背中でも叩いて驚かすのか砂糖水でも飲ませてみるのかと思ったスレッドは、キッスとビィトにチラリと視線をやって・・・・・・・・・・驚いた(そりゃあもう。もししゃっくりが出てたら一発で止まりそうなほど)。力余って触れていたページを破ってしまう。
 だが、その驚きも無理はない。だって、ビィトがキッスに唇を重ねていたんだから。
「止まったか?」
「止まった。ありがと、ビィト。ビィトのコレはよく効くね。じゃあ、下に行こうか」
 唇が重なっていた時間は短かく、二人はあくまで何でもない様子だったのだが、スレッドはそれでは収まらない。眼を丸くして凝視してしまっていた。
 キッスは確かに並みの女子よりずっとかわいくて女装させても違和感がないほどに華奢でものすごくビィトを好きで、ビィトはキッスをひどく気に入っている様子だが、だがしかしこれは・・・・・・
「スレッド、行かねえの?」
「あ、ああ、後で行く・・・・」
 ぎこちない動きで二人から眼を逸らしたスレッドは、破りとってしまったページに視線を落とした。そのページに書かれていた言葉が、ふっと目に飛び込んでくる。

 唇の上なら愛情のキス。

「いや、それは、・・・・・・」
 1人きりになった部屋に、スレッドの苦悩の呻き声が響いた。


【おしまい】
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